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【イベントルポ】「聴く」を極めたい、そしてわたしの「稀」を知りたい ”稀人ハンター川内イオさんとまなぶ_誰も教えてくれない「聴く」スキルでわたしの『稀』発掘体験”

2024年9月14日(土曜日)、稀人ハンターこと、川内イオさんをゲストに”「聴く」スキルでわたしの『稀』発掘体験”というイベントが開催されました。

このイベントは、ライターの川内イオさんから「聴く」ことについて学び、参加者同士で相互インタビューを行い自分自身の「稀」を見つけることをテーマにしています。

イベントの様子と、感想などをレポートします!


参加した理由:聴くことを極めたい、そしてわたしを知りたい。

わたしが参加した理由は2つあります。

1つは、聴くスキルをもっと磨きたいから。

わたしは普段取材ライターとしてインタビューを行っています。

もう5年目にもなりますが、まだまだ聴く力が怪しい。

ちゃんと聞いているつもりでも、あとから家に帰って音源を聞き直してみると「もっとここ掘り下げられたんじゃないか」と反省することが多々あるのです。

たとえば、話上手な方を相手にすると、するすると会話が続き、順調に進んでいると錯覚してしまう。でも本当に聞きたかったことが聞けていない。

逆に口下手な人の場合は、会話が続かず、質問攻めになってしまい、結局「そうですね」「はい」など、クローズドな会話で終わってしまう。

相手が「話したい」と思うような聴く姿勢や質問はどうやって作れるのだろうか。

川内イオさんは人物インタビューのプロで、1万字のロングインタビューを書くライター。
しかも、取材は一日に及ぶこともあるという。つまり、9時間とか。

そんな長時間、集中して人の話を聴き続けられるのだろうか?

さらに文字起こしをすれば何十万字ともなる話を、読みやすいようにまとめあげなければならない。

これも体力と、精神力が半端ないはず。

一体どうなってんの?それをできるイオさんの秘密を知りたい。

そしてもう1つはわたしの「稀」を発掘したいから。

最近、どうやって理想の収入と働き方を獲得していこうか模索中なんです。

そのために必要なのは自分の個性や特技、そして強みを理解すること。つまり自分の「稀」ポイントを見つけないといけない。

けれど、自分一人では到底見つけられません。だから今回のイベントで予定している相互インタビューを通して自分のつよみを発掘したい。というか、発掘してもらいたい、というのがもう1つの動機。

ということでイオさんへの疑問や将来のための目論見を抱いて今回は参加しました。

ソフトな人類学、本屋アルゼンチン

イベントの開催場所は、福岡県の糸島

海が綺麗で食べ物が美味しい、若者に人気の観光スポットです。10月から始まるNHKの朝ドラの舞台にもなりますよね。関東でいうと湘南のイメージでしょうか?

駅がぽつんとあるような小さなまちにたどり着き少し不安でしたが、ゾロゾロと歩いている人たちを発見し会場にたどり着きました。

会場には小さな本屋さんがありました。「本屋アルゼンチン」です。
ここにはアカデミックでありながらビジネスパーソンにも読みやすそうな本が並んでいます。ここは珍しく人類学推しの本屋さんなんです。

わたしは大学で人類学を専攻していましたが、卒業後は人類学を好きな人にであったことがありませんでした。

本屋アルゼンチンの本のラインナップを見てとても驚きました。本屋アルゼンチンの店主さん、そして大阪から参加していた男性も人類学が好きとのことで。話が通じる人に出会ったような、異国で同郷にであったような、そんな気分になりました。

自分と本の紹介

発起人サオリスさん オススメ本は「ジェネレーター」という本でした。

開催場所が本屋ということもあり、参加者には自己紹介用に本を一冊持参というお約束がありました。

まずは自己紹介と本の紹介から。

参加された何名かは以前のイベントにも参加しているようで顔見知りのようでした。

さまざまなバックグラウンドの方が参加されていました。
学校の先生やフリースクールの運営をされている方、ギタリスト、カウンセラー、編集者、作家、ライターなどなど。

温かな雰囲気で笑顔でお話しされている様子がとても印象的でした。自己紹介もみな、とても上手。参加した理由などみんなハキハキと話され、キラキラと輝いていました。

友人の出した本を紹介された方 (サオリスさん提供)

紹介する本も、そこらへんでベストセラーになっているような本ではなく、あまり聴いたことのない本ばかり。学術書とか、理論書とかが多く、博学ぶりが伝わってきました。

そんな中、わたしが悩んで悩んで持っていったのが、西加奈子の『ふくわらい』。
「人に興味があるのに、うまく人間関係が築けない主人公がいとおしい。主人公と友達になりたいと思った本」とちょっとオタクっぽい感想を述べました。

