どんな人にも居場所はある。映画『人生、ここにあり』イタリア、2008年
舞台は1980年代のイタリア。バザリア法の施行によって、精神病患者の再入院が禁止になり、その後の医療は原則、地域の精神保健サービスで行われることになった。地域で患者を受け入れるといえば聞こえはいいけれど、精神病患者たちは社会に放り出されても、すぐに居場所ができるわけじゃない。
一方、過激な労働組合の活動で会社を追い出されたネッロ。彼は、行き場のない精神病患者たちと人間の尊厳を求めて協同組合をつくり、床貼り作業の会社を立ち上げる。なんと、実話ベースの映画です。
精神疾患と失業者という設定は、なんだか山田洋次監督の『学校』Ⅲを思い出します。日本だと、なんだか湿っぽい道徳ちっくなお話か、さもなくば悲壮感ただよいまくって、社会の重圧に押しつぶされる労働者……みたいな話がコメディになるなんて、さすがイタリア。(すいません、別に『学校』Ⅲとか山田洋次監督をディスってるわけじゃなくて、中島みゆきの主題歌『瞬きもせず』が好きなんです)
精神病患者のお兄さんたちの、どこまでもポジティブなあたりが最高。ニンゲン讃歌っていうか、人生は「愛」以外に何があるって態度は本当にイタリア的。そして、イタリアンな娼婦のお姉さんたちのキップの良さにも笑った。ただ、ピュアな恋愛には破局が訪れるあたり辛い。彼女の親切さが仇になってしまうなんて。
コメディで、映画で、夢みたいな物語だけど、でも人間的な心の機微の要所要所を押さえているので、リアリティある作品になっています。実話ベースなので前向きになれるし、安心して楽しめるのもうれしい。
こだわりすぎる彼らの仕事ぶりが、アートとして認められ、社会の中で居場所をつくっていくカタルシス。どんな人たちにも、やれることはある。今の場所がダメなら、別の場所を探せばいい。どこかに必ず居場所はある。そんな勇気をもらえます。