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「広報PR = 経営」に気が付かない地方企業経営の現状と未来

第三期プレスリリースエバンジェリスト認定までの経緯

2024年9月、私のもとに届いた一通のメール。
送信元:PR TIMES。
「あー、また何かの営業メールかな」と思い流し読みすると「第三期 プレスリリースエバンジェリストとして活動していただけないか」とのご相談で驚きました。

エバンジェリスト(evangelist)とは、キリスト教の「伝道者」の意で、ITのトレンドや技術について、ユーザーやエンジニアなどに分かりやすく説明し、啓蒙することを仕事とします。自社技術の価値を伝え、高める専門職として、最近、IT関連企業でポストとして新設するところが増えています。

HR プロ抜粋

普段からカメラやadobeソフトの使い方などを頻繁に調べてるのでSONYやabobeなどが自社製品に対して使い方や魅力を伝える役割としてエバンジェリストというポジションを作り、インフルエンサーやその商品に精通した外部人材にそのポジションを預けて商品の認知を広げていくというものは見ていたので言葉に抵抗はありませんでしたが、一般の人には「えばんじぇりすと?」だと思います。
どちらかというと「企業色の薄いアンバサダー」の方がまだ今は伝わるような気がします。

つまり、プレスリリースの伝道師としてプレスリリース未活用の企業や自治体・団体などを対象に情報発信の重要さや発信文化を広め「PRの民主化」の実現を目指そうという活動です。
具体的には、下記のような活動をPR TIMESと連携して行います。
・プレスリリースのセミナー講師として登壇
・PR TIMES制作コンテンツへの出演や寄稿
・PRパーソンとしての知見の発信

詳しくは下記のサイトに書いてあるので是非読んでみて下さい。
【プレスリリースエバンジェリスト特設サイト】https://prtimes.jp/pressrelease_evangelist/

10月28日は「プレスリリースの日」、そのような佳き日に晴れてPR TIMES認定の第三期プレスリリースエバンジェリストに任命いただきました。
第三期は32名が新任、一期・二期の更新メンバーを含めると総勢59名の規模で、全国で活躍する企業のPRパーソンやPRコンサル・代行事業者などが集結して認定式が開催されました。

東日本の第三期プレスリリースエバンジェリスト認定メンバー(※東京を除く)

認定理由と古窯グループの取組み

お声がけをいただいたきっかけは、こちらのnoteでの古窯グループ(観光産業)の事業を通して山形の価値を上げていく過程や考え方の情報発信と旅行新聞でグランプリ受賞した日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2023の特集記事で見つけていただけたようで、PR TIMESとしても地方企業と実働の連携を図りながらPR文化を地方へも拡張するという方向性も重なり目に止めてもらったという経緯でした。

株式会社旅行新聞新社 日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2023
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000069154.html

山形県では私が初の認定者であることもとても光栄なことでした。
そしてもっと嬉しかったのは、2018年からホールディングスを作り事業を多角化しながらパーパス経営の実現に向けて「今日、この瞬間に、最高の山形を。」という経営理念を皆で打ち立てて、山形の価値を高めるためには何ができるのかを考えながら日々実行している古窯グループメンバー一人一人への評価が全国370万社近くある中から日々膨大なプレス情報を扱っている情報の中枢であるPR TIMESまで届いたということです。旅行新聞の件も含めて、だから私たちが企業として今向かっている方向性はきっと正しいものであるという自信と山形と古窯が褒められている感じがして私はとても嬉しいです。私はそれをキュレーションして外へ伝えるべき立場なのでそれを実行しているだけで、誰が発信するかよりも何が発信されているかが大切であるとも感じています。

古窯グループ 広報のビジョン

このようなアクションが積み重なっていくことで、私は古窯グループが観光産業を軸に「世界で最も、地方(東北・山形)を考えられる場所」であったらいいなと思います。

私個人としても2019年に社内で立ち上げた広報マーケティング部(現 ブランドデザイン室)も5年経つのでそろそろ後輩に道を開けていかないといけないと考えたときに、グループ広報の目的や戦略などを体系的にまとめる意味でもプレスリリースエバンジェリストの活動として外へアウトプットすることはとても良いタイミングだと思いました。
加えて、外部のPRパーソンの皆様や企業様と交流を深めることができれば新しい発見や新規事業やビジネスマッチングの機会にも恵まれると期待しています。

