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朝顔先生のファッションに憧れて赤い服を買ったら、呼び名が「赤い人」になった話

ドラマ『監察医かんさつい 朝顔あさがお』が好きだ。

登場人物全員を好きになってしまうような演出が魅力的なのはもちろん、必ずと言っていいほど目で追ってしまうのが、上野樹里さん演じる「朝顔先生」のファッション。

法医学者という仕事柄、きれいめなシャツ姿のときもあれば、良い意味で肩の力が抜けた普段着ファッションにも好感が持てる。

中でも特に好きなのは、ノーカラーのシャツワンピース姿だ。

「観察医 朝顔2025新春スペシャル」のオープニングで朝顔先生が着用していた赤のシャツワンピは、それはそれは可愛く、画面が変わってもしばらくの間、目に焼き付いて離れなかった。

そういえば、このドラマを見るたび私はいつも同じことを考えている。

「こんな服着たいな」と。

毎回思っているにも関わらず、気付けばその願望は頭の中からいつの間にか消え去っていた。


「服、買いに行こう……!」


ひと月後、ちょうど東京に行くことが決まり、着ていくものに困っていた。

この際、朝顔先生のような服を買いに行こうじゃないか。

そして、その日がやってきた。日曜日から私は固く決意していた「次の火曜日には絶対に一人でイオンモールに行く」と。

平日に、しかも一人でイオンモール。

最寄りのイオンモールは完成して早7年。7年経っているにも関わらず足を運んだのはおそらく過去4回だ。

最後に行ったのは娘とプリキュアの映画を見に行った9月。

不慣れな場所ゆえ、映画館の入口になかなかたどり着くことができず、娘が乗った重いアンパンマンのカートをガダガタと爆走させながら冷や汗をかいて上映ギリギリに到着したことを思い出す。

私にとってイオンモールは未知の場所。たかがイオンモール、されどイオンモールなのだ。

「今日は目一杯買い物に時間を使いたい」という気合から開店時間の40分も前に着いてしまった。

開店を待つ車内では、ホームページをチェックし、見たいお店を事前に調査する。
子どもが一緒の時は、それくらい段取りしておかないとお店を回り切れないため、いつもの習慣がそうさせた。

そして、いよいよ入店。

__久々のイオンモール、しかも一人っ!!

店内は平日だからか、記憶の中の風景よりも人が少なく、広く見えた。新しい服たちがキラキラと目に映り、嬉しさのあまり口元がゆるむ。

ニヤニヤを抑えるため口を一文字にし、あちこち視線を変えながら商品を眺めて歩く。

こんなにゆっくりと店内を見て回ったのはいつぶりだろう

最近の私と言えば、育児と職探しに必死で自分の服などどうでもよくなっていた。毎日ユニクロもしくは無印良品の服に身を包み、「これ、男性が着てても違和感ないコーディネートだな……」と、ファッションに対しておばさん化していく危機感を感じていた。

しかし、今日の私は違う。上野樹里、いや、朝顔先生になるのだ。

キラキラとした店内に並ぶSALEセールの文字に圧倒され、ぼーっとし始めていた私に、もう一人の自分がささやく。

「迷ったら、朝顔先生が着ていそうな服かどうかで判断せよ」

そうだ、私は朝顔先生のファッションに憧れて買い物に臨んでいるのだ、目を覚ませ。

春を感じさせるようなFrancfrancフランフランの薄紫色の雑貨の前を通り過ぎ、調べておいたお店で手あたり次第、朝顔先生が着ていそうな服を探す。

そして、子ども用品コーナーに繋がる通路の途中にある雑貨屋にさしかかると、「おぱんちゅうさぎ」と「ちいかわ」達がニコニコと私の方を見ている。

いつもなら長女が最低5分は足止めをくらう場所だ。「今日は君たちに用はない」と心の中でつぶやき、颯爽と雑貨屋の前を後にした。

2階から3階、また2階、1階と何往復しただろう。気を抜くとGUや無印良品にふらっと吸い込まれてしまう。

大量の商品が整然と並ぶ見慣れた風景は落ち着く。これはいけない、うっかりいつもの感じで無印良品で商品を買ってしまいそうになるじゃないか。だって、朝顔先生が着ていそうなシャツワンピ、無印良品にはあるよ……?


キラキラした何かが乗ったフラペチーノ

冷静になって考えた。

ここは極寒の地。まだまだ氷点下の日々は続くし、2月は雪がどかっと降る可能性だってある。シャツワンピは季節外れなのだ。

寒いを通り越して痛い、それが長野の冬である。

年に1.2回しか行かないスタバで、ブロンドショコラシンフォニーフラペチーノという名のカロリー爆弾を飲みほし、すっかり目が覚めた。

そして、今まで見てきた商品を精査し、残りの時間でついに財布を開く。

「うん、やっぱこれにしよう」


歳をとるにつれて派手なものを身に付けたくなる現象を体感してる

どの店を回ってもノーカラーのシャツワンピはなかなか見つからなかった。反対に、「これいいな、買いたいな」と思う服は結局いつも好むのと同じなのだ。

やっぱり私は私。

一つだけ、今までとの違いがあるとすれば、真っ赤なニットを「どうだい、眩しいだろう?」と言わんばかりに着用する勇気が出たことだろうか。



その夜、満足気な顔で迎える私に帰宅した夫がニヤニヤしながら言う。

「おぉ、確かにそのコート、朝顔先生っぽいかも」

え、ニットは??
眩しいニットに何か言いたいことは?

「っぽいかも」に何か含みを感じた理由はすぐにわかった。

「あれ、でもそういうの家になかった?」

なるほどそういうことか、既視感を感じたわけだな。

確かに私は去年ユニクロで買った赤いセーターを持っていたのだが__

「それは毛玉がすごくて……」とゴニョゴニョ言い訳するのであった。

こうして私はドラマ『監察医かんさつい 朝顔あさがお』を次に見た時もきっと「朝顔先生の服、かわいいなぁ」と、憧れの気持ちを思い出し、また新しい服を買いに走り出してしまうかもしれない。だって、やっぱり私は私なのだから。

イオンモールに行った翌日、早速買ったばかりの新しい服を着て、ソワソワした気持ちで友だちに会った。

するといつもは苗字で呼ばれるのに、その日だけ私の名前は「赤い人」になった。

え、やっぱ派手すぎた……!?

平静を装いつつも恥ずかしさと、「いやいや、大丈夫でしょ」の気持ちがせめぎ合う。やっぱり、私には赤のニットはまだ早かったようだ。

でも、いつか朝顔先生みたいに、真っ赤な服をサラリと着こなせる女性になりたい。



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やきいも
プリキュアにハマるセーラームーン世代、2児の母です。2025年1月〜フリーランスになり、やりたかったことに挑戦中!

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やきいも
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