感想記「光る君へ」第21回から第25回まで
先週の大河ドラマ『光る君へ』はパリ五輪でお休みでした。
代わりと言ってはなんですが感想記を皆様にお届けします。第21回から第25回までの放送分をまとめました。振り返りの追記もありますのでかなり読み応えのある文章量になっています。お時間あるときに読んで頂けたなら嬉しいです。
長文を読むのが苦手な方、ドラマを観ていない人にもぜひ楽しんで頂きたいのでお蔵入りとなった梅の時期の宿場町風景を載せています。それでは感想記「光る君へ」をご覧ください。
目次
はじめに
平安貴族の大河ドラマということで感想の中に「宗教」や「政治」の話が出てくることがあります。読者にわかりやすいよう例として現代の状況を織り交ぜていますがそれらはすべて私見であり、不特定多数に私の思想や理念を押しつける意図はまったくございません。
細心の注意を払っていますが不快感を与える表現がもしかしたらあるかもしれません。不適切な言葉があればその都度修正して参ります。あとここを討論の場にしたくはないので、見解の相違をご主張されたい方は私の関係ないところで書いて頂けると助かります。相互不干渉でお願いします。
第21回「旅立ち」
大河ドラマ"光る君へ"第21話「旅立ち」観ました。
悲劇のヒロイン定子。本当に可哀想な回でしたね。本人の落ち度はまったくないのに兄弟のせいでフルボッコ。身籠っている子が天子になればすべての汚名は消え去ることになりますが、果たしてどうなるのでしょう。前回の感想に書きましたが、清少納言という優秀な側近でありかつかけがえのない親友がいるって幸せなことだと思うんです。ただ女の頂点を極めた人はそのことになかなか気づけない。生きることは罪だと誰かが言っていました。定子の人生を見ていると、幸せってなんだろうとつい考え込んでしまいます。
さて、いつもの場所でいつものまひろと道長の密会シーン。今生の別れになるかもしれないのに別れのキスだけで済ます二人。そんなに好きなら手元に置いとけばいいのに。関係が嫡妻にバレそうになったからとか確かな根拠は欲しかったかな。そもそも今回のシーンで濃厚なキスをする必要性はまったくなかったです。視聴率が振るわないということでNHKがテコ入れを図ったのでしょうね。安直ですよ安直。
テコ入れといえば周明という松下洸平さん演じる新キャラが登場しました。あれ完全に第二の"直秀"ですよね。大河ドラマのオリジナルキャラクターって当たり外れが大変激しく悪評へ繋がることが往々にしてあります。"二匹目のドジョウ"になればいいのですがすごく心配です。舞台はガラリと変わって越前編。タイミングバッチリに北陸新幹線が敦賀まで延伸したので大いに盛り上がってほしいです。
春風の京都・稲荷山登頂リベンジ旅「にしむら亭で甘酒」より引用 (note.com)
第22回「越前の出会い」
大河ドラマ"光る君へ"第22回「越前の出会い」観ました。
初回の母の死も衝撃でしたが、章の始めということで今回もすごく気合が入っていましたね。"ブギウギ"で活躍した名バイプレイヤーが登場三十分で謎の死を遂げ、寡黙な薬師・周明が最後のシーンで流暢な言葉を口にするというとにかく大興奮の展開でした。謎が謎を呼ぶ越前編。最高の出だしと言っていいと思います。
さて主人公のまひろと道長ですが、二人とも別の異性に浮ついていましたね。まひろに至っては「左大臣は随分頼りない」と愚痴る始末。まぁそれはお互い信頼しているからこそと見ることもできます。
『光る君へ』は長編ドラマということで枝葉の部分もしっかりフィーチャーされています。前回は枕草子がテーマとなり、今回は父・藤原為時の愚直さがクローズアップされました。今風に例えるなら、新進気鋭の新市長が初当選し市民のための改革を実行しようとしたところ、腐敗した役所の幹部や地方議会に抵抗された、といったところでしょうか。このような社会派ストーリーは大衆の心を踊らせます。池井戸潤さん原作ドラマがまさしくそうですよね。為時とまひろはどうやってこの難局を乗り越えていくのか。一週間待ちきれません。
春風の京都・稲荷山登頂リベンジ旅「刀剣ゆかりの長者社神蹟こと御劔社」より引用
第23回「雪の舞うころ」
大河ドラマ"光る君へ"第23回「雪の舞うころ」観ました。
まひろと周明が散歩をしている砂浜のシーン。あのロケ地って鳴き砂で有名な琴引浜なんですね。所在地は京都府京丹後市なので正確には越前国ではなく丹後国の景色になります。私は京都贔屓なので個人的には嬉しいですけど、なぜ本当の気比の松原で撮影しなかったのでしょう。絵の問題とか大人の事情とかいろいろあるのかもしれませんが、観光誘致をした福井県民がどう思っているのか気になるところです。
越前編のもう一つの舞台である松原客館は、ドラマでは宋人たちの仮住まいになっています。氣比神宮の傍に建てられたという説がありますがハッキリしたことはわかっていません。気比といえば高校野球の名門、敦賀気比高等学校が有名です。私は甲子園大会で初めて福井県に氣比という地域があることを知りました。北陸道総鎮守であり越前国一之宮の氣比神宮にぜひお参りしたいですね。出来れば松井山手駅から北陸新幹線に乗ってみたいですけれど、リニアを筆頭に日本の鉄道建設はどこも進んでいません。一方、高速道路建設は順調で新名神高速道路は完成の延期を発表したものの着実に前へ歩んでいます。完成すれば福井県がググッと近づきます。北陸旅は高速バスで行くのが現実的なのかな。
