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土になる

走ろうと思ったら
左腕がちぎれてた
体積が減ったせいで
空気抵抗が少なくて
右にヨレてしまって
ぼくが思っている
ぼくの走り方と違った

ふらふらと
土に手をつく
手のひらに
血がにじむ
ぜいぜいと
息をつく

いったいこれは
なんの試練だ
どんな前人未踏の
高みまで
ぼくを連れていくつもりだ

摩擦がなければ
人と出会わない
他人の生に
一歩踏み込む
痛々しい
摩擦を厭わなければ
明日のきみの予定を
聞こうとも思わない
そんな不確実で
針の穴を通すような
悲しい質問を
しようとも思わない

唯一幸せを願ったひとに
触れられないことは
皮を剥がれること
きみの目に映っていないと
知ることは
言葉を奪われること

ぼくはじきに
内側から灼かれてしまう
青空に向かい
まっすぐのびる
ひとすじの煙
どれだけの時間が
掛かってもいい
どれだけ雨を
吸い込んでもいい
湿った土は
根の深い 花を咲かす
花から地面は見えなくとも
今 目の前で
枯れない 花弁を咲かす地盤となり
養分になるのだ
ぼくは、土になるのだ






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