川端康成『古都』を読んで
『古都』川端康成 1968.8.27 発行 新潮文庫
この小説の舞台は京都で、年中行事が繰り広げられています。加えて、それぞれの章として、春、夏、秋、冬と四季をめぐって終わるという構成で、それぞれ四季の風物が描かれています。
物語というより、それよりも京都の風土が描写されているところや京言葉が印象に残りました。
京都の昔ながらの風習、祭りの起源など、京都の伝統的なことが説明されているので、興味深かったです。実際に京都を訪れたかのように感じさせ、観光した気分になりました。
千重子は、スミレの花や鈴虫の自然の生命に自分を重ねて、狭くて苦しい生き方に自分はどうなんだろうと疑問を持ちます。そこに着眼してそこに物思うのは素晴らしいなと思いました。
この場面で、杉の木が人工的に作られているの見て、それよりも人の手が加わってない原生林の方が好きだと苗子は言います。
ただ、京都の美しさは、自然を人の手で心を込めて形作った美しさもあると言えます。
確かに、今まで破壊されることなく育った自然は神秘的なものを感じますが、放っておくだけでは決して見ることができない美しさを感じとることができます。
タイトルの『古都』は、今現在ある京都ではなく、「失ってしまった都」という意味合いがあるのはないかと思いました。もしくは、別の世界、幻想的な雰囲気が漂うものにしたかったのかもしれません。
ここまでお読みいただきありがとうございました。また次の記事でお会いできたらと思います。