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読書📕『サロメ』/原田マハ

※感想を思いのままに綴っています。
 後半に内容ネタバレが含まれますので、読む際はご承知おきください!
 



サロメを読了した。
ずっと積まれてて読んでいなかった本だけど、
原田マハさんの書く本は大好きなので一瞬で読み終わってしまった。

新約聖書に出てくる本編のサロメ自体はあまり詳しくなく、
無料で読んでいた漫画『累 -かさね-』で少し内容を知っていたくらい。
絶世の美女で、狂ったように恋をする女、という印象だった。


サロメとは
『新約聖書』の登場人物。ガリラヤとペレアの領主(前4~後39)であった義父ヘロデ・アンティパスの誕生日の祝宴で舞い、その褒美として、母ヘロデヤにそそのかされて洗礼者ヨハネの首を所望した王女。

サロメ(新約聖書)より


この本を読んで知ったのは、
私が知っているサロメは、オスカーワイルドによって書かれた戯曲だったということだ。
新約聖書にはサロメ、という名前すら出てこない。
美女であったこと、ヨハネに恋をしたことすら書かれていない。
私が知っていたのは  "オスカーワイルドのサロメ" だった。




この本メインはサロメの戯曲の挿絵を描いた、
オーブリービアズリーの話。
彼の儚い人生の中でどれだけこのサロメ、オスカーワイルドに翻弄されたかを
原田マハさんらしく事実とフィクションを交えて描いている。

サロメ挿絵/オーブリービアズリー作


オーブリービアズリー


私はどちらかというと印象派の絵が好きなので
こういった緻密な絵を見て、なかなか言葉にできなかった。

オーブリーの描いたサロメは、正直いって "美女" とは思えない。
悪魔的な微笑み。宙に浮いた体は死神のよう。
彼女の背中にはどす黒い、羽のようなものが付いている。

この挿絵の女性を見て私は「怖い」と思ってしまった。
少なくとも近づき難い女性、近寄ると悪にひきづられてしまいそうな、
そんな女性を思い浮かべた。


※以下よりネタバレ含む簡単な感想あり








サロメ、を読み進めながら
この本の視点となっている姉メイベルビアズリーの行動や発言を見て
確実に "サロメ" になっていってしまうのではと思っていた。
そしてその予想は的中した。

弟を、少し異常なまで大事にする姉。
弟のためなら身体を売り、人を騙し、人を陥れ、
弟までも騙す。
弟がオスカーワイルドの魅力に取り憑かれ傾倒していくのを寂しく思う姉。
弟の心を手に入れるためならなんでもするような、そんな姉。

彼女の怖さを、本を読み進めながら感じとっていく中で
「これはまさにサロメだな」と思っていた。

「ほしい…僕は…ほしい」とオーブリーは言う
「なんだってあなたの望みを叶えてあげるわ。何がほしいの?教えて」
「今すぐ、ここへ……銀の大皿に…のせて…」
「何をほしいというの?言ってちょうだい。必ずそれをあげるわ」
「……首を」

サロメ/原田マハ 一部抜粋

このシーンは確実にフィクションとは思うのだが、
このセリフはまさしく戯曲サロメのシーン、ヘロデ王とサロメの会話のよう。

そして弟の最期を迎えた後、姉はオスカーを劇場に呼び出し、
オスカーの前でサロメを演じる。
オスカーは病を抱えており、意識が朦朧とする中でこう叫ぶ。

「こい!サロメ…ここへ、褒美をつかわすぞ。
 ああ!私は、舞姫にはいくらでも褒美をやるのだ。
 何がほしいんだ?言え…」

サロメ/原田マハ 一部抜粋

そうして姉はこう言い放つ。

「………あなたの首を。」

サロメ/原田マハ 一部抜粋


姉は最後の最後まで、弟のために生涯を捧げた、と言うような形で
この話は終わる。
実際にそうだったのかはわからない。
けれどオスカーワイルドと言う男によってこの姉弟の人生が
大きく変わってしまったことは事実らしい。
オスカーと手を切った後も、オスカーが男色の罪で捕まった際に
オーブリーがオスカーと関係があったのではと編集者から首を切られたし、
メイベルも女優としての職を失ったとのことだった。

あまりにも壮絶で、悲惨な愛憎の物語。



原田マハさんの小説は、冒頭にも描いたが
フィクションと事実を交えて描かれているので
どこまでが真実で、どこがフィクションか読み終えた後に調べるのがとても楽しい。
調べることでこの偉人たちをより一層理解し感じることができる。

そして調べてわかったのだが、
弟オーブリーが関わっていた雑誌「イエローブック」の見た目が、
原田マハさんの「サロメ」表紙と見た目がとてもそっくりだった。
おそらく敬意を表してのことなのだろうと思う。
このような目を引く素敵なデザインを描けるオーブリーは本当に天才的としか言えない。

イエローブック/オーブリービアズリー
サロメ/原田マハ(ハードカバー本の表紙)


「すごく面白かった。もっと知りたい、真実はどうだったのか知りたい」
そう言う気持ちにさせるのが、原田マハさんの本。

また積んである原田マハさんの本があるので、引き続き読みたいと思う。



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