飛行機がしばらく怖くなりそう。映画『非常宣言』韓国、2022年。
ソン・ガンホとイ・ビョンホンの共演なら、韓国映画好きorアジア映画好きは絶対見ないといけません。たとえ、苦手系なパニック映画でも。『JSA』の共演から22年(!?)4度め。心は躍ります。
ストーリーは単純。ハイジャック映画です。そこにバイオテロが加わり、ダイヤモンド・プリンセス号みたいな状況に。でもこの映画、コロナで撮影が中断していますので、コロナを経験してから脚本が考えられたわけじゃないところがすごいです。緊迫感も増々、10倍増。
主人公の一人、イ・ビョンホンが扮するのは元飛行機のパイロット。ある飛行機事故がきっかけで仕事を辞め、奥さんと離婚して、娘のためにハワイに新天地を求めて行くところ。もう一人の主人公ソン・ガンホはベテラン刑事。忙しすぎて奥さんに愛想つかされ気味。奥さんは友達とハワイ旅行へ。
ソン・ガンホのところにハイジャック予告の通報があったことで、物語は一気に加速します。犯人は製薬会社を解雇された社員。自分が開発したヴィルスを飛行機でばらまいて、乗客全員を道連れに自殺した格好に。飛行機の中はパニック。乗客が一人、また一人と発病して死んでいき、そのうちCAや飛行機のパイロットも犠牲になっていきます。
犯人が死んでヴィルスのことも、対応策もわからない中、奮闘するのはCAさんたち。とくにチーフはマギー・チャン似の美人で、みんなをまとめる仕事ぶりがかっこよかったです。彼女は、『モガディシュ』や『KCIA』にも出ていた模様。
あと、名前もわからない女医さんとか。地上では航空会社が右往左往する中、交通大臣役の女優さんチョン・ドヨンもかっこよかった。ただ、緊急事態に臨機応変に対応できるのが女性ばかりというのが、なんだか強烈な男社会縦社会の韓国をリアルに表現していて、うまいんだかしんどいんだか。
地上でひたすら走るのはソン・ガンホ。愛する奥さんを救うため、製薬会社に乗り込んで、社員からの通報から関係者を割り出してワクチンの存在を突き止めたり大活躍ですが、刑事の彼にはなんの権限もなく、汚染された空の上の飛行機を救うために走りまわるしかないのが辛い。
「非常宣言」を出したのに、アメリカに拒否され、日本に拒否され、韓国に戻るしかなくなった飛行機。チーフに続き、副操縦士もヴィルスにやられて、頼れるのはイ・ビョンホンしかなくなるのですが、彼と副操縦士の因縁とか、乗客たちの行動とか、地上とのスマホでのやりとりとか、本当に設定がいろいろ細かくて説得力あります。
大丈夫だとわかっていても、手に汗握らせるのがアクション映画。切実さを表現して、あまりある演技力の役者さんたち。韓国社会なら、ありそうな反対行動とか、その後の展開とか。お正月映画として、大満足の作品です。公開が始まったばかりなので、ぜひ迫力の大画面でどうぞ。2時間越えもあっという間。おすすめです!
余談(ネタバレ)ですが、専門家によれば、自衛隊の威嚇射撃はさすがに法律上アウトでありえないとのこと。大韓航空機撃墜事件以後、禁止になったのだそうです。まあ、そうでなくても日本人的にありえないのが、政府の早急な決定&威嚇射撃指示ですよね。そんな迅速な対応、絶対無理。