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おとぎばなしの手紙〈六通目〉本

 本は表紙の色によって、なかになにが書いてあるかきまっていて、あおい本は地図、あかい本は探偵、きいろい本は料理です。なので、たびびとのへやの本棚は、うみやそらのような気持ちのいい色をしていますし、推理ずきの部屋は血ぬられていて恐ろしく、くいしんぼうの部屋はオムレツです。

 でも、ほんとうに本のもつ意味をしっているのは、まっくらやみで本を読むひとです。文字も絵も見えませんが、見えなくてかまいません。それはなぜかというと、本というのは、その紙の匂いに、なかみがぜんぶ溶けだしているからです。

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おとぎばなしの世界でみつけた、たのしいおはなしや、めずらしいおはなしを手紙にかいて、つむじかぜゆうびんで送ります。つむじかぜゆうびんはいいかげんなので、いつ届くかわかりません。渡り鳥の切手の代金をいただきます。

おとぎばなしの世界でみつけた、たのしいおはなしや、めずらしいおはなしを手紙にかいて、つむじかぜゆうびんで送ります。つむじかぜゆうびんはいい…

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