病院で出会ったプロフェッショナル
人は元気な時は、周りからの様々なアプローチもウェルカムな状況だと思いますが、少し不安な時には小さな事にも敏感で、ナイーブになっているはずです。私は先日、体に不安な症状が出たので病院で検査を受けました。
最終的には本当にラッキーなことに、心配には至らなかったのですが、今日はその時の看護師さんのお話です。
検査の予約をしていた病院で、確認したい事があって前日にお電話をしました。対応してくださった看護師さんの、声が明るくて、落ち込んでいる自分の不安な気持ちが取り払われるような優しい対応でした。私はその声でまず病院への恐怖心が払しょくされました。
検査当日は、朝早くから、同じ時間帯に5人の患者さんが来院していました。看護師さんが説明をしてくださるのですが、私はその声を聞いて、昨日の電話に出てくださった方だとわかりました。声の仕事をしていたので人の声には敏感なのです。
その看護師さんはとても分かりやすく、検査の流れを説明してくださいました。親切にそして丁寧に、押し付けがましくなく、十分に理解できない人が何度も聞き直していましたが、何度聞いても、誰に対しても変わりなくフレンドリーな接し方です。
私はその看護師さんの患者さんへの対応をじっと見ていました。その日検査する5人は、男性3人、女性2人、私を含めてそれぞれ全く違った個性の人たちでした。その一人一人に合わせた臨機応変な対応です。
大腸の検査なので、かなりの量の下剤を1時間程かけて、ゆっくり飲まなければいけません。看護師さんから「ゆっくり、時間を区切って、少しずつ飲んでくださいね」と言われているのにもかかわらず、カップにつぎ分けた一杯を一気に飲んだ男性がいました。
「あんた、これ一気に飲んだんじゃけど、いかんかったんかな」
看護師さんはその人の喋りに合わせて方言で語ります。
「これはゆっくり飲まんとね、吐き出す人もおるしね、残りはゆっくり飲まんと、時間をみてね、美味しかったんかな・・・」
「喉がかわいとったんよ・・・」
それから看護師さんは、その男性の様子を観察しているようでした。
私には「大丈夫ですか、飲みづらくないですか、お水も飲んでくださいね、お水はこちらです、あれ飲んでないですねー」
「お水の蓋が開かなくて・・・」
「あー、すみません、蓋が堅かったんですね、私たちの方で開けておけばよかったですね」と、親切に対応してくださいます。
こんな調子で、患者それぞれに合わせた対応で、有名旅館の女将さんのような接し方でした。何を聞いてもにこやかに応対してくださいます。
いよいよ検査のための注射を打ちます。
カーテン越しに隣の男性に語りかける声が聞こえます。
「アルコールなどでカブレたことはありませんか・・、右手に打ちますがいいですか・・・」
「あんた、わしゃ、まな板の上の鯉よ、何でもかまん、かまん、問題ないけん、やってや」とまるで常連の飲食店のおかみさんに話しているような口調です。
「病院に来てな、若い人らに話ができて、看護師さんに会うんはええもんよ・・・」
私は隣のベッドに横たわりながら、苦笑いをしていましたが、看護師さんは「よかったねー、話ができて、この後は麻酔するけん、話せんよー」
なんと上手い接遇かと思って聞いていました。
私には、「何か注射で心配なことは・・・」
「絆創膏でカブレるんです」
「それじゃあ、刺激が少ないのにしますね、注射の下の枕あった方がいいですか・・」など優しく対応してくださいます。
初めて検査を受ける私の気持ちは随分和らぎました。
それぞれの人に合わせた細やかな心遣い、それは見事で、語弊があるかも知れませんが、まるで評判がいいスナックの明るいママさんのような接遇でした。私は看護師さんの患者さんへの対応を見ていて自らの人への接し方を学びました。人の心を和らげるというプロフェッショナルな接遇を学ばせていただいたのです。
私は親切な検診の後、いい結果が得られてほっと胸を撫でおろしました。
今日は接遇がプロフェッショナルだった看護師さんのお話をさせていただきました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《あんたホントに何にもなくてよかったわい》
肉も魚もペロリと食べて大満足の夕食の後のばあばとの会話です。
「しかしええ看護師さんで良かったねー、親切な人じゃったら、気分も違わい、ほじゃけど今医療の現場は大変でねー、看護師さんもえらいわい」
「ほうよねー」
「病気の時にはそんな看護師さんじゃったら、心が和まいね、そうあるのは中々大変よ、ベテランじゃないと」
本当に私は、ラッキーでした。どんな現場にも、その職業のスペシャリストがいらっしゃるんだと改めて感じました。
【ばあばの俳句】
バス停へ軽き足取り夏めきぬ
どこかに出掛けるために、私たちは近くのバス停を必ずと言っていい程使います。母にとっては、そのバス停へ向かうのも、しんどい作業なのですが、出掛けられる気持ちの方が優先して、足取りが軽く感じるようです。
ほんの少し汗ばむこの季節ですが、母はとにかく出掛けられる幸せからこの句を詠みました。
イラストには母の嬉しいお出かけの起点になるバス停が度々描かれています。
▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。
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