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たまの日記です。
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2019年1月の記事一覧

福祉の贈与

†渡辺一史『なぜ人と人は支え合うのか』副題は「「障害」から考える」。ちくまプリマ―新書のレーベルから出版された、その道の初学者向けの入門書ということになるだろうが、それにとどまらないコアな問題提起をぎゅっと扱っている。

よいところは、「健常者」の視点から、「障害」とはどのようなものであるかということ、それに正面から取り組み、記述しているところ。だから、「健常者」から「障害者」はどのようなイメージ

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二酸化炭素と人間の脆弱さ

二酸化炭素と人間の脆弱さ

†ジェームズ・ブライドル『ニュー・ダーク・エイジ』久保田晃弘監訳、栗原百代訳私の思考の基盤はどこにあるのか。自由に考える心の存在か。それともそれをニューラルネットワークの挙動に還元される脳の存在か。いずれにせよこうした考えは、明晰さの観念に目覚め頭のなかで自由に物事を想像することのできる自律した人間の存在を前提とした、人間中心主義の思考である。

こうした人間のナイーブさは近年のエコクリティシズム

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「古典は本当に必要なのか」雑感

「古典は本当に必要なのか」雑感

昨日の件のシンポ、ネット中継で観戦していた。べつに教育屋でもないのでここに書くのは詳細なルポではなくメモ程度の備忘録として。

狭い意味での高校や大学での学校教育に与するものではないので、この場で主張された内容の、どちらかのサイドにつくつもりはない。古典は古典で残るだろうし、学校組織だけが古典を占有できるものでもない。また古典が学校教育から消えたからといってただちに国際競争力がアップされるものでも

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カードキャプターさくら展感想記

カードキャプターさくら展感想記

思い出すように書くが、先日六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催されていた「カードキャプターさくら展」に行ってきた。

年来の作品ファンだったのでかねてより一目見ようと思っていたが、どうにか会期最終日に駆け込んで見物することができた。現在、東京展は終了しているが、大阪での展示が予定されているという。

展示内容自体は公式サイトや、また展示のほとんどが撮影許可されていたこともあり各種SNSで

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ガザの名

†岡真理『ガザに地下鉄が走る日』生きることが原則的に無条件で保証される国民国家の隙間で、その生の保証もなく、法外な暴力が日々行使される場所がある。現代の収容所とも呼ばれる場所が、パレスチナ、ガザ。

正直、ガザの名は耳に聞いたことはあっても、一度もその像がはっきりと頭に結ばれたことはなかった。国境のない島国で暮らすだけで、どれほどの死角に囚われていることか。

無関心は、次の暴力、ジェノサイドを用

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