日本では「パーフェクトな女性でないと発言できない?」という仮説
こんにちは。
3月8日の国際女性デーに合わせて、Voicyさんが音声特集「#完璧じゃないけどはじめたい」を実施されています。
私もお声がけいただきまして、同時通訳・英語コーチの田中慶子さんと特別対談させていただきました。
アーカイブはこちらからお聴きいただけます。
前半30分:https://voicy.jp/channel/2779/484825
後半30分:https://voicy.jp/channel/1622/484845
私たちの他にも2つの特別対談が実施されましたので、ぜひ聴いていただければ幸いです。
Voicyユーザー調査「5人にひとりがジェンダー平等への行動を躊躇した経験がある」
今回の特集のために、Voicy社がユーザー4,996名を対象にジェンダー平等に関する意識調査を実施したそうです。
その中で「ジェンダー平等のために行動したいと考えたものの、躊躇したことがありますか?」という質問に対し、20.1%の人が「躊躇したことがある」と回答され、5人にひとりがジェンダー平等への行動を躊躇した経験があることが分かったそうです。
また、「なぜ躊躇しましたか?」という質問に対し、
「周りの視線が気になった」
「自分(たち)が正しい行動ができているかわからないままだと、行動できないと思った」という回答が多く集まったほか、
「それが正解かわからないから」
「限られた時間で伝えきれない懸念があった」といった声もあったとのこと。
なるほど、日本人の特性がよく現れているようにも感じられます。
日本では、パーフェクトな女性でないと発言できない?
先日、日本語翻訳版が累計16万部を突破したというベストセラー、内向的な人のために書かれた自己啓発書『「静かな人」の戦略書』ジル・チャンさんとお茶する機会がありました。
後日、ジルさんから連絡をいただき、私たちがあの時に何時間も夢中になって話した内容をもとに、国際女性デーに合わせて『聯合報(udn)』という台湾の大手新聞に「大門未知子を待つ日本(原題:【青春名人堂】張瀞仁Jill/等待大門未知子的日本)」というタイトルの文章を寄稿されました。
(そして、ジルさんはこのコラムの原稿料を日本のひとり親家庭を支援する非営利団体に寄付されていました)
すごく面白い考察で、日本のドラマや映画が大好きなジルさんが、
ドラマ「ドクターX」で米倉涼子さん演じる「大門未知子」や、「ハケンの品格」で篠原涼子さん演じる主人公、「緊急取調室」で天海祐希さん演じる主人公たちは皆、“女性であってもパーフェクトであるからこそ勇敢に行動できるのではないか?”という仮説、そして今回私と話した中で、“日本では彼女たちのような存在が実在しにくいということを初めて知った”といった内容が書かれていました。
この視点は私にはなかったので鋭いなと思うと同時に、まさに、「完璧でないと発言しにくい」という日本独特の風潮を表しているなと感じました。
もちろん、それが良い/悪いということではなく、そういう特性があるよね、という話です。
確かに心理的安全性がない場所で発言や行動をするのは確かになかなか勇気がいることですよね。
私の場合、違和感がある言動に出くわした時には、その場で直接相手に伝えることが難しくても、時間や場所といったタイミングをずらし、“個人的な考え”として発信するようにしています。
そうすることで、その人には届かなくても、「世の中にはこういう風に感じる人もいるのだ」ということが可視化されたり、どこかで引用されたりしていき、社会がちょっと良いものになったりするのかなと信じているからです。直接相手と対立しなくても、気付きが与えられればと願っています。
noteでのコメントや引用、Twitterなど匿名性の高い場所でのシェア、Voicyでのコメントなども、立派な行動だと思います。
外に出て初めて、いかに日本の家事・育児分担が異様なのかが分かった
先日、こんなデータを見かけました。
OECD(経済協力開発機構)が2020年にまとめた生活時間の国際比較データ(15~64歳の男女を対象)をもとに、内閣府男女共同参画局が作成されたグラフです。
ここから分かること:
・男女別に見た生活時間の有償労働(市場で労働力を提供して対価を得るもの=仕事)と無償労働(家庭内での家事や社会的活動といった家計の構成員や他人に対して行う対価を要求しない労働=家事、介護・看護、育児、買物、ボランティア活動など)を比較すると、日本は女性の無償労働時間が男性の5.5倍も長い、これは国際比較の中で最悪。
・日本では女性の睡眠時間が異様に短い、しかもその大部分が働く女性である。
内閣府男女共同参画局のこのコラムは、このように総括されています。
日本の少子化を食い止めるためには「長時間労働の解消を」と言われているけれど、長時間労働が解消されたとして、日本の男性たちは家事や育児を分担できるのか?とも思ったりします。
「長時間労働の解消」と「男性たちの家事・育児参加」をセットで推進しなければ、このジェンダー不平等は解消されない気もします。
自分の中にもあった刷り込み
台湾に来てから、自分の中にもあったジェンダーバイアスに気付かされてばかりです。
たとえば「TPOをわきまえなければ」みたいな意識が過剰なほど働いていたのでしょう、過去の私は、「会社に着ていけるかどうか」で洋服や靴、バッグやアクセサリーなどを選んで購入していました。
雑誌を参考にして、他の人の価値観に合わせて行動していたけれど、“着たいものを着たいように着る”台湾で生活しているうちに、次第とその呪縛は解けていきました。これをおばちゃん化というのであれば、おばちゃん化もそんなに悪いものではないのかもしれません。
大人になったからなのか、台湾暮らしが長くなったからなのかは分かりませんが、友達になるかどうかを相手の外見で判断するようなことも全くなくなりました。
台湾では自己紹介をするにも、”どんな会社で働いているか”といったものよりも、“自分が何をする人なのか”が大事にされているように感じます。
オードリー・タンさんから教わった概念に「価値観から相手を知る」というものがありました。
詳しくは拙著『オードリー・タンの思考』に書きましたが、名前とか性別、肩書きというのはオードリーさんにとって「Twitterのプロフィール欄のように随時変わっていくもの」であり、新しく誰かと知り合う際には、相手が何に対して関心を持ち、貢献しているのかを大切にするそうです。
本名を改名し、トランスジェンダーでもあるオードリーさんの発言ですから、説得力がありますよね。
ジェンダーや、LGBTQといった嗜好もほとんど関係がないように感じます。
とはいっても、これは私が触れている台湾の価値観であり、それが台湾のすべてというわけでもありません。
でも、海外で暮らしていると、「パーフェクトではなくても自分の考えを発言する」ことが当たり前なので、自然とさまざまな考え方に出合うことになります。
自分と違う価値観や考え方に出合うと、自分の価値観が揺さぶられます。
と同時に、「では、私が大切にしたい価値観はどんなものなのだろう?」と自分に絶えず問い続けることになります。少なくとも私の場合は、ということですが。
この私のnoteが、読んでくださった方の価値観を揺さぶり、何かしらの新しい発見があることを願っています。
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