マガジンのカバー画像

新宿周辺ストーリーもの(習作初期稿不定 仮題G.T.J.V)

30
仮題の全文:GreatesT"rip" Jun"V"oyage ー人がうらやむようなすごい旅に出てみよう、なんてー (2023.11.22 加筆) 引っ越し予定です。 2008…
運営しているクリエイター

#写真

(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-4)

(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-4)

眼を開いた先には、青色が広がっていた。
今までに一度も見た事もない、混じりけなく、でもどこまでも奥行きがあるような、それは青だった。
「右目もつけるよ、こっち向いてね」
シキの呼びかけに、急に我に還る。
もしかして今、空を見ていた? あれほど嫌いだったはずの空を?
「両目で見た方が、きれいに見えるよ」
シキがわたしの心を見抜いたような一言をささやいた。何も言い返せない、いや、言い返そうと思わなか

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-3)

(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-3)

あれ、この感じ前にもあった、なんだっけ、って思った瞬間。
二つのコーヒーキャンディが、同時に引き合うように動いた。
ぐいって音が聞こえた気がした。生きている人の眼じゃない感じ。寄り眼、ってやつ。
「わわっ」思わず素の声がでてしまった。怖いってのユーレイのそれとは違うけれど。
「ミノルの負け、ありがとう!」
シキが眼を戻し、嬉しそうにいたずらっぽくパ行で笑う。ぷぷぷ。
「笑うな何が『ありがとう』だ

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート5-3)

(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート5-3)

 と、急にシキは振り向きわたしの顔をのぞき込んだ。
何だよいきなりそんなに見るな。面白い顔なのかもしれないけれど。
「さて、ここで問題です。彼はこのお金で、何をしたのでしょうか?」
「何それ。答えて何か意味があるの?」
「意味があるのかは分からないけれど、大切だとは思うよ」
ろくに根拠もないはずなのにどうしてそう自信満々に言えるかな。シキに7割くらい、あきれてみた。
でも、残り3割くらい、違う気持

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート3-2)

(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート3-2)

そうなるともう一つ気になることがある。『Y』の右上に進むとどうなるか、だ。
ちょうど交差点にぶつかった。ちょうど信号が点滅する。慌てて向こう側に渡る。すぐに90度右の信号も青になった。
多分もうそんなに時間がない。横断歩道、白い線を飛び越えるように走った。
渡りきったわたしの目の前にあったのは、土色の塀だった。表面はザラザラな感じ、上には瓦が乗っていたり、シントシンとはほど遠いイメージ。なんだこれ

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート3-1)

(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート3-1)

また、コーシューとカンロクの交差点を渡り、この間の続きを歩いている。
ジャイアントマンの横をこっそり通り過ぎた。
あいさつはしなかった。ばからしいと思ったからじゃなく、いらない、と思ったから。区切りをつけなくてもいいことだってある。多分またジャイアントマンはずっとあごかがくがくさせているだろうし、太陽型の広場も当分あるだろう。人に成長してもアザラシは結局アザラシだろうし。これは関係ないけれど。

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート3-3)

(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート3-3)

今までの時間の中で、自分が主人公だったことが、いったいどれだけあっただろう。もしかしたらずっと脇役で、いや、舞台にすら立たないまま時間を費やしてきたのかもしれない。
「そうだ、念のために」
 シキが付け加える。
「助けにきてくれたところ申し訳ないけれど、私は姫じゃないよ」
「分かってる。いくらなんでもそこまで頭悪くない。そしてシキは意外と自意識過剰」
「厳しいご指摘ありがとう。でも、こんな姿勢で眠

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート3-2)

(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート3-2)

 シキが眼を開く。今度はぱちっ、と音がするように早く。
「そうだ、ひとつ報告」
「何」
「ばっちり見えてます」シキの視線はまっすぐにわたしのスカートの中にのびていた。
 思わずスカートを押さえながら、反復横跳びのスピードで後ずさったふざけんな!
「いい反応。やっぱりガールはこうじゃなきゃ」
 シキが体を起こし親指を立て、ウインクをする。実際には言ってないのに、吹き出しと台詞がなんか見えた気がする。

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート2)

