変わること変わらないこと2 本の話をしよう06 宮本常一
何の脈絡もなく手にとった、宮本常一『伝書鳩のように』(平凡社スタンダードブックス)から書き抜きます。
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明治29年6月15日に三陸地方に大きな津波がおそったことがある。
そのとき、沖の方にノーンノーンという声が聞こえたという。
昔からの言い伝えの残っているところでは、それは津波の音に違いない
とて高いところに避難した。そうした村ではみな生命を助かった。
しかし、この音をきいてもそれが津波の音と気づかないところでは
大きな被害を出した。(略)自然の音はそれを判断する能力を
人間が持っていなければならない。
人間にとってはは静かに考える場と、静かに聞く場が必要である。
人間をたえず自然の中へ引き戻すことで、人間はいつまでも新しい生命を
もちつづけるのではなかろうか。
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明治40年生まれの宮本常一は、民俗学の調査のために全国を旅する。
学術調査の枠をこえて、土地のひととともに過ごし、
宮本は対等な目線で、その土地の人たちのオーラルヒストリーを残した。
代表作は『忘れられた日本人』。
私は大学が社会学専攻だったから課題図書として読んだ記憶があるけれど、
もしかしたら高校だったかもしれない。
この『伝書鳩のように』のなかに
「母の思い出」「私の祖父」「父の躾」という
章がある。彼が身内のことを書いたを読んだのは、はじめてだったような気がする。
明治生まれの宮本の祖父、だから、いまから200年近く前を生きた人たちの話だ。
「父の躾」のなかで、
百姓であった父から「土を恐れよ」と教わったことが書かれている。
土はあたたかいものだが、それと同時に恐るべき力があって
田に働く人の手足は荒れやすく、その傷から菌が入って命を失った人も多いとあり
彼らはなるべく土を触らなかった。土と共に生きつつ、土を恐れた。
そういう教訓があることなんて、しらなかった。
巻末の宮本常一ブックガイドにある『民俗学の旅』で宮本が
「進歩のかげに退歩しつつあることを見定めてゆくことこそ
われわれに課されている、もっとも重要な課題ではないか」
と問題提起をしているとある。
この一言がとても印象に残った。
この先、
未来を考える人
今を考える人
過去を考える人
それぞれがうまく対話できたら、きっといいのだろうね。
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