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イギリス少女たちの武闘派コメディ。映画『ポライト・ソサエティ』イギリス、2023年

えーっと、今まで見た映画で一番キャッチコピーに悩みました。イギリス映画なんですけど、主役はパキスタン系の姉妹。家族はイギリスのパキスタン系の社会で生活してるんですけど、主人公のリアはイギリスの地元の女子校に通ってて、いろんな友だちがいるし、空手(カンフー?)教室にも通ってる。そして、夢は映画のアクションスタント。

イギリスに住むアジア系の女の子が主人公の映画といえば、なんといっても『ベッカムに恋して』(原題:Bend It Like Beckham)。サッカーが好きなインド系の女の子が家族に反対されながら、サッカーのプロ選手を目指す青春映画です。でも白人系の親友(若き日のボーイッシュなキーラ・ナイトレイ!!!)のサポートもあるし、コーチと恋して親友とライバルだし。ラストはイギリスじゃ女子プロサッカーがないので、アメリカへ旅立ちます。

この映画で結構、印象的だった場面に、主人公の女の子が「パキ!」(=パキスタン人)って馬鹿にされて、喧嘩するシーンがあります。日本人が、ヨーロッパとかアメリカで「チャイニーズ!」って呼ばれる、あの感じと似てます。この、インド人が「パキ!」って言われて怒るシーンてわりとよく見るので、ヒンディとイスラムの区別がつかないヨーロッパ人を表現するわかりやすいエピソードなのかも。ちなみに、逆エピソードは見たことありません。

このイギリス映画は、そんなメジャー(?)なインド系ではなく、あまり可視化されないパキスタン系の女の子が主人公。周囲に馬鹿にされつつも、アクションスタントを目指す夢を手放しません。そんな彼女は高校生。助けてくれるのは彼氏じゃなく、女子校の友だち。20年たつと、こんなに価値観が変わるんですね。楽しい。

物語は、スタントを目指すリアのトレーニングシーンから始まります。両親や学校の先生はリアの夢に眉をひそめますが、お姉さんのリーナと親友2人は味方でした。ただ、画家になる夢に躓いていたリーナは、大学を休学して半分夢を諦めた状態。そんなときに、リーナにいきなりお金持ちのBFサリムができて、音速で結婚まで話が進みます。

サリムを怪しんだリアは、勝手に彼のパソコンをハックしたり、屋敷に忍び込んであら捜しをしようとしたり。このあたりは、いかにも子供なリアの無茶な感じ全開なのですが、その後の展開で、確かにサリムとの結婚が危ないことだとわかります。

両親に信じてもらえないリアは、姉のリーナを助けるために、親友2人に加えて、いつもいがみ合っていたクラスメートにも応援を頼んで、結婚式当日、救出作戦を決行するのです。この友だち、パンチが効いてます。さすがイギリス!(?)

まあ、なんというか、青春だし、カンフーだし、パキスタン文化はよく知りませんがなんとなく「そうだろうな…」的な部分もありますが、基本コメディで単純に笑って、楽しめます。とくに、リアとその親友やクラスメートたちとの年齢相応の友情がいい。両親も、最後はちゃんと娘たちを信じてくれます。

なんでエスティシャンたちが武闘派なのかとか、リアはともかく、姉のリーナは画家志望なのになぜ戦えるのかとか、一番強そうなのがどうして◯◯◯なのかとか、いろいろ突っ込みどころがありすぎて、アクション映画好きならきっと楽しめるはず。あと、ガールズ映画や小説が好きな人も。

公式サイトを見ると、ニダ・マンズール監督は脚本も担当していて、1990年生まれのパキスタン系イギリス人。子どもの頃、シンガポールで育って、後にロンドンへ移住。ムスリム女性で結成したパンクバンドが繰り広げる青春音楽コメディを監督して、イギリスで最優秀脚本賞(コメディ部門)ほか、たくさん受賞した人だとか。

万人向けかはわかりませんし、そもそもタイトルで内容が想像し辛いですが、私は楽しめました。元気のいい女の子たちが、夢や友情のために暴走&爆走する映画、笑えるし、応援したくなるし、前向きすぎて大好きです。

邦題:ポライト・ソサエティ(Polite Society)
監督:ニダ・マンズール
主演:プリヤ・カンサラ、リトゥ・アリヤ、セラフィーナ・ベー、エラ・ブルッコレリ、ショナ・ババエミ、ニムラ・ブチャほか
制作:イギリス(2023年)104分


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