(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート2)

階段を下りた左に待っていたのは、未来でも四次元世界でもなく、ひとりの男だった。
ベージュとブラウンと大理石風のタイルで敷き詰められた円形の広場。場所は地下1階くらい、円形劇場を思わせる感じ。彼はその中央に立っていた。
でかい。
おおきい、ではなく。『ジャイアント・マン』と勝手に呼びたくなる。普通の男の4倍くらいの高さ。横幅は倍くらいだから、ひょろっとした感じ。でも油断すると踏んできそう。どしん、ぺ

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート2-2)

(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート2-2)

「うん」
 シキが続ける。「そうだね、そうだ」
 何を納得したのか。質問しようとしたら、先に答えた。
「誰でもみんな、ひとつくらいは苦手なものってあるよね。高いところって聞いただけで足が震えるとか、狭いところが耐えられないとか。虫はどうしても触れないとか、人に顔見られて笑われるのがキライとか」
「最後のは誰だってイヤだ。ていうかどさくさにまぎれてイヤミを言うな」
「ああ、これは失礼しました」
 シ

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート2-1)

(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート2-1)

 また騒がしい昼が来た。
 授業が少し長引いたこともあって 、よりバタバタな感じだ。森の音楽隊は旋律を乱し、特殊部隊は隊の再編成を余儀なくされた。フツーな彼らはバスケの時間惜しさに昼食ごと体育館に向かい、ストリートギャングジュニア達は、うぜうぜー、とカッコつけて外に出て行った。木人達の森だけは今日も平和みたいだ。
 今日は誰か残るはず、と思っていたわたしの考えは甘かった。昨日より適当なあいさつで、

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園ものに見えて、じゃないストーリー5)

(試作 パイロット版)(学園ものに見えて、じゃないストーリー5)

「いい名前。ミノルは教室の教壇の上にスカートひるがえして仁王立ちし、すべての者達に叫んだ。『こんなことやってられるか。お前達、目を覚ませ! この社会がくだらない、腐った場所だってことに、早く気づけ! 
それまで、わたしは旅に
「出ない」
「出ようよ」
「嫌だ。というか勝手に人のキャラを作るな。あと、名乗って。人の名前は聞いてきたのにフェアじゃない」
 にらんでみる。風は男の子みたいに短いわたしの髪

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園ものに見えて、じゃないストーリー3)

(試作 パイロット版)(学園ものに見えて、じゃないストーリー3)

 私が一番見られたくない顔を、その子は見下ろしていた。 
 誰にでも、見られたくない表情って、有ると思う。だからわざと人の居ない廊下から窓の外に向かってした。
 なのに、わたしにとってのそれを、しっかり、見られてしまった。
わたしと同じ位か、一学年上くらいの彼女。整った顔、すらりと長い手足。自然な色の黒い髪がまっすぐに、肩の少し下まで伸びている。でもこれらの要素が全部自然で過剰じゃない。紺のセータ

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園ものに見えて、じゃないストーリー2)

(試作 パイロット版)(学園ものに見えて、じゃないストーリー2)

 そんな日々からの変化に気づいたのは、学年が変わってすぐのことだった。
「ごめん、今日部活のミーティングだから、お昼別でお願い、それじゃ」
 こんな言葉が誰からともなく出てくるようになった。もちろん理由は人によって、時によってかわるわけで、例えば「ミーティング」が「昼の練習」に、「学年委員会」その他にかわる、そんな感じ。
 それを聞いた残りの私たちは「うん」とか「わかった」とか「了解」とか適当な相

もっとみる
(試作 パイロット版)(学園ものに見えて、じゃないストーリー1)

(試作 パイロット版)(学園ものに見えて、じゃないストーリー1)

 お昼の教室は騒がしい。
騒がしさの元となっている人たちを観察しながら、気づいたことが有る。時間があったら聞いてほしい、大した話じゃないけれど。

 大体クラスの人たちは、5〜6種類くらいのグループに分かれると思っている。もっとも、わたしの中学は共学なので、女子校、男子校の場合は分からない、あしからず。

 まず、女子。教室の中央には、明るい健全優等生グループが輪を作る。集まり方も先生受けもきっち

もっとみる