攻められている、小さな国を守る思想。映画『墨攻』日本、中国、韓国、香港、2006年。
小説がすごくおもしろかったので、映画の『墨攻』も見に行きました。どうやら小説ではなく、漫画が原作の映画化らしいです。戦国時代、常に攻められている国、特に大きな国に攻められている小さい国を守る思想集団のお話。
香港映画はたくさん見ている気がするのに、アンディ・ラウの主演の映画は初めて。そして、韓国映画の大ベテラン、アン・ソンギも久しぶりなのでうれしいです。
で、感想はというと、アンディ・ラウってやっぱりすごいなあと。華があるし、立ち居振る舞いの存在感たるや! 押さえた演技。決め台詞バシバシきめるかっこよさ。ほかにも、アン・ソンギとのやりとりで語られたセリフの数々が、本当にお見事でした。
俳優さんたちは、香港、韓国、台湾のスターが勢揃いですが、エンドロールみると日本人の製作スタッフ、音楽、その他にも大勢日本人が参加してて、ちょっとうれしくなりました。音楽もよかったです。
この映画、古代の戦争のディテールが細かくてよかったです。戦った後は、ちゃんと金目のものとか、役立ちそうなもの奪うところとか、戦闘で敵味方が入り乱れて、状況が二転三転するあたりとか。
一旦戦争が始まると、結局、みんな被害を蒙るので、「俺たちが死んでないのは運だけだ!」って農民が叫ぶのは本当に真実ですよね。味方でも、逃げようとすると切られるし、女性や子供だって手加減してもらえないし。
なにより、戦争があってもなくても、いい人から死ぬのがニンゲン社会。特に戦争中は、それが顕著な気がします。有能な部下が追い詰められて、結局報われないあたりとか。兵士たちに尊敬されている大将軍が、嫉妬深い王に負ける理不尽さとか。現実にもありそうで、よくわかります。
弓兵がとってもかっこよかったのも、古代の兵器のディテールへにこだわったかららしいです。パンフの解説では、1ページにわたって詳細かつ熱く語ってあったので、読み応えあり。油や熱湯攻めが、古代から中世の城の防衛には、下手な武器より有効な場面もでてきたし。ヒロインとアンディが水に落ちるシーンで、重たい鎧じゃ沈むだろうと思いましたが、古代中国の鎧って、皮を重ねて漆で固めていたから軽いとのこと。
原作の小説とコミックにヒロインは出てきませんが、映画ではちゃんとヒロインがいます。原作ファンには圧倒的不人気らしいですが、個人的にはあれでよかったんじゃないかと。主人公が悩むシーンに、人間らしい理由が必要だった気がしますから。
というわけで、あれもこれも、いろんな要素やメッセージが詰め込んであって、アンディ・ラウ主演作品初体験の私には、かなり楽しめた作品でした。
題名:墨攻
原作:森秀樹、久保田千太郎、酒見賢一
監督:ジェイコブ・チャン
主演:アンディ・ラウ、アン・ソンギ、ファン・ビンビン
制作:中国、日本、韓国、香港(2006年)133分