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運動嫌いな人へ

運動は苦痛なのか?

私は今、訪問看護リハビリステーションに勤めています。

なかなか自宅からでられない高齢者の方と接することが多いのですが、ほとんどの人に共通していることがあります。

それは、日中ほとんど動いていない。
もう少し言うと、その方々はけっして動けないわけではありません
トイレにも自分で行けるし、機会があれば外も歩けます。

それでも日中、テレビを見て座りっぱなし、あるいはベッドに横になっている状態。

家族からも、ケアマネジャーからも、ドクターからも決まって「もっと運動しましょう」と言われてしまいます。

長時間の座位、もしくは臥位によって、お尻周りは硬くなるし、背骨も硬くなっています。
(持続的に圧迫されているところは硬くなってしまうので)

それによって、歩行や立ち上がりなどの動作の安定性が損なわれているのは言うまでもありません。

動かないから余計に動けなくなる悪循環。

本人たちも頭では分かっています。

でも運動をしない、もしくは続けられません。

これはなぜでしょうか?

いろいろな方にお話を伺っていると、「運動=きつい、つらい」というイメージがあります。

みなさんは運動というと何をイメージしますか?

・スクワット、腹筋、背筋のような筋トレ
・ウォーキングなどの有酸素運動

人によってはもっとキツい走り込みなど想像した人もいるのではないでしょうか?

それほど「運動」という言葉は抽象度が高く、そして多くの人がキツくなければ、自分を追い込まなければ運動じゃないと思っています。

だから自分は運動したくない、そんなつらい思いしてまで頑張れないと思ってしまっているのではないでしょうか?

できない理由を探して、「もう歳だからしょうがない」「難病だからよくならない」と自分を納得させようとしているようにも感じます。


そして、多くの人にそのように思わせてしまっている大きな原因は「運動を促す人」にもあるのです。

実際、多くの人が始めのうちは、なんとか良くなりたい、動ける状態になりたいと思って取り組んでいたはずです。

でも、言われた運動を実践してもなかなか身体は良くなりません

それなのに、指導する人は「運動が足りないからだ」「もっと頑張れ」と、あたかも本人の努力が足りないせいだと言うような言い方をします。

頑張っている人に頑張れは、言われた本人にはつらいだけです。
頑張れと言うと相手に「あなたは今頑張っていない」という意味がふくまれてしまうこともあります。
頑張れと言う言葉の使い方には気をつけましょう。


このような背景があれば、そりゃ運動が苦痛になりますよね、、、

そんな背景を持った方に、私は関わることが多いのです。


運動は本来、楽しくて心地よいもの

私が、上述したような背景を持った方にまずお伝えしていることは、「運動ってつらいことしろってことじゃなくて、心地よく動くだけで良いですよ。もともと運動は誰もが楽しい思っていたんですよ」ということ。

赤ちゃんの頃、寝返りをする、お座りをする、ハイハイをする、立つ、歩くことができるようになった時のことを思い出してください。
(もしくは子どもや孫など、赤ちゃんが必死に動いている姿をイメージしてください)

こうかな?ああかな?
と試行錯誤しながら、失敗を繰り返してようやくできるようになります。

それを見ていた周りの人が「すごいね」「できたね」と褒めてくれるのだから嬉しくて仕方がなかったはずです。

この時はきっと誰もが運動を楽しんでいたと思います。
後ろから「待て待て〜」なんて追いかけたら、ケラケラ笑いながら逃げていきますよね?

これが人生の中で、「こうやって動け」など動きを強制されたり、周りの子と比較して自分の運動能力が劣っていたりとさまざまな背景があって「運動が嫌い」となっていくんですよね、、、


ここで考えて欲しいことがあります。

多くのセラピストの方々が指導する運動、介護施設などで行う運動、メディアが紹介している運動は楽しいのか?心地よいのか?

そして、本当によくなるのでしょうか?

例えば、膝の悪い人に「筋力をつけるためにスクワットをすると良いですよ」とか「太ももの筋力が弱いからここを鍛えましょう」とかってよく聞きますよね?

筋力をつけたら確かに支える力は向上します。
中にはある条件を満たしていて、実際に良くなる人もいると思います。
ですが、筋力がついてもよくならない人はたくさんいます。

ですが、そもそも赤ちゃんは筋力めっちゃ弱いですよね?
でも上手に動きます。

何が言いたいかと言うと、赤ちゃんは力が弱い分、どうやったら動けるのか試行錯誤して、自然と関節などが機能的に働く動きを引き出しています。
その動かし方ができた時、私たちの身体はスムーズに動けるし、心地良いと感じるのです。

赤ちゃんの身体はゆるゆるで、大人のように固まって機能していないということはありません。
だから神経系が発達していけばどんどんできることが増えます。

反対に、筋力で補おうとする行為は、機能的に働かない部位があっても無理矢理動いている状態です。
自動車でブレーキ踏みながら、アクセルをふかしているようなものです。
これではどう考えても心地よくありませんよね?
力の入っている部位には余計に負担がかかっているので、もし動けたとしても力づくなので、またどこかを痛める可能性があります。