春風の京都・稲荷山登頂リベンジ旅「四つ辻の展望台と熊鷹社」より引用 (note.com)
第24回「忘れえぬ人」
大河ドラマ"光る君へ"第24回「忘れえぬ人」観ました。
まひろと藤原宣孝の縁談が進み、罪を赦された藤原隆家はあっけらかんとしてて、親友のさわさんが亡くなり、出家したのに一条天皇の一声で舞い戻ってきた定子。起承転結の承に重きを置いたストーリー展開だったので今回考察はしません。代わりに本編後に放送された"光る君へ"紀行・第24回「福井県越前市」のお話をしようと思います。
越前国府の所在地はこれまでハッキリしていませんでした。1996年に調査開始。2023年9月に本興寺で五カ年計画の本格的な発掘が始まり、1ヶ月後の10月に溝が見つかりました。平安時代後期以前の層から出てきたもので区画を示した遺構とみられています。千年前の越前国の歴史は多くの謎に包まれていて松原客館も特定には至っていません。
福井県は古来より軍事と交通の要衝で、延喜式の等級では北陸道唯一の大国に区分されました。武士の時代になると新田義貞、朝倉義景、柴田勝家と名だたる武将が越前を治め、江戸時代には親藩の松平家が統治を行ないました。明治時代に天皇が京都から東京へお遷りになり、昭和中期に東海道新幹線が開通したことで福井県の重要度は一気に低下します。
正直申しますとわたくし、福井県は「原発」「新快速の終着駅」「フェリーターミナル」この三つのイメージしかありませんでした。メディアによくいる地元愛に溢れた有名人が福井県だとまったく見当たらなくて、関西と北陸以外の人にはほとんど認知されていなかったのではないでしょうか。都道府県魅力度ランキングでも下位に沈む福井でしたが、今年三月に県民の悲願であった北陸新幹線敦賀駅が開業しました。今後は東京から福井県へ旅行する人が大きく増える見込みです。大河ドラマと新幹線の相乗効果で大いに盛り上がってほしいですね。
春風の京都・稲荷山登頂リベンジ旅「千羽鶴と少しだけ疏水さんぽ」より引用
第25回「決意」
大河ドラマ"光る君へ"第25回「決意」観ました。
帝と左大臣の間で板挟み。中間管理職の悲哀に溢れていた藤原行成。本当に可哀想でしたね。だって彼は三蹟の一人に数えられた天才能書家であって調整に秀でた政治家ではありません。そうそう。Amazonプライムビデオ『岸辺露伴は動かない』を何気なく視聴していたのですが、渡辺大知さんご出演されていたのですね。狂気的な役柄で温和な行成とは大違い。またひとり好きな俳優さんが増えました。
兄弟の不始末のせいで内裏を追い出され剃髪することになった不遇の中宮定子。あまりに可哀想な運命に最初は同情していたのですが、職御曹司に移られてからはなんといいますかガッカリしました。鴨川の氾濫で多くの人が亡くなったのに、楽しかったあの頃に戻りたい、なんて宣う脳内お花畑。やはり中関白家にとって民衆は虫けら以下なのでしょう。「悲劇のヒロイン」から「傾国の美女」へ転落した瞬間でした。"光る君へ"では白楽天の詩がたびたび登場しますが、なんと白居易(白楽天)の長恨歌に「傾国の美女」が出てくるのです。脚本家の方々は文献をかなり読み込んでいるようなので、もしかしたら次週以降に伏線回収があるのやもしれません。本来人を愛することは大変素晴らしいことです。しかし中宮定子の愛はあまりに身勝手で帝のお仕事には無関心のご様子。蛙の子は蛙。彼女が描く華やかな世界に民は存在していないのでしょう。
ちなみに実際の中宮定子は「傾国の美女」にカテゴライズはされておりません。歴史書にそのような記述は見当たらず、彼女の無意識な悪女っぷりはドラマの演出であることを注記しなければなりません。定子ファンの皆様、気を悪くされないでくださいね。
『あなたの知らない京都旅~1200年の物語~』二時間スペシャルになんと藤原宣孝役の佐々木蔵之介さんがご出演されていました。番組初登場なんだそうです。TVerで7月4日まで視聴可能となっているので気になる方はぜひ観てみて下さい。本当に56歳?って思うほどのイケメンでしたよ。
あとがき
文句ばかり言っているように見えるかもしれません。『光る君へ』にハマっているがゆえなのでどうかご容赦願いたいと思います。
私はききょうの理想主義より、まひろの現実主義に共感します。人はダメなところがあるからいいところがより引き立って見えます。主人公の光源氏は人生すべてが光り輝いたものではありませんでした。現在話題となっている誹謗中傷はもちろん絶対によくないことですが、讃美しか許されない世界は理想郷とはなりません。完全なディストピアです。
とまぁささやかな自己弁護をしたところで今回の感想記は終了と致します。これまで10回区切りでしたがさすがに一万字を超える文字数は誰の得にもならないので5回区切りに変更しました。次回の感想記は第35話が終わったあたりで投稿する予定です。
また見に来てください。ご精読ありがとうございました。
参考文献
追記
『ドラマ感想文』『テレビドラマ感想文』二部門でスキの週間一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝!!
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