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懐が深い

村上春樹さんが執筆された小説、ノルウェイの森を読みました。
この物語は、主人公のワタナベから見た景色や、
彼からの言葉や行動から物ごとが進められていくのですが、
主人公のワタナベがとても魅力的だと思うことがいくつもあります。
ワタナベの友人や、周囲の人々からも、
彼の名前を呼ぶときは、「ワタナベくん」と呼びます。
あたりまえかもしれませんが、
好きでもない人の名前を呼ぶときは、
「おい」とか、「ねえ」とか、「ちょっと」とか、
名前では呼ばないことが多いのです。
小説だから誰が話をしているのかが、
わかってもらうために、
名前を使うこともよくあることなのですが、
この、ワタナベの魅力からノルウェイの森を、
きょうはご紹介したいと思います。

主人公のワタナベは相手の話をよく聞いているときが多いです。
ワタナベに話をしている人は、
かなり長い会話をして、ワタナベの話相手になってもらっています。
そして、ワタナベは相手の会話にあまり否定をしないですし、
共感したり、いいところを伝えたり、ほめたりします。
機嫌がわるくなってしまった相手へも、
話を聞かせてほしいと、何回も何回も伝えます。
人は自分の話を聞いてくれる人が好きだということを、
聞いたことがありました。
ワタナベが19歳や20歳のときの設定の話なので、
このような若い年齢で話の聞き役になれる人は、
素敵な人だと思いました。
しっかりと相づちを打ち、
相手の表情や変わったところを指摘してあげたり、
次の約束をしたり、
思いやりといいますか、やさしいといいますか、
ふところが深い人だと思いました。
人のなかには、自分の話をしたい、
話を聞いてほしいと、
おしゃべりの好きな人がいらっしゃいます。
そのような人たちが、
主人公のワタナベの周りの人間なのですが、
彼ら彼女たちは、よくしゃべります。
自分のことをもっと大切にしてほしいとか、
いらいらも不機嫌なところも何もかも、
自分を大切な人として特別にあつかってほしいと、
ワタナベに話しかけてきます。
実際に現実社会でも、
自分を認めてほしいとか、
話を聞いてほしいとか、
話したりないとか、
そのような方がいらっしゃいますが、
主人公ワタナベの話の聞き方から、
コミュニケーションの取り方に、
とても勉強になることが多くありました。
ワタナベには愛した彼女がいまして、
いまは会えないけれど、あなたのことを思っているよとか、
話しかけないでとか、
そんなふうにいわないでとか、
好きな人からいろいろなことをいわれるのですが、
ワタナベはあまり否定しないで、
彼女を大切に守ってあげて、抱きしめます。
19歳や20歳のときでしたら、
好きなようにしゃべり、
好きなようにやることも多いと思いますが、
ワタナベには相手を思いやる気持ちが、
人よりも多く持っているように思いました。
このように振る舞っていても、
ワタナベはいらいらしないですし、
嫌な顔をする様子もないですし、
むしろ相手へ思いやることが好きで、
考えたり、話したり、行動したりしていました。
世の中には、自己中心的だったり、
おれがおれがとか、あたしがあたしがとか、
自分の欲求を満たすため、
自分をよく見せるため、
自分が認められたいと思い続ける人がいるなかで、
ワタナベのような存在は素敵だと思うようになりました。
彼の周りの人が、ワタナベに話すときは、
本当に楽しそうに話し、
いらいらするときも楽しそうにいらいらし、
うれしそうな表情を浮かべていたと、
物語のなかでも語られていたので、
もうこのようなことだけでも、
ワタナベがたくさんの人から好かれている、
愛されているということがわかりました。
テレビや雑誌やネットでは、
外見のかっこよさやかわいらしさが、
わかりやすくて求められやすいのかもしれませんが、
この小説ノルウェイの森では、
主人公のワタナベの内面の美しさ、
性格が素敵なところが多く取りあげられ、
読んでいて気持ちがいいものがありました。
この内面の魅力を活字にすることや、
表現することは、
なかなか難しいものかもしれないのですが、
村上春樹さんは、主人公ワタナベの人柄を、
思うほど難しい言葉を使わないで、
詳しくていねいな言葉を使うことで、
ワタナベはこんな人物だよと、
紹介してくれているようで、
村上さんの語学力といいますか、
言葉のボキャブラリーの多さといいますか、
村上さんの作品を読んでいると、
綺麗な日本語で描かれているので、
とても癒されて、元気になれます。
素敵な表現の文章を読むと、
心の豊かさが増します。
ああこのような言葉を使いたいなと、
思うようになりました。
主人公ワタナベの魅力は尽きないのですが、
ギターの弦を張り替えて楽器を演奏できたり、
料理ができたり、
猫がなついてワタナベのひざにのってしまうほど、
安心して眠ってしまったり、
誰とでも仲良くなってしまったり、
酒が強かったり、
本棚やテーブルも木材から作ってしまったり、
本屋の本をほとんど読んでしまうほどの読書家であったり、
映画を朝からずっと見てしまうくらい、
映画が好きであったり、
もっとあげればきりがないのですが、
こんなにもいろいろなことができる人は、
素敵だと思いました。
ノルウェイの森はもっとたくさんの魅力があり、
語り尽きないのですが、
生きることのつらさや、死についてや、
精神障害についてや、官能的なことについてや、
背景を描くときの美しさや、
繊細な心情を表現するときのていねいなところや、
楽しいときの会話の跳ねた言葉や、
大学生活の楽しいところや、そうではないところなど、
ほかにもたくさんあります。
ビートルズのノルウェイの森を聴いてみましたが、
アレンジやリズムは軽快なのに、
メロディは静かなところがあったり、
落ちついたところがあったり、
華やかに見えて、
そうではなかったりするのではないでしょうか。
生きることはつらい、けれど、
つらいだけじゃないんだよと、
語りかけられているようでした。

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