また、スクワットや歩行訓練など、どのような運動をしても、自分のこれまで動かせる場所を使って動いているだけなので膝に負担のかかる運動パターンからは抜け出せていないことがほとんどです。
(膝に限った話ではありません)

だから、運動をしてもよくならないのです。

つまり、身体をよくしていくためには、筋肉を鍛えようとトレーニングをする前に、機能していない場所が機能するように運動をしていかなければなりません。
機能する部位が増えることで新たな運動パターンを形成していきます。

そのためには、赤ちゃんのようにどうやったら気持ちよく動けるかを試行錯誤する過程が必要なのです。

運動は本来は心地よく動くこと。

ここを無視してガツガツ鍛えようとする、もしくは鍛えさせようとするのは絶対にやめましょう。


心地よく動くために

では、どのようにしたら心地よく動けるのでしょうか?

私がよくお伝えしている方法は「身体を揺らすこと」です。

座った状態でも寝た状態でも良いので身体を揺らしてもらいます。
そうすると「硬いなと思う場所」「動きにくいなと思う場所」を内観できると思います。

内観できたら、その部位がどうやって動かしたら動いてくるかなと意識を向けて身体を揺らします。
その部位をさすったり、手を当ててあげるとさらに効果的です。

これだけで、動いていない場所がどんどん動くようになってきます。

動いていないなと思う位置は、どんどん変化していくので、それに合わせて意識する部位を変えていきます。

あくまで気持ちよく、心地よく動きましょう。
無理矢理動かそうと力むのはNGです。

特に骨盤、肩甲骨、背骨、肋骨あたりが気になることが多いと思います。

丁寧に意識を向けて揺すれば身体がどんどん緩みます。

「何秒やればいいの?」とか「1日何回?」などよく聞かれますが、できるだけたくさん実施してほしいです。

WHOや米国スポーツ医学会のガイドラインなどでは、1時間に1回は身体を動かすことを推奨しています。

30分以上の不活動(デスクワークも含む)で血液がドロドロになってくるそうで、こまめに運動することが必要です。
日中不活動だから夜にまとめて、というのもあまりよろしくないそうです。

つまり、その方の生活リズムに合わせて不活動ができるだけ起こらない頻度で実施してもらうことが重要です。

とにかく身体を揺らしましょう。

これまで動いていない場所を動かす、どのように動くか意識しながら動かすことで新たな運動パターンが形成されていきます。

どこかが痛くなったり、動きにくい理由の大きな要因は運動パターンの少なさです。

動いていない場所、硬い場所は血流も悪く、重く感じるし、機能も低下しています。
揺らすこと、動かすことで局所の血流が改善され、身体も軽くなっていきます。
これが心地よさに繋がり、新たな運動パターンの構築につながるので、変化を実感できればどんどん動かしたくなるはずです。

指導する側は、この変化を感じさせてあげられるように運動を指導すること。
それが運動嫌いな人、動くことが苦痛だと思っている人に伝えるべき大切なことだと思います。


さらに、それができるようになったら、発展系としてさまざまなポジションで身体を揺らしたり、動いていない部位を動かせるように意識します。

例えば、股関節のストレッチを入れながら背骨を1本1本バラバラに動かしたりするなど。

ここまでできるようになると、かなり身体機能が向上します。

ただ、いきなりは難易度高いので、まずは心地よく揺らしましょう。


まずは「運動=心地良い」ものという認識に変えていけるようにできるかどうか?

健康な身体でいるためには非常に重要なポイントだと思うので、ぜひ自分自身で体感し、周りの方にもこの素晴らしさを伝えていきましょう。


また、今回の話は高齢者だけでなく、アスリートのパフォーマンスアップでも基本的には変わりません。

筋力をつける、鍛えることはもちろん大切ですが、身体中のどこかに機能していない部位があればパフォーマンスを最大限に発揮することはできません。

代表クラスの選手でも、そういった部位は存在するので、そこを機能するようにして、動きの繋がりを強化していく。

シンプルに考えれば、アスリートも高齢者もやることは同じです。
(こだわっていく繊細さはかなり差はありますが、、、)

多くの方にぜひ届いてほしいなと思います。


そして、身体(の構造)が変わると心も変わります。

私自身、最近かなりイライラすることが減ってきました。
(もともとイライラしやすいタイプです)

メンタル的な部分にも変化が出てくるので、うつ傾向やマイナス思考の方はまずは身体から整えていきましょう。

世界中の人が運動を心地よいと感じ、身体を整える習慣があれば、他者に攻撃的になったり、争い事や犯罪などがなくなっていくんじゃないかと真剣に考えている岩瀬でした。

長くなってしまいましたが、1人でも多くの方に伝わると嬉しいです。

お読みいただきありがとうございました。

謙虚・感謝・敬意
知行合一・凡事徹底
岩瀬 勝覚


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