【詩】海底リフレクション
海底に沈んだらいいよな
仰向けで太陽を水中で透かしてさ
せんちめんたるな心情などお構いなしに
魚の大群が横切って 鱗で光を反射したんだ
閃光のように一瞬で
きらっとしてさ 一筆書きのように凛々しくて
なんで おれは海で生まれなかったんだろうって
思ったんだよな
水中で すぐ目あけたくなっちゃうんだよな
海中に降りそそぐ陽の光ってさ
プランクトンが雪みたいでさ
光線がおおきな柱みたいに安らかで
なんか天国みたいでさ
とにかく 死んじまいそうなくらい 美しいんだ
やわらかい光の網が
波のリズムで 皺が寄ってヨレたり
なんていうか またとない感じなんだ
一面がエメラルドの広がりの中
おれはぽかんと 長い間ひとり漂って
どうでもいいな
どうなってもいいなって思った
ほんの一瞬だけでもそう思えたなら
時間も音も摩擦もない
自由に しぬことと再生をくりかえす
この海原でも
やっていけそうだよな
海の底で反射したひかりが
長い距離をかけて旅からもどってくるとき
赤にちかい色だけ吸収されて
淡い青だけ 還ってくるんだ
赤の光線を じぶんの都合のいいものに置きかえてさ
ぜんぶ美しいものに 浄化してしまえよ
水泡の向こう 遠くに赤ん坊が見えた
すやすや 水中で寝てる
両足を抱えて 丸まって
ひかりが差し込む 緑色の海に浮かんでる
おまえは ここで生まれたんだな
よかったな
海の中では じぶんから耳を塞ぐことはないんだ
おまえが感じる苦しみもかなしみも
光の中に溶かして
ここが いつか おまえにとっての
じぶんだけの世界に
なるといいな