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立甲(りっこう)

こんにちは

タイトル画面のような肩甲骨の状態を「立甲(りっこう)」と言います。

通常であれば肩甲骨は背部の肋骨に対して寝ているのですが、立甲は肩甲骨の内側が起き上がり、立っている状態です。

このような状態になれると様々なメリットが得られます。

今回は肩甲骨とパフォーマンスの関係をまとめたいと思います。


四足歩行動物との比較

まず、肩甲骨とパフォーマンスの関係を理解する上で知っておいていただきたいことがあります。

それは人間が四足歩行動物から進化した存在ということです。

例えば、チーターの走っている姿を見たことがあるでしょうか?

よく見るとチーターの肩甲骨が垂直に立っているのがわかると思います。

このように四足歩行動物は肩甲骨が立つことによって前脚が力強く、かつ高速に、そしてしなやかに動くことができるのです。


人間と四足歩行動物の違いをもう少し説明します。

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人間の肋骨は、四つ這いの状態で上下方向で前後傾が狭く、左右方向に幅広い楕円形になっています。

反対に四足歩行動物は、左右方向が狭く、上下に長い楕円形となっています。

これに合わせて、肩甲骨の位置が人間は背部に、四足歩行動物は側方に位置しています。

このような構造の違いから、人間の肩甲骨は四足歩行動物ほど立ちませんが、50度くらい立つ人もいます。


また、可動域という視点で見ると、四足歩行動物は前脚を横方向(外転/内転)や後方に動かすのは極端に苦手です。

しかし、人間は肋骨の後ろに肩甲骨があることで手を横に広げたり、後ろに回したりできます。
それによって服を着るなど、他の動物にはできない高度な作業を可能にしています。


これらのことから、立甲ができることによって人間の持つ作業能力に加え、四足歩行動物のような高速でハイパワーな能力を併せ持つことができるのです。



肩甲骨の動きと主な筋肉

ここまで読み進めて頂くと、立甲とは単に肩甲骨が立てば良いわけではなく、自由度が高い状態、つまり肩甲骨周りの筋肉が緩んでいる状態が望ましいことが分かると思います。

基本に立ち返り、肩甲骨の動きや付着する筋肉を整理したいと思います。

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肩甲骨の動きには、
挙上・下制
内転・外転
上方回旋・下方回旋
前傾・後傾
といった8方向があります。


筋肉は、

肩甲挙筋
僧帽筋
大菱形筋
小菱形筋
前鋸筋
広背筋
大円筋
小円筋
棘下筋
棘上筋
肩甲下筋
小胸筋
烏口腕筋
上腕二頭筋
三角筋
上腕三頭筋
肩甲舌骨筋

の17個あります。
(起始、停止は今回は省きます。)


立甲は、肩甲骨周りの筋肉が緩んでいる状態です。

しかし、重力に逆らっている以上、完全に全ての筋肉が緩むことは不可能です。

ここでいう緩むとは、必要な場所には力が入り、それ以外の場所が脱力している状態のことを指します。

立甲では主に前鋸筋に力が入ります。

それ以外の筋肉、特に肩甲下筋や菱形筋が脱力することが必要です。

また運動方向は外転・下制になります。


通常の立位姿勢では、肩甲骨は肋骨に対して30度ほど立っていますが、四つ這いになると30度より水平になります。

これは、体幹の重量を腕で支えなければいけないので肩甲骨周りの筋肉を必要以上に固めてしまうため起こります。

しかし、肩甲骨の自由度を高め、適切に緩むことができると立甲します。

運動科学総合研究所所長の高岡英夫氏は肩甲骨の角度が肋骨に対して40度以上立つことを「立甲ができている」と言われています。

40度は努力すれば簡単ではないが、努力をすれば届く絶妙なラインだそうです。

(人によっては50度も立つ人もいるそうです。)



立甲のメリット①  ハイパワー

立甲ができるメリットは、力強くてしなやかな腕使いができるようになります。

まずは「ゼロポジション」について整理します。

リハビリの世界でもよく使われている「ゼロポジション」は、肩甲棘と上腕骨が一直線になったポジションのことを言います。

関節面の角度が0度になっていることから「ゼロポジション」と呼ばれています。

最近では野球のピッチングなど、スポーツの分野でも使われる用語になりました。

関節面の適合性が最も良いということは、余計な力みが抜けて体幹から腕の繋がりが強化されています。

しかし、ゼロポジションは外転130度くらい、もしくは水平内転30度くらいの位置でしか起こりません。

それが立甲することで、より広範囲にわたって一直線に近い位置まで肩甲骨を持ってこれます。これを高岡英夫氏は「甲腕一致」と呼んでいます。

これによって、ボクシングのパンチや卓球、バスケットボール、サッカーなどにも活かされ、力強いパフォーマンスを発揮することができるのです。

甲腕一致という能力を得るための最も基本的なトレーニングが立甲になります。


メリット②  怪我しにくくなる

上述したように、立甲を習得することでゼロポジションに近い状態でパフォーマンスを発揮できるので関節にかかる負荷が減ります。

また、肩甲骨だけでなく、肋骨と分離することにより脊柱の可動域が向上するので局所にストレスが集中することもなくなります。

通常、慢性障害というのは動きにくくなった関節を動きやすい関節が代償することで起こります。

野球のピッチャーが肩や肘の故障が多いのは、肩甲骨や脊柱の可動域が不足しているために代償的に負担がかかっている可能性があります。
(全てこれが原因というわけではありません)

立甲を習得することで怪我をしにくい身体を作ることができます。


メリット③  下半身への影響

立甲ができることで下半身にも良い影響が出ます。

様々な視点から見ることができます。

一つは前鋸筋が効くことで、スパイラルラインの筋連鎖が起こるため、外腹斜筋、対側の内服斜筋、大腿筋膜張筋などの活動性が高まります。

他にも肩甲骨と肋骨が分離されることで胸郭の可動域が広がり、横隔膜の機能が高まる。横隔膜は大腰筋と連結しているので大腰筋の機能も高まります。

今回は大腰筋については解説しませんが、高岡英夫氏は大腰筋を達人の筋肉と言われるくらいハイパフォーマンスには欠かせません。

まだ他にも影響を与える理由はありますので興味のある方はご自身でも調べてみてください。


終わりに

立甲について理解を深めることはできたでしょうか?

習得することで得られるメリットはたくさんあるのでぜひトレーニングしてみてください。

方法については専門家による指導をお勧めします。

ちなみに私は習得するまでに5ヶ月かかりました。

元々身体が固かったので、皆さんならもっと早く習得できるかもしれませんよ。

ちなみにセラピストなど施術をする方は、立甲した状態で圧を加えると、相手は力源がわからないので深いタッチが可能になります。

施術効果も確実に上がりますよ。

お読みいただきありがとうございました。


謙虚・感謝・敬意
知行合一・凡事徹底
岩瀬 勝覚


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