■当日の公式プレスリリースはこちら
東京に集中する『発信格差』の解消へ、全国各地のPR人材とタッグ。PR TIMESが「プレスリリースエバンジェリスト」公認

地方企業における広報PRのポジション確認

さて、前置きが長くなりました。
今回このような素敵な式典で任命を受け、当日は多数の全国で活躍する優秀なPRパーソンとはじめて直接コンタクトして感じたことが、まさにこのPR TIMESが配信した「発信格差」そのものだったのです。

発信格差というと少し強い言葉に感じますが、確かに今の地方には広報PRやプレスリリースという概念はとても希薄です。その領域でのノウハウも地方では少ないこともあり、その必要性に行動変容を起こそうと感じる中小企業はかなりの割合でいないに等しいと思います。

ただ、そこには首都圏と地方とで企業の環境や向いてる方向が少し異なるような感じが肌感であったりします。広報PRの部分での地方の現状をいくつか言うと、
・認知や売上を伸ばすための情報発信の必要性は感じているがやり方がわからない
・発信はしているが商品情報のみに傾倒してしまう
 →開発背景やストーリーに価値があることに気付けていない)
・広告と広報の区別があいまい
・SNSは頑張るが、自事業にメディアリレーションや外部と繋がるという概念が無い
 →どうつなげてよいのかわからない
・地方は情報も人材も全てが揃ってる企業が少ない。
もちろん首都圏と地方がこうキッパリ二極化してるということではなくグラデーションではあるのですが。

その結果、経営者は「よくわからん」になり経営戦略内における「広報PR」というポジションは「売上」「原価」「広告宣伝費」「人件費」「採用数」などさまざまな業績パラメーターに負けて優先順位を落としていくパターンが多いです。経営者がそのように考えるのは当然で、不確実性の高い業績パラメーターを追い続けるよりも経験上ある程度手だてが見えているパラメーターを追った方が成果もでるし、リスクもないのでそうなりますよね。逆に「広報は広告と違ってタダだから」という少し曲がった捉え方をされている場合もあります。

当日会場で多くのPRパーソンと会話する中で、首都圏と地方の企業が広報PRに求めているもののズレも少し感じました。私の受け止めを簡単にまとめるとこんな印象です。
・首都圏:広告換算費、CVR、PVなどの数値を追い求める傾向が強い(定量評価強め)
・地方:取材が来た、TVに取り上げられた、世間で評判だと言われた(定性評価強め)
もちろんこちらも二極化というよりグラデーションです。

この違いだけ見ると首都圏は広報を広告としてみる傾向が強くて、地方ではだいぶざっくりな捉え方をされているという感じがします。地方にはそもそも広告換算するほどの対象も量も多くないという現状もあります。TVの影響力もローカル局とキー局では全く異なりますし、地方企業はあらゆる面において首都圏と同じ広報活動をしていても企業や世間に与える影響は首都圏よりも小さめになります。

ただし、地方は競合が少ないという強みもあり、人口減が加速度的に進んでいる地方では勝つべき企業がより力を持って勝ち続けるという構図になっています。

そのような環境下の中で、単に首都圏・地方などの立地以外にも企業フェーズの違いにより広報PRに求めるものも微妙に違っています。
・業種業態、事業規模の違い
・単一事業か複数事業か
・商圏の違い(世界、日本、地域)
企業の成熟度なども関係してくると思いますが勘違いしがちなのは、全ての企業が"一律"に「広報PR」というものを欲しいと思ってるわけではないということです。
ゆえに広報PRを推進していく立場の私はビジネスの基本に忠実に「相手の目的や事業フェーズをみて、相手の欲しいものを欲しい分だけ提供する」という部分にフォーカスしなければならないと考えています。

