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【読書】失われた30年の始まりをハマコーの著作とともにと考える? 後篇1

前回のお話し

今回も、浜田幸一の問題作「新版 日本をダメにした九人の政治家」を取り上げます。

ちなみに、前回の記事はこちらになります↓


前回とほぼ同じ注意

この記事では、浜田幸一氏の著作を元に話を展開しています。したがって、山田(仮名)が特定の政治信条を批判したり、政党や政治家を非難したり、また支持することを意図したものではありません。

記事を読んでいて、気分を害されることも生じるかもしれません。もし、当方の表現力の無さからくるものでしたら、あらかじめ、お詫びします。

あと、本書の良さを引き出す手段として、ここからは政治家その他登場人物に敬称をつけませんので、悪しからず。


きっかけ

本書は第40回衆議院議員総選挙の直後に刊行されました。

この選挙の前の年の1992年に、金丸信の議員辞職に伴い、自民党は宮沢喜一総裁のもと、幹事長に梶山静六、政調会長に三塚博、総務会長に佐藤孝行をの体制し、政治改革に着手しようとしました。

梶山静六三塚博については、本書でも言及があるので、そちらに任せるとして。

佐藤孝行は、ロッキード事件にて執行猶予付きの有罪判決を受け、執行猶予が終わった1991年自民党に復党した人物です。

まー、この人選で政治改革ができるのかという話は脇に置き、結果として、この執行部により、自民党は国民の信頼を決定的に失い、内閣不信任決議案が自民党の一部議員の造反により可決。

宮沢喜一は解散に打って出ましたが、総選挙で敗北。結果として自民党は下野したわけですから、当時の内閣総理大臣であり、自民党総裁の責任は重大です。

本書でも、宮沢喜一の決断力のなさについては、厳しく批判しています。

エリートであるがゆえ

ただ、宮沢喜一の戦後日本に果たした功績については、本書でも高く評価しています。

広島の政治的名門の出で、東大から大蔵官僚に。1949年には池田勇人蔵相秘書官として、講和条約の準備交渉に携わり、1951年サンフランシスコ講和会議では全権随員として参加しました。

森啓成様のつぶやきにもあるとおり↓

通訳なしで、世界の首脳クラスと議論できる抜群の能力を誇る方でした。

ただ、本書でも、

相当の頑固者なのに、闘争力、決断力に乏しく、優柔不断。内政問題のみならず、外交問題においてもしかりで、自由主義国家陣営における日本の寄与、貢献、経済協力の姿勢を含め、あまりにも消極的でありすぎた。愛される日本ではなく、逆に嫌われる日本をつくってしまった。

本書P229より

と評しているように、優柔不断なところ、消極的な姿勢は、必ずしも褒められた点ではないと思います。

優柔不断に関しては、本書でも取り上げている

  • リクルートからの株譲渡発覚時の対応の不味さで大蔵大臣を辞任

  • 肝入りの政治改革法案(小選挙区制の導入)も結局成立断念

などから見ても、宰相としてはイマイチだったと言わざるを得ないかなと思います。

院政を敷く長老

ただ、宮沢内閣の成立の背景には、当時、実力があった竹下派経世会の力が必要でした。

というのも、竹下登のあとの総理は宇野宗佑海部俊樹宮沢喜一と続きます。当時の竹下派の数の力というか、竹下登が影響力を及ぼしやすい人物が就任していました。まさにキングメーカーというべきでしょうか。

このような姿勢に対し、本書でも

当時、宮沢派の誰かが、こんなことを言っていたものだ。

「竹下さんは表に立ったときは大したことはないが、裏に回ったときは手ごわい存在になる」

この言葉どおり、竹下内閣は倒れたが、竹下さんは党内最大派閥を背景に院政を敷き、依然として権力の行使を続けてきた。かねてより、各方面にそれだけの配慮をしてきたからだが、それによって自民党に対する国民の信頼がどんどん薄れていっているということに、竹下さんがお気づきになられなかったようだ。

本書P176からP177より

とあるように、院政の問題を指摘しています。

ただ、竹下登よりも、紙面が割かれているのは、中曽根康弘です。

カネと風見鶏

本書では、三塚博に関しては「誰よりも先に辞職」と言い、1章全部+αを使って厳しく断罪しています。その次に手厳しいのは、中曽根康弘に対するものです。

浜田による中曽根に関する話を、概ね時代順に並べると

  • 田中角栄vs.福田赳夫のいわゆる角福戦争時の中曽根の対応

  • 三公社(日本専売公社、日本国有鉄道、日本電信電話公社)民営化後の利権の話

  • リクルート事件よりも深くてマズい話(当時は土地バブルだったこともある)

  • リクルート事件で唯一逮捕された国会議員である藤波孝生への中曽根の対応

  • リクルート事件の件で辞職したあと、派閥の後継者となった渡辺美智雄に対する"渡辺つぶし"

  • 当時の日本新党新生党と中曽根との関係

などなど、ほぼカネと風見鶏の話が続きます。

本書の話が全て真っ赤な嘘であればよいのですが、そのような疑念がある方が院政を敷けばどうなるか。想像に難くないと、私は考えます。

本質

本書は、

私は、本書を断腸の思いで書いた。日本の将来のためとはいえ、かつて同じ釜の飯を食った同志たちを、実名で俎上に上げざるを得なかったからである。それゆえ、少々、筆が鈍ることもあったがね。

本書P321より

とあるように、あくまで日本の将来のために書いたとしています。

遠慮している部分もあるでしょうが、口述筆記ということもあり、筆が鈍っているとも思えません。

特に、三塚博中曽根康弘には強烈ですが、宮本顕治日本共産党日本社会党に対しては本編でも厳しく批判しています。1995年に刊行された新版である本書では、池田大作のフィクサーとしての役割に言及しつつ、野合政権と切り捨てた自社さ政権、自民党下野後の竹下登梶山静六小沢一郎はかなりキツいコメントだと思います。

とはいえ、本書がただの暴露本ではなく、日本の将来を憂いている面も見受けられます。

そのあたりは、次回、取り上げてみたいと思います。

(続く)

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