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シルクロードの情報戦。『西域 探検の世紀』金子民雄


場所は、1900年前後のパキスタン。古都ラホールの大通りにある大型のザム・ザマ砲。18世紀の戦争王がつくったその旧式の大砲が鎮座する向かいには、西北インドのガンダーラ美術の精華を収拾したラホール博物館があります。

金子さんは、イギリスの作家キプリングの小説『キム』を引用しながら、19世紀末から20世紀初頭のシルクロードで展開された、イギリスとロシアの”グレートゲーム”を描いていきます。南下する帝政ロシア、それに対抗するインドの宗主国イギリス。彼らが闘いを繰り広げるのはカシュガル、ヤルカンド、ホータン、敦煌...etc

私が学生時代に歩いた、懐かしい地名を舞台に繰り広げられる情報戦争、発掘戦争。臨場感がありすぎて、ドキドキを通り越して、また旅をしたい衝動にかられてしまいます。今は不穏な情報が飛び交っていて、なかなか旅したい気分にはなれませんが。

バウアー文書の発見。スタインやヘディンの探検と砂に埋もれた古代都市の発見。学術的な探検と高度の情報収集活動の交錯する緊迫した世界。そして、そこに後から参入するプレーヤーの大谷光瑞と彼の西本願寺西域調査隊。その活動は、長い間、謎のままだったとか。

金子さんは、この西本願寺調査隊の活動を少しでも明らかにしたいと書いていますが、努力にもかかわらず、やはり謎が多いままだったのでは? というのが読後の私の感想です。個人的には、西本願寺探検隊以前のイギリス、ロシアの駆け引きと、スタインやヘディンの探検の話の方が数倍おもしろかったです。やっぱり、わかっていることが多いですから。

金子さんには西域を中心にたくさんの著作があります。ほかのものも読んでみたいです。




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