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ロイ・ヴィカーズ『フィデリティ・ダヴの大仕事』を読んで
『フィデリティ・ダヴの大仕事』ロイ・ヴィカーズ 2011.12.16 発行 国書刊行会
内容
妖精のようにキュートな女怪盗のフィデリティが、大勢の手下を使って大胆な犯罪を実行!! 悪徳商人やスコットランド・ヤードを手玉にとっての大活躍。 「ハウダニット」を楽しめる(〈どうやって盗むか〉のおもしろさを心ゆくまで味わえる)短篇集。 倒叙ものの名作『迷宮課事件簿』(ハヤカワ文庫)で知られるイギリスの作家、ロイ・ヴィカーズが〈迷宮課〉執筆前に刊行した『フィデリティ・ダヴの大仕事』。「倒叙ミステリ」の妙手、ヴィカーズの幻の名作、完全邦訳!
怪盗ミステリでは、怪盗は変幻自在であることが多いです。
怪盗キッドのように、ある時は警官、またある時は謎の老人として姿を変えることがあります。しかし、フィデリティ・ダヴは変装をせず、偽名を使いません。彼女は堂々と現れ、自らをフィデリティ・ダヴと名乗ります。
ダヴは怪盗と詐欺師の両方の役割をこなします。大胆な物理トリックで獲物を手中に収め、巧みに立ち回り、自分のものにすることもありますが、彼女が優れているのは、心理誘導や遠回しな脅しを駆使して、被害者がダヴを告訴できないようにする手腕です。
実際これは怪盗ものというより、コンゲーム(標的とする人物を信用させて働く詐欺)のカテゴリに入る作品かもしれません。
算段にはバラエティーがありますが、基本的にはダヴが勝利を収めるのにどうやったかというハウダニットそのものになります。どう発覚するかという工夫はなく、いつもダヴの側から種明かしされる展開になっています。
どのように盗みを成功させるかという「どうやって盗むか」の面白さを楽しむことができる作品です。
以下は印象に残った作品。
「顔が命」
この話でフィデリティ・ダヴ初登場。宝石を盗みますが、ダヴは警察に顔を知られてしまいます。その中で、入れ替えトリックが意外に良く出来ています。ダヴの腕前を楽しむことができる作品です。
「宙吊り」
ペースアップし、不当に解雇されたメイドに同情したダヴが、言いがかりをつけられる元凶となった一万ポンドのエメラルドをクレーンで宙吊りにした自動車から消失させます。
「偽造の定番」
ダヴは、愛する地元を守ろうと、ある地方全体の風景を盗むことに。ダヴの盗品目録の中で、これが最も奇抜でした。
「ガルヴァーリー侯爵のダイヤモンド」
ガルヴァーリー侯爵に同情したダヴは、彼のものであった宝石を取り返そうとします。ダヴが利益を得ないところは異色の作品と言えます。
「貴顕淑商」
巨大食品会社の給料があまりに安いことに憤慨したダヴ。会社を盗み、乗っ取って給料を倍増する。方法については、ダヴのバラエティーに富んだ手段の多さが分かります。