どろっぷ あ、ぴん
等距離に離れ
保たれた惑星は
わかり合えなさを
媒介にして
優しいまなざしで
ほかの天体を見やる
固まった地殻が
あなたの核をまもる
緑色のかんらん岩
凝固したマントルを
内側から溶かして
駆動する
地表に噴出した
1200℃のマグマ
急速に冷えて固まった
だいじなものだけ
揮発した
あとに残った岩石が
わたしを覆う
よろいになった
口に出したこと以外の
ぜんぶがあなた
口に出せたこと以外の
ぜんぶがわたし
惑星の核は
ほれこんなものだと
差し出せない
あなたの葛藤は
まぎれもなく
あなただけのもの
嫉妬も後悔も
ざらざらとした
劣等感も
いまのわたしを
成り立たせるもの
澱みをろ過して
生まれる磁力
自浄するのが
むずかしいなら
せめてわたしは
澱(おり)が
からだに
まわり切るまで
だれかのために
この身を使おう
どろっぷ あ、ぴん
わたしの惑星に突き立て
現在地を決める
黒い紙の上
ピン留めされた
惑星たちが
交わることなく
楕円軌道で周回する
想像する赤い点線
あなたのもとに
伸びる軌道はない
生傷も
かさぶたになる
知らないあざも
ひとりでに消える
安堵するほどに
わたしたちは
ちゃんとひとりだ
太陽系の遠心力が
いまは愛しい