聴くスキル、伝授

手に持っているのはマイクではなく、ただの流木。

紹介が一通り終わると、いよいよゲストの川内イオさんの講義がスタート。

イオさんは過去6年間、550人以上の方を取材されてきたそうです。その中で感じたことを一言で言うならば「どんな人でも必ずおもしろい。誰一人同じ人がいない。一人ひとり育んだ個性が必ずある」ということでした。

イオさんの得意とする取材記事は、テーマが決められて書くような一般的な取材記事ではなく、その人自身の人生を掘り下げ、その人の魅力を伝えるような人物インタビューです。

その作業はインタビューというよりも傾聴に近いスタンス。インタビューを受ける方は話を聞いてもらってとても喜ばれるそうです。

まだ流木もって話してます。

何時間も、時には9時間近く話を聞いてあげることで、相手はお風呂上がりみたいなすっきりした顔をされていることもあるそうです。

ただし「インタビューはカウンセラーがするような傾聴とは異なります」とイオさん。
カウンセリングは治療目的としていますがインタビューは発掘を目的にしています。

インタビューを通し、その人の決断・挑戦・成功・失敗・転機を丁寧に追うことで、唯一無二の人生の中に生まれている稀を発掘するのが目的です。

そのため、イオさんのインタビューでは幼少期の頃から遡ってお話をしてもらうそうです。

サオリスさん 提供

また話を聞く上で大切なことをいくつか教えていただきました。

  • 話しやすい雰囲気作りをすること

  • 相手のことを見る

  • 時計もスマホも見ない

  • リアクションはちょっとオーバーに

  • 知ったかぶりをしない

また、インタビューをして時々相手が話を端折ろうとすることがあります。

「大抵はこんなこと話ししてもつまらないだろうとか、話しても専門的すぎるから興味がないだろうと思って詳しく話さないことがあります。でもそこはあえて”詳しく教えてください”と聴きましょう」

「小さな疑問を放置しない」「話を止めることを恐れずわからないことは聞く姿勢が大切」とのことでした。

流木が板についたイオさん。

聴く姿勢について書かれている本で講座の中で紹介された一冊が、臨床心理士の東畑開人さんの著作でした。

わたしも東畑さんの『聞く技術聞いてもらう技術』を読んでとても感銘を受けた1人です。イオさんもこの著者からインタビューのヒントを得ているということを知り、とても嬉しく思いました。

デモンストレーション

講座の最後にイオさんがインタビューのデモンストレーションをしてくれました。

「誰かお相手になってくださる人~」という問いかけに元気よく前に出てきたのは参加者のある女性の方でした。

その女性にイオさんが1つ質問をしました。「もし、誰とでもディナーで食事ができるとしたら誰としたいですか?」

それに対し彼女の回答はとても意外で、みんなが「へーー」と。

そこから「なぜその人と食事をしたいのですか?」
と掘り下げて行きました。

質問をするイオさん

とても自然な会話で、彼女は自分のことをスルスルと話されていました。

多分10分ぐらいだったと思うのですが、その10分間でも彼女の性格や好みなどが見えてくる質問と回答でした。

インタビューの様子 サオリスさん提供

「て、こんな感じです(テヘペロ)」
とイオさんがいうと、会場は「おーーーー!」と感嘆の声。

相互インタビュー

準備しておいた自己紹介文

そしていよいよ相互インタビューの時間です。
あみだくじで振り分けられた相手と45分間ずつインタビューを行います。

準備していた300字の自己紹介文を最初にお互い渡しました。その後イオさんが準備してくれていた10個の質問票の中から、気になる質問をピックアップしてお相手の方に投げました。

