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ガブリエル・ゼヴィン『書店主フィクリーのものがたり』を読んで

『書店主フィクリーのものがたり』ガブリエル・ゼヴィン 2015.10.22 発行 早川書房

内容
 その書店は島で唯一の、小さな書店―偏屈な店主のフィクリーは、くる日もくる日も、一人で本を売っていた。かつては愛する妻と二人で売っていた。いつまでもそうすると思っていた。しかし、彼女は事故で逝き、いまはただ一人。ある日、所蔵していたエドガー・アラン・ポーの稀覯本が盗まれる。売れば大金になるはずだった財産の本が。もう、なにもない、自分にはなにも。それでもフィクリーは本を売る。そしてその日、書店の中にぽつんと置かれていたのは―いたいけな幼児の女の子だった。彼女の名前はマヤ。自分も一人、この子も一人。フィクリーは彼女を独りで育てる決意をする。マヤを育てる手助けをしようと、島の人たちが店にやってくる。婦人たちは頻繁にマヤの様子を見に訪れるし、あまり本を読まなかった警察署長も本を紹介してくれと気にかけて来てくれる。みなが本を読み、買い、語り合う。本好きになったマヤはすくすくと成長し…人は孤島ではない。本はそれぞれのたいせつな世界。これは本が人と人とをつなげる優しい物語。

 心温まる話でした。悲劇が起こった中で、物語の中も現実の世も同じ。
 
 フィクリーは偏屈な少し変わった人だというイメージが、途中から変わり始め、あたたかい色に染めっていくようでした。
 彼がお店に置き去りにされていた女の子・マヤに出会ってから、次第に当たり前のように、人と人がつながり心が結びだし、気が付いたら最後まで読んでしまいました。

 彼が不器用なりに少しずつ、成長していく過程が微笑ましかったです。人は変わっていける。失っても取り戻すことができると感じました。

 
 レア本を盗まれたり、店に捨て子がいたりするのに、警察署長であるランビアーズの対応ぶりはある種のユーモアにさえ感じます。

 ランビアーズがフィクリーの影響で「本の虫」になっていくところも良かったです。

 生きることはしんどいことで、傷付くこともある。でもそれと同じくらい、もしかしたらそれ以上に楽しいことや素敵なことも日々に溢れていると思わせてくれる内容でした。

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