「スーパーパワー」Inner MBA体験記 #25
「あなたのスーパーパワーは何だろうか?」
こう聞かれても、普通の人なら面食らうかもしれない。しかし、これはスピリチュアルやオカルトの話ではない。より多様で強力なビジネスを作るための鍵となるものだ。
講義はOshoke Abalu、黒人女性として全米でわずか179人しかいない建築士(当時)であり、現在はLove &Magic Companyという組織コンサルの会社を率いている。
BLM運動に代表されるように、黒人であり、さらに女性であるということはアメリカで生きる上で強いアイデンティティへの意識を生む。彼女の場合、白人男性が多い建築の世界でキャリアをスタートしているからなおさらだ。
沈みゆく家と新しい基礎
今回の講義はDiversity & Inclusion(D&I)の話から始まった。
なぜD&Iが大事になるかというのは今回の主旨ではないで割愛する。言うまでもなくD&I は政治においても企業活動においても、今日の世界では、あまりにも当たり前の概念となっている。理想的には。
建築士の彼女は家の例えでD&Iに向かう時代を説く。
「これまでの価値観は古い家に新しい照明や新しい階段をつけてリフォームしていくようなもの。これからの変革を指揮する我々に求められるものは違う。D&Iは新しい基礎となる。新しい基礎工事をして、その上に新しい家を建てるように考える」
これまでの家に新しいものを付け加えるだけでは、その重さで沈み、崩壊してしまう、という。だから新しい基礎を作ろう。多様な人材がいることよってより密度の高い組織になるはずだ。基礎工事で柱が抜けてはいけないように。
「Inner MBAの生徒は自由のための変革代理人(Change Agenct)だ!」とOshokeは強調した。古い家、つまりステータスの時代はもはや崩壊しようとしているのだから。
見えざるスーパーパワー
Oshokeは「多様性は誰かのものでなく、あなたのものであると考えて欲しい」という。
私もそうだが、普通に日本に生まれ育つと正直、多様性の概念は会得しづらい。大まかに言えば単一民族、単一言語の国(に、見える)だからだ。ゆえに多様性=マイノリティの話と解釈しがちだ。
そうではなく、マイノリティだろうがマジョリティだろうが、まずは自分自身が特別な存在であり、この世にただ一人のユニークな存在、と考えること。「自分という王冠を被った人間」であると。実際に替えが利く「あなた」はいない。「あなた」を認めることが多様性理解の始まりだ。
そこで、スーパーパワーというキーワードにたどり着く。これはオカルト用語の超能力という意味ではなく、自分の強み、個性、特性、といったものだ。
例えばOshoke自身のスーパーパワーは「言語」だという(たしかに講義の中で詩のように美しい表現が次から次へと出てきて、私の英語力ではこの記事で反映しきれていない...)。
またある人のスーパーパワーは「ビジョン」であり、「人を信頼する力」であり、「タフネス」である。スーパーパワーは、単純に性格というよりは、アイデンティティから来る「あなた」ならではの能力のことだと言える。
これを発見するための実にシンプルなエクササイズがある。
まず、親しい周りの1-2名の人に聞いてみる「私のスーパーパワーって何だと思う?
次に、「私が思うあなたのスーパーパワーは...」とフィードバックする。
最後に、両方とも書き留めておく(ジャーナリング)
私は実はこれを数年前に会社でやったことがあった。
そのとき印象的だったのは、とある女性同僚のスーパーパワーが「笑顔」だと指摘されていたことだ。
私は彼女に「粘り強さ」とか凡庸なスーパーパワーを名付けていたのだが...別な同僚が「〇〇さんのスーパーパワーはその笑顔です」とはっきり言った。実際に彼女の笑顔は周りの人を即座に元気付けるような、ピカイチのものだった。彼女自身、それを言われたのは初めてだと喜んでいた。
多くの人は自分のスーパーパワーに気づいていない。自分の弱みと思っていることが実は強みだったということもあるだろう。あなたが「左手から右手に目隠ししてもパスできるようなこと」は何だろうか?ぜひ、周りの人に聞いてみてもらいたい。
多様性が奏でるシンフォニー
D&Iな組織への変革は、英雄になることでもチャレンジャーになることでもなく、自分がどこにいるか知ることから始まる。なぜならユニークネスが人間の最大の資産だからだ。ユニークネスを育て、意識的に組織への貢献をしよう。
Oshokaはシンフォニー=交響曲で例える。
「オーケストラではすべての奏者と楽器が異なる役割を担っていて、素晴らしい音楽を奏でている。みんなが違う、だからこそ成立する芸術で、これがダイバーシティとインクルージョンが発揮される組織だ」
スーパーパワーとシンフォニーによってチームに変革を促していこう。多くの才能を受け入れ、協働を可能にすること。古い価値観のマリネ(塩漬け)になるのではなく、新しい家を建てよう。
最後に、彼女はこんな誓約文を共有した。
「社会的不公正と体系的な不平等に直面して、私はここに、ユニークネスというスーパーパワーを育むことを誓います。好奇心、協力、団結と成長を促すコミュニティという新しい基礎の上に。」
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次回、Inner MBA 体験記#26に続く!
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