その講義は哲学に溢れていた。
毛量が多い白髪には勢いがあってが背筋がしゃんと伸びている。講演中に舞台上をうろうろ歩く、この人はいったい幾つなんだろう。
「バカの壁」が400万部を超えるベストセラーになった、養老孟司さんの講演会に行ってきました。
講演が始まると隣の席の人はノートと鉛筆を取り出し、大学の講義を受けるかのようにメモを取り始めました。お話のリアクションにも一生懸命で、うなずいたり笑ったりと講演に夢中でした。
私はその人にも気を取られつつ、養老孟子さんの哲学的なお話に耳を傾けていました。
幅広い多くの知識の中から、人の心と体、脳についてのお話から始まりました。
自分の体調というものは、自分が想像できる範囲で、どんな食材を使ってどのように作られたのか、その出所が分かったものを食べていれば、調子が悪くなった時に自分自身でその原因が分かる、そうした生活はとても大切だと話され、それが自給自足のお話に繋がります。
養老さんは意外にも医者嫌いで、長年検査をしたことが無かったそうですが、どうも調子が良くないので一度検査をしようと好きではない病院に出掛けて、心筋梗塞が分かり、カテーテルの手術をしたことをお話されていました。昨年の6月だったそうです。
私は養老さんのお話を伺いながら「何だか母に似ているな―」と思いました。母は、日頃から買ってきたお惣菜に敏感で、何を使っているか、どのように調理しているかが気になるらしく、食べて調子が悪くなったら、原因を突き止めて、次からは買うのを辞めようとします。それと同時に医者嫌いなのも、養老さんと同じだわと思って聞いていました。
養老さんが検査を受けたのは体重が一年間に10キロ近く減ったことと、飼い猫のようによく眠ることが多くなったからだそうです。「これはいつもの自分では無い」と思って、奥様の勧めもあって検査を受け、心筋梗塞が発見できて命拾いしたそうです。
今あげたのは講演の中の一端です。養老さんは様々な事柄に対して、自分なりの考えを持っていらっしゃって、それを威圧的でなくさりげなく笑いを誘ってお話されていました。
大学で授業をしているように白板に文字を書きながら、今、頭に浮かんだことをすらすらと話すように、知識の引き出しを開けて、自分のペースで淡々と緩やかに話を進めます。
分かっても分からなくてもそれはあなた次第、世間の多くの人の中で、あなたはどれを選択するのかな。広く大きく、人を俯瞰している感じでお話されていたのが印象的でした。
理解できる人と理解できない人がいて、それぞれの考え方の壁はひょいとは越えられないけれど、越えてみるのもいいかもしれないし、あなたの壁の向こうにはこんな意見もありますよ、そんな感じで話されている姿が養老さんらしいと私は思いました。
昭和12年生まれとおっしゃっていましたが、一時間半の講演を舞台上を散歩するかの如く、ゆっくり歩きながら講義をする姿は、とても80歳を過ぎている方とは思えませんでした。
都会と田舎を定期的に行ったり来たりする、昔の参勤交代のような暮らしが理想的だと提案され、都会の人が年に数か月、田舎の小さなコミュニティで、生活し、自然に触れることでその営みを通じて環境問題を考えるきっかけにもなる。特にコロナ禍でリモートワークが当たり前になってきた今、こうした考えも受け入れられやすくなったとお話されていました。
知識を持つことは人生をどれだけ豊かにしてくれるのか、養老孟子さんの講演会は養老さんの哲学に溢れていました。私は自宅に帰ってもう一度「バカの壁」を読み返してみました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《私はベストセラーは読んでなかったんよ、読んでみよか》
リビングで美味しいフルーツを食べているばあばと
「私も元気じゃったらお話が聞きたかったわい、私とほんの少し考え方が似とるとは、医者嫌いは同じじゃね、自分の体は自分が一番ようわかる、食べるもんをちゃんとチェックしよるけん私も」
「お母さん、そこだけかもしれんよ、似とんは・・・」
「毎日体重を計るんも重要よね、大事じゃと思うよ」
「お母さんは、そのことばっかりじゃねー」
「他のお話もきっとものすごく良かったんじゃろ、私もバカの壁読んでみようかなー」
母はどこか自分と共通した考え方がある事が無性に嬉しかったようで、養老孟子ファンになりそうな感じです。人は意見が合いそうという人をかぎ分ける時、共通の何かを大切にするようです。
【ばあばの俳句】
掃き終えし狭庭眺める夏の朝
自分が出来ることはしっかりやっておきたいと言う母の精神に溢れている句です。毎日の日課の草むしり、掃き掃除を終えて、きれいになった小さな我が家の庭を眺めて満足している自分自身を詠んでいます。
最近は外出の機会が少ないので、母は自宅で自分が頑張っている姿を詠むことが多くなっています。外に出たいモードになっているのが私にはよくわかります。
▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。
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