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「平家納経」のお姫さまの十二単衣(じゅうにひとえ)
「平家納経」の模写の模写(モシャモシャ)をしながら、ゆかりの画材、歴史などフワフワとかいています。
綺羅引きをした紙に薄墨でかすかーに線をつけていよいよ色を塗っていく。濃くすると後で目立つので薄く描くが、かすか過ぎてもはや当たりという感じ、どこまでぬっていいのやら。
まずは胡粉(ごふん)。胡粉は牡蠣や帆立の貝殻を粉末状にした白い顔料。最近ではネイルなどにも使われている。
この胡粉を膠で溶いて使う際には慣れが必要で、上手く塗れたためしがなく、よくある日本画のように筆の刷毛跡が残らないように塗りたいけれど、私のはいつもムラムラ、つまりむらだらけだ。
胡粉を塗ったら、その上から色を塗っていく。
まずは画面右の二名の十二単衣のお姫様(女房?)がどんな衣装を着ているか、推理するのだ。
画面右下後ろ姿の女房サンは白地?にブルーの木瓜紋?の唐衣(からぎぬ。短い上着)、えんじ色の花唐草に裏地は花菱紋っぽい表着(唐衣の下に着る袿)、えんじの長袴らしきもの、若草色の三重襷に花菱文様のような裳(腰から足元にかけて後ろに垂れるひき裾、トレーンのようなもの)らしきもの、白地に緑と青の入った引腰(裳に沿って左右に流れるリボン状のもの)、檜扇をうっちゃって数珠を持ちうつむいて熱心に祈っている。
画面右上の女房サンはオレンジ色の唐草文様の唐衣に若草色の花菱の入った七宝紋の表着、えんじの引腰らしきものもみえる。青の三重襷もみえるが、これは裳?のよう。同じく数珠を持って天に向かって祈っている。二人には仏様からか画面左上から光線が指している。
うーむ。「らしき」ばっかりで画集を見ても正確なことがわからないのだ。でもここは素人の良いところでわからないなりに進めてしまえる。
裳や引腰ってフツー白地じゃない?なんて気にしない気にしない。ちなみに女房サンたちの衣装の文様は有職文様と言われる公家の装束や調度,建築などによく用いられる文様が使われていて、雅やかな雰囲気を醸し出す。
ところで東京国立美術館の「平家納経 模本の世界」図録によると、昭和の数寄者、高橋箒庵と益田鈍翁が平家納経の模本制作の資金集めをする際に、この有名かつ極めて美しい厳王本の原本を披露したそうだ。
また、この図録によると親美サン(田中親美さま)は模本にあたって国宝の原本を東京に取り寄せ原寸大の写真も撮って作業をした。といっても大正時代なのでモノクロだろう。原本の金箔など箔の位置もふくめ硫酸紙(トレーシングペーパーみたいな)に写し取り、その成分も調査したという。絵を写すのは弟子で書は全て親美サン。それも何度も見て目に焼き付けて書いていった…凄すぎる。当たりをつけたり、うすーく写したり、下書きしたりなどとは、当然気合いも何も、別物、別格なのだ。カラー写真無いし、色はどう再現したのだろう