ガブリエル・ガルシア=マルケス『エレンディラ』を読んで
『エレンディラ』 ガブリエル・ガルシア=マルケス 1988.12.1 発行 ちくま文庫
この本の著者は1982年にノーベル文学賞を受賞した人物。
ラテンアメリカ文学は馴染みがなかったのですが、そんなに苦にすることなく読めました。
幻想的な場面が多く童話や伝説といったファンタジー漂う作品。
物語の舞台の土地の気候などの暑さや、自然に対する表現力といった描写は凄まじかったです。
全体的に表現が幻想的なので、残酷な場面でもそこまでの不快感は生じなかったです。その理由として、おそらく、昔話を聞いている感覚に近いのかなと思いました。
「この世でいちばん美しい水死人」では、水死体に名前を付けたところは正直驚愕しました。
どの話もよかったですが、特に「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」は印象に残りました。
これは、祖母に売春させられる南米の女の子の話。幻想文学なので非現実的な要素もたくさん入っています。
エレンディラは疲労を抱えた中で燭台を倒してしまい、それが原因で火事になり屋敷が燃え尽きてしまう。
これに腹を立てた祖母は代償としてエレンディラに体を売らせます。祖母に束縛されていますが、エレンディラは祖母から反抗せず、離れようとしません。
そこに主従関係が成り立っているからなのか、家族の関係から抜け出したくないからなのかわからないですが、エレンディラにとって祖母が絶対的な存在だったことがわかります。
最終的には自分の愛人(恋人)になった男の子に自分の祖母を殺させて、祖母が抱え込んでいた金塊(金の延べ棒のチョッキ)を持って逃げる。
最後の場面は、男の子と幸せになるのかなと思いましたが、そんなことはなかったです。
今まで人生でずっと耐えて我慢してきた人がいきなり欲望に目覚めて、金塊を抱えて逃げていく。
この最後の場面を読んだとき、解き放たれた感覚になり、解放された自由のようなものを強く感じました。