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私だけの七畳のお城

私は、家具が好きなんだと思う。
と言っても、インスタグラムで見かけるような真っ白で整った豆腐のような家具や、値段の高い家具や、デザイン性の優れた家具が好きなわけではない。

どちらかと言えば雑多で、ぐちゃぐちゃで、埃を被っているような、そんな家具が好きだ。

私は実家暮らしで、7畳の南向きの部屋で寝ている。丁度いい大きさなのと、日当たりも見晴らしもすごく良いのが気に入ってこの部屋を選んだ。

夏はその日当たりによる激しい暑さに耐えなければいけないのだが、差し込む光はやはり美しい。
カーテンを開けておけば、朝は太陽に起こされることも少なくない。晴れた日の昼下がりには、この部屋は真っ青に染まる。写真にしてしまうとその青は色褪せてしまうので、皆さんにお見せできないのは残念だ。夜は丁度月明かりが差し込んで、その光と添い寝をして朝を待つ。寝れない夜の孤独を癒してくれるのは、いつも月だった。

そして何より、立ち並ぶ鉄塔が見られることが一番気に入っている。
鉄塔はいつも変わらずそこにいる。その事実を、心の拠り所にしているのかもしれない。
冬の朝焼けを背景に堂々と連なる鉄塔を、私は未だに忘れられない。



この部屋は、私の城と言って差し支えないだろう。

そのくらいこの部屋には沢山のお金と(お小遣い程度だが)愛情をかけてきたつもりだ。少なくとも、こんなに部屋にこだわっている友達には出会ったことがない。

私の部屋の主役は、なんといってもベッドだろう。
このベッドはクイーンサイズ。しかもウォーターベッド?というやつで中にジェルが入っている。クイーンの名に恥じない大きさを誇っているので、七畳の部屋には些か大きすぎるかもしれない。部屋の半分はベッドが占めている。
このベッドは、私が駄々を捏ねて両親に譲ってもらったものだ。
元々は両親が二人で寝ていたのだが、寝心地があまり気に入っていないと話していたのを聞いた私が、押しに押してようやく手に入れたのだ。

ずっとこのベッドが好きだった。まだそれが自分のものではなかった時でも、私は事あるごとにそのベッドで寝っ転がっていた。夏はさらりとしたシーツを冷房の効いた部屋で堪能した。冬はモフモフのベッドカバーをかける。電気カーペットのようになっていて、まるで直前まで人が寝ていたかのように暖かいのだ。

私のものになった今、憧れだった天蓋を設置し、ふわふわのクッションを飾り、それはもう絵に描いたようなお姫様のベッドになった。ヘッドボードは温かみのあるダークブラウンで、デザインは古いけれど質の良い物だと感じさせる。

そのベッドのサイドに置かれているのは、一緒に暮らしているベタの花子ちゃんだ。
彼女のヒレは黒と鮮やかな赤のグラデーションが美しい。餌をあげると必死にパクパクしている。
壁の部分には沢山のポストカードが額縁に飾られてある。旅先でポストカードを買ってしまう癖があるから、もはや小さな美術館のようになっている。



部屋の一角に大きな本棚があって、そこには小説やら漫画やらがびっちり詰まっているのだが、そこの丁度前あたりに読書用の椅子を置いた。かなり大きめのロッキングチェアで、正直もう部屋には空間があまりない。
それなのに最近、勉強机を大きめのL字型デスクに変えた。
何故こうも大きい家具を買ってしまうのだろうか。そしてジャストフィットしてしまうのだろうか。さすがにもう新しい家具が入りそうな空間は無いから、今度はウォールシェルフを作って壁に設置しようと思っている。あとは、ライティングレールを取り付けてスポットライトでポストカード達を照らせば、もっと美術館みが増すのではないかと計画中だ。

最初に述べた通り、私は雑多な雰囲気が好きだ。
けして整理整頓されているとは言い難いけれど、散らかっているもの一つ一つからその人の好きなものや人となりが感じられるような部屋が好きだ。
だから私も、自分の好きなものばかりを散りばめた部屋を作りたい。
そう思って、机の上には私の好きなものばかりを飾り、収まりきらなかったポストカードや気に入った雑誌の切り抜き、自分の描いた絵をぺたぺたと壁に貼る。なんの意味もない雑貨や、本や造花や、他人から貰った手紙を置く。


自分の好きな景色に囲まれて、自分の好きなものが所狭しと並べられた部屋を作りたい。

それが私のお城になるのだから。

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