情報を遠くへ飛ばす経営設計

ただし、地方企業でもその大きな壁を超えて成果を出してきているのが、今回の認定式と同時に開催されたプレスリリースアワード2024の各賞受賞企業だと思います。受賞された企業様のプレスリリースの内容は首都圏・地方に関わらずどれも素晴らしく洗練されていて、とても学ぶことが多いので是非ご覧ください。

プレスリリースアワードを受賞されたリリースの内容を見ると、どうしても企画立案の内容や発想・テクニックなどに意識がいってしまいますが、私が共通して感じたことはどの企業も必ず「世の中に求められている課題が企業パーパスに設定されていて、必ずその延長線上で更に世のために(解決へ)と願いを込めたコンテンツリリースである」ということです。

企画やアイディアがどれだけ良くても単発発信であったり、パーパス経営されている企業でも課題解決への熱量が弱いと遠くに飛ばない。あらゆる意味で企業側のパーパスに対するコミットメントの強さが試されていて、そこが強いと広報PRはレバレッジをかけたように機能し、情報は自らが意思を持ってより遠くへ飛んでいき、大衆の心をつかむんだろうなと授賞式をボーっと眺めながら考えていました。

あとはこの部分を組織としてどうやってトップ不在でも自立自走できる仕組み(自動循環システム)を構築するかを考えていくポイントに入っていきます。すなわち、情報を遠くまで大きく飛ばしたいのであれば経営設計レベルで仕組みを見直す必要があるということです。

余談ですが…
広報担当者あるあるで、出来上がってしまった製品に後付けで広報して欲しいと言われる場合がよくあります。開発背景や想いなどが形成されないまま作られたプロダクトです。広報担当者は頭をひねりながら困ります。
結局、上手にストーリーや社会性を持たせた発信をするためには商品開発段階から広報も関与しないといけません。商品とは企業パーパスを具現化する最前線の最も重要なアイテムです。なぜその商品が必要なのかを考えることはすなわち経営そのものであるとも言えます。広報は下流の作業工程になってはいけないポジションです。
広報PR事業を専業でされている方の中には、恐らく「もっと上流からやらせてくれればもっといいPRができるのに」と思われる方も多くいると思います。

古窯グループの場合

企業設計で一つ例を挙げると、弊社の場合は「今日、この瞬間に、最高の山形を。」という経営理念を掲げ、地域の観光経営人材や観光プロフェッショナル人材を地域に輩出する「旅館版リクルート」を目指すことで山形県全体の付加価値をあげて関係・交流人口を増やしていくという地域創成のパーパスを持っています。

パーパスを掲げる前は商品・企画すべてがトップダウンで中には矛盾や整合性が取れていないこともしばしばありました。しかし、パーパスを掲げてからは社員自らが思考してボトムアップで企画が上がってくるようになり、上がってくるプロダクト自体がその時点で十分パーパスを表現できる状態で商品開発をしてくれるようになりました。広報にとってはとてもありがたい状況です。
それを受けて広報は更に社会性やトレンドと紐づけて情報を発信しようとします。最終的には商品開発の段階から全員がPR思考を持って商品を作ることができれば最高だと考えていますし、そうなるようにどのような経営設計が必要であるかを考え続けています。

また、商品開発以外にもパーパスを実現させるために若手経営人材を育成する社内研修制度「フレッシャーズキャンプ」や互いにほめあう文化を社内に醸成することを目的とした「ほめたつ委員会」をはじめ各種委員会活動など様々な取り組みを温度を上げて社内で進めています。そのような情報こそが遠くに飛んでいくような手ごたえもにわかにあります。

このような具体的な事例も含めて地方企業のプレスリリースエバンジェリストとして1年間、自社の等身大の企業成長過程をPR TIMESさんのご協力のもとセミナーやnoteで情報発信していこうと思います。

とりとめもなく書き綴りましたが、ここまでが今回のPRパーソンの方々と接して感じた率直な感想です。経営と広報をどう繋げればレバレッジがかかった加速度的な事業成長ができるのかを体系的にデザインできれば、地方企業は必ずそれを理解してPR TIMESさんの目指す「PRの民主化」は必ず起こせると思います。

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