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<創作・詩>リボンの切れ端
いつのまにか、あれは過去になっていた。
自分で過去にした。
少しずつ忘れゆく自分がかなしい。
なんでもないことも覚えていたいのにな、
でもあんなに身を縮めて緊張していた心をまたぶり返すなんてと思うと。
いまの落ち着きと平穏はいいのやら悪いのやら。
私、あのときだけ異常だったみたい。
巧い言葉なんてなにも言えなかった。
せめて、聞き役でいようと思うのに、いざ話しかけられたら貴方の方が一枚上手。私は勝手に自滅する。
それでも、一定の距離でも、貴方は見捨てずに、たまにの優しさをくれた。
なんだよ、こっちの気も知らねえで。いや、むしろ知ってるくせして。
そういう切っても切れない思い出に、忘れたくない、抗おうと、当分悩まされる。
最初で最後の手紙も震えてた。心の揺れを悟られぬようにと平常心を保とうとするほど身体には隠せないのであった。
後悔なんていくらでもあるけれど、もう求めない。
彼を知りたいという気持ちを別れによって手放した。
今あるまんまの私の記憶だけで愛しくもらったものは根付いている。
残るリボンはもうたちきられて切れ端ができてしまった。
もう、長く長く延ばせないし結べないんだね。
思い出はリボンに結ばれた。
思い出は今日も愛しい切れ端を残したまま。
いつか擦れて切れ端すらも…
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