わたしのお相手に質問したのは「30歳の心もしくは体のままで90歳まで生きられるならどちらを選びますか」という質問。

彼女の答えは「心というか脳みそを残して行く末を見たい」と。

「それはなぜですか」という質問から、彼女の家族への思いなど話してくれ、感動しっぱなしでした。

彼女の聡明さ、強さ、そして家族への深い愛。あっという間でしたが、彼女の人生や価値観などじっくり聞くことができ、とても濃い45分間でした。

今度は彼女からわたしに45分間かけて質問をする時間です。

彼女がわたしに質問したのは「今までの人生で最も感謝していることは?」というものでした。

わたしはこの質問に対し「両親のもとに生まれてきたこと」と返しました。

「親のわがままに付き合わされ、翻弄され、苦労した経験もあったけれど、その経験がなければ今の自分がいない」というような話をしました。

わたしの顔を見て笑顔で聞いてくれている安心感からか、普段話さないような家族への思いや自分の経験など、ベラベラと喋りまくり。

インタビュー中。まちコンではありません。

2セット目は場所と人を変えて行いました。

歩いて3分の浜辺に腰を下ろしてもう二人目の方と相互インタビューをしました。

途中大雨が降り、びしょびしょに。木陰で雨宿りをしながらのインタビュー。秘密の話をしているようでとてもワクワクしました。

インタビューが終わった後はインタビュー相手の稀ポイントをカードに記載する時間です。

45分間の間に聞いた話を思い出します。
相手の方の個性を言葉にするのはとても難しく感じました。
10分ぐらいかけて皆静かにカードに向き合った後、それを相手の方に渡しました。

サオリスさん提供

カードはラブレターでした。とても嬉しいことが書かれていて胸が温かくなりました。

得られたこと

感想を話す参加者

最後に一日の感想を一人ずつ話し、イベントは修了しました。
一人ひとりの感想もまた素敵で、みな疲れていましたが心地よい疲れ?のようで笑顔が溢れていました。

サオリスさん提供

ある方が「インタビュー中の没入感が凄い。その時や場所に自分が戻っているような感覚」と話していたのがとても印象的でした。

わたし自身もたくさんの気づきがありました。

聴き方が少し変わった

インタビュー中は自分の話をしない」というイオさんのアドバイスを頭にいれインタビューを行いました。

共通点があったり、共感ポイントがあったり、自分も詳しい話題が出てくると、話したくなる衝動が。そこをぐっとこらえました。

自己開示した方が相手が話しやすいと思っていたけれど、よくよく考えれば相手の経験と自分の経験を並べる必要はないのだなと感じました。

また、今回、初めてインタビューを受ける側になったことで気づいたことがあります。

それは、話す側もとても不安に思っていること。「こんな話しても面白くないよな……」とか「ちゃんと質問に応えられているだろうか」と考えながら話している自分がいました。

それをイオさんに伝えると
「だから、聞く側としては全力で話を楽しんで聞いている姿勢が大切なんですよ」
とおっしゃっていました。

もっと嬉しそうに、楽しそうに話を聞くよう心がけようと思いました。

自分らしさとは?

驚いたことにお二人からいただいた「稀」カードには同じ言葉が書かれていました。

それは、「自己分析」という言葉でした。つまり、自分のことをよく理解しているということ。

たしかにうつ病になって自分自身にとことん向き合った結果、自分のことが見えてきた気がします。

自分が何をしたいのか、自分は何が嫌なのか、自分はどんな風に生きたいのか。凄く考えて自分の感情と向き合ってここまで来ました。

自分のことを理解するということは簡単なようで難しいことだと思います。これは自分にとってとても強みだと感じました。

しかしそれをどう仕事で活かしていくか。それはまだわからない状態です。次の課題としてこれからも向き合っていこうと思います。

イベントに参加して

本にサインしてもらいつつ、記念撮影

参加されている方全員とは話せませんでしたが、みな素敵な方ばかりでした。

とくにイオさん。

画面越しではちょっと怖いイメージでしたが、実際にお会いすると目が優しい。

参加者で主催者でもある本屋アルゼンチンの店主が、以前お店に訪れたイオさんを見て「半グレが来た……」と思うのも無理はありません。凄くラフな格好(アロハ)+髭ですからね。

初めてあったときの話をする店主さん

でも、お会いして話せばわかる。

穏やかで、物静かで、人が好き。

誰の人生もおもしろい。電車で疲れているサラリーマンだって稀な人生がある
と話していたのですが、ここまで思えるって凄いことだと思います。

変態の領域……ではなく、
人間に対する尊敬の念が強いからだと思います。

イオさん自身が生きていることに心の底から喜んでいるから。関わる人すべてに敬意を持ち、感謝の気持ちを忘れないから。

だから何時間でも人の話を聞ける。人の話を聞くうえで一番大切な部分だと思いました。

ちょっと違うかもしれないけれど、不軽菩薩?

どんな人間も軽んじることなく、敬う姿勢。そんな菩薩の姿をイオさんから感じたのでした。

みな楽しそうですね。 サオリスさん提供

イベントを催してくれたジェネレーター公民館、そしてサオリスさん、そしてイオさん、ありがとうございました。

発起人のサオリスさんのイベントレポートはこちらから!


イベント記事書きます!
私は取材ライターとして体験記事、イベントレポート記事、インタビュー記事などを執筆しています。→ポートフォリオはコチラ

執筆代行いたしますので、ぜひお声かけ下さい。

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