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#1パラダイスビーチの椰子の木【サモアの想いで】
🌴以下の作品は2007年〜2010年の間に、米国に暮らしながらサモア暮らしのリフレクションを記したフォトエッセイ(全20篇)の転載です。サモアには97年に住み始めたのでこれを記したときはその10年後。そして、今さらに記したときから十数年が過ぎました。
🌺こうした経験からできあがっているのが今のわたしですから、いつ振り返ってもすべての時間が愛おしいです。
🌈こんな人生を与えてくれた夫に心より感謝💗
南太平洋の小さな国サモアの南端、レファガ村に位置するパラダイスビーチ。ここは、1952年にゲーリー・クーパー主演の映画『RETURN TO PARADISE (楽園に帰れ)』のロケ地になったという海岸だ。サモアで暮らした4年間、何度ここに足を運んだことだろう。デッキチェアもビーチパラソルもない、何百年前と大して変わらないだろう自然のままの浜である。
この浜で週末のたび、子どもたちといっしょに波と戯れ、釣りを楽しみ、遊び疲れると読書にふけった。真青な空に、ぽっかり浮かぶ白い雲、エメラルドグリーンの海を背に、波音を聴き、海風に吹かれながら、まどろむ心地良さは一生忘れない。村人が、浜の近くでとったばかりの、ココナツやバナナ、パパイヤをそっと差し出してくれた。もちろん、何の見返りを求めることもなく。海を見ながらかぶりつくその味は、格別だった。今思い出すと全てが夢のようだ。
ほとんどの椰子の木が、真青な空に向かって生えているというのに、1本だけ、“掟破り”のように、太平洋の波に戦いを挑むように茂る椰子の木があった。家族そろって日本をあとにした我が身に重ねて、ビーチファレから長い間その椰子の木を見ていた日のことを、ずっとずっと覚えていたいと思う……。
注:ビーチファレ
浜に設置された休憩用の場所。サモアの伝統的な家“ファレ”と同じく、壁はなく椰子やバナナの葉などで覆った屋根と柱だけの簡素な建物。
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