僕はお祖母ちゃんのDNAを受け継いだ
◇◇ショートショートストーリー
僕は、料理を作っているお祖母ちゃんの手を見て、指の長さや関節のごつごつしたところが、僕に凄く似ているなと、思います。お祖母ちゃんは昔から手先がとても器用で、裁縫も編み物もとても上手で、僕に色々なものを手作りしてくれました。
そんなお祖母ちゃんは、小さい頃は図画や美術の時間が大好きで、小学校の写生大会では、特選をもらったこともあったそうです。
僕が、生まれた時は、お祖母ちゃんが僕の絵を描いてくれて、その絵は今もリビングの写真立て入れて、飾っています。
お祖母ちゃんはまともに絵を習ったことはありませんが、かなり上手です。
僕は小学校6年生の時、お祖母ちゃんをモデルにして描いた絵が県のコンクールで特選を取ってから、絵を描くことが好きになって、今は、大学で美術を専攻しています。
お祖母ちゃんは、僕が絵を描いていると、傍でいつもじっと楽しそうに見ていました。
いつもは眺めているだけのお祖母ちゃんに「ばあちゃん、自分も描いてみたら、楽しいよ」と言うと、お祖母ちゃんは凄く嬉しそうに「ほんと、面白そうじゃねー、あんたの横で描いてみよか、嬉しいな・・・」と言って、僕の前にちょこんと座って、ニコニコしながら描きはじめました。
僕の筆使いを真剣に見て、ゆっくりゆっくり、楽しんで描きあげました。お祖母ちゃんが描いたのは、僕です。そして僕は、僕を描くお婆ちゃんを描きました。
時折二人の目が合って、恥ずかしくなって、二人同時に笑いながら描いたりするのがとても楽しい時間でした。
僕はその作品を家族をテーマにしたある企業のコンテストに応募しました。今回は、かなり自信がありました。大好きなお祖母ちゃんがモデルだったからです。
コンテストの入賞作品には電話で結果が伝えられることになっていました。
いよいよ、発表の日、僕は携帯が、鳴るのを心待ちにしていました。すると午後一番に携帯が鳴りました。僕は、ワクワクしながらスマホを耳にあてました。
「井上修さんですか、おめでとうございます、応募作品が入選なさいましたよ、表彰式に是非お越しください」
「ありがとうございます、うれしいです、よかったです」
「それから・・・・・・応募された井上栄さんも、こちらの番号でいいんでしょうか・・・・、結果をお知らせしたいんですけど・・・・」
「はい、僕の祖母なので、僕から伝えますよー」
「あー、おばあ様でしたか、実は井上栄さんの作品がグランプリです」
「えー、やっぱり・・・、お婆ちゃん、やったよ、婆ちゃんが描いてくれた僕の絵、グランプリだって・・・」
お婆ちゃんは何のことか分からずキョトンとしています。
僕はお婆ちゃんに説明しました。
「ばあちゃんの絵があまりにもよかったけんね、僕の作品と一緒に、コンテストに出しといたんよ、それがねー、グランプリになったんよ、すごいねー、グランプリじゃと」
おばあちゃんは、突然のことでびっくりしていましたが、事情を聴いて、孫とのダブル受賞に、大喜びです。
「あんた、悪いねー、私がグランプリで・・・グランプリはあんたに譲ってあげらい」
僕は、お祖母ちゃんのDNAを受け継いだことが本当に嬉しくて、細長く節くれたお祖母ちゃんの手をしっかりと握りしめていました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《わたしもDNAを感じることがあらい》
「よかったねー、おばあちゃんの作品を出してあげて、不思議なもんでねー、DNA感じることがあらい」
「お母さんは、お父さんのDNAを受け継いどんじゃろ」
「小さい頃にお父さんのが、家の襖に虎の絵を描いた時、本当に上手じゃったわい、今になって振り返ったら、そんなことがあらいねー」
「あ母さん、やっはり受け継いどるねー」
私は、母の、足や手の形や指を見ていて、母に似ているなー、と思います。ポジティブな思考、これは間違いなく、母譲りです。
【ばあばの俳句】
軽やかに羽もさ揺らぐ若葉風
目に鮮やかな新緑を吹く風が、優雅に闊歩する鶏の柔らかな羽までも揺らしている。母はそんな初夏の風景を詠みました。すべてのものが緑の風に癒されています。
母は大好きな伊藤若冲のオマージュを描きました。このイラストの中にも心地よい若葉風が吹いています。鶏の目も、やさしく喜んでいるように見えませんか・・・。
▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。
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