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原作の登場人物はみんな若い。『剣嵐の大地』上(氷と炎の歌3)ジョージ・R・R・マーティン


シリーズが進む毎に、各方面、色っぽい話になってきました。引き続き、ドラマと原作の違いに注目して読んでいます。まず、ロブから。

ドラマと違って、原作のロブのお相手は16才の女の子。いい子だけど、賢くなるにはまだ幼い。そして、長男ロブもまだ16才になるか、ならないか。恋愛未満で手を出してしまった感じ。ロブは戦場では無敵でも、大局的な戦略を上手くたてることができない。

本来なら、その役割は父親がするのだけれど、なんせロブが立ち上がったのは、父親を殺されたその敵討ちなのだから。女主人のキャトリンがかなりがんばってロブを補佐するけど、戦争に勝つほど母の言うことを聞かなくなり、重要な同盟相手のフレイ家を怒らせ、協力者たちが離脱し、そして敵討ちに目がくらむ仲間だった領主たちを処刑して、どんどん味方を失っていきます。

参謀のキャトリンも、母親としての自分を抑えることだけはできない。なので王都にいるはずの娘2人を助けたいために、捕虜のジェイミーを逃してしまう。ロブは、母の行為を「愛のためになされた愚行」と許すけれど、見返りとして同盟フレイ家との婚約破棄もうやむやにしてしまう。過剰に自信を持ってしまった息子を、母のキャトリンはどうしようもできない。彼女は、破滅の予感を先延ばしにしようともがくだけ。

一方、エッソスのデナーリスも、ジョラーと微妙な雰囲気に。ジョラーは、デナーリスに対して「複数の夫をもつこともできる」、「自分ほど忠実な男は世界中に一人もいない」など、かなり押すのでびっくり。ドラマではこういう直接的なアプローチがなく、西洋のナイト的な献身がメインだっただけに、ドラマからの読者としてはヲイヲイという感じ。

クァースの黒魔導師のデナーリスは、3度裏切られると予言される。「一度は血のため、二度は黄金のため、そして一度は愛のため」。血のための裏切りで、最初の夫ドロゴと子どもが死んでいるので残りは2回。ドラマでは、確かこういう直接的な予言ではなくて、ヴィジュアルで示していたはず。ネタバレ防止かな。

あと、ささいな気付きだけど、「ドラカリス」は高地ヴァリリア語で「ドラゴンの火」という意味。デナーリスは、目の前の相手を「焼き殺せ」という命令の言葉で使っている。私はドラマで見ていたとき、ドロゴンの名前だと勘違いしてました。

捕虜のジェイミーは、出会ってからずっと護衛の女騎士ブライエニーのことを「醜い」ばかり言っていたけど、旅する中で彼女がかなり賢いことに気づきだす。原作ではドラマと違って、ラニスター家の遠縁がメッセージを携える形で途中まで一緒で、最初の頃は彼がジェイミーのブライエニーに対する失言をいつもたしなめていたのに。

旅の途中で遠縁さんが死んだあとは、2人でそこそこ会話も成立するようになるし、2人が捕まったときにはブライエニーが男たちにひどい目にあわないように、彼女の実家にたくさんの宝石があるような嘘もいう。少しづついいパートナーになるのはドラマと一緒。そして、泣き言をいっていたジェイミーに「生きろ!」と活を入れてくれたのもブライエニー。かっこいい。

ところでこの巻では、ジェイミーとサーセイの幼い頃からの近親相姦が語られるんだけど、これがなかなかすごい。サーセイが王の手だった父親に呼び出される前の話だから、10才くらいか、それよりもっと前。この巻のアリアの年齢くらいのときって考えると、かなり早熟。ティリオンを生む前の母親に知られて引き離されるけど、まもなく母親が死ぬのでコレ幸いと関係を継続。

12才でサーセイが王都に呼ばれて、いつでも王妃になれるよう父親にスタンバイさせられる。彼女はジェイミーとずっと一緒に入られるように、ジェイミーが王の盾になれるよう画策。跡継ぎの自分を自覚しているジェイミーに、「あなたが欲しいのはキャスタリー・ロックなのか自分なのか」と問い詰めるサーセイ。すごい。

結局、サーセイの色香に負けて、王の盾になってキャスタリーロックの跡継ぎを放棄したジェイミー。多分、あまり深く考えていなかったんだろうと思う。今のロブみたいに。でも父タイウィンはこれが不服で、王の手をやめてサーセイを連れて帰ったので、また二人は離れ離れ。

タイウィンにとって、娘のサーセイは大事なコマの一つ。自分の都合で振り回す。ジェイミーは跡取り息子だったけど、サーセイのせいで王の盾にされて以来、手駒の一つでしかなくなったのか。それとも、最初から手駒の一つか。タイウィンは子どもとして愛しているという風ではないし、子どもをしっかり育てるって感じでもない。政治や戦争はめっぽう強いけど、親としては最悪。

そして、障害を持って生まれたティリオンにはとことん冷たいタイウィン。醜いもの、弱いものは大きらいなタイウィン。長男のジェイミーの生死が不明でも、いくら賢くても、障害者の次男には優しくしない。戦場での働きも認めず、息子としての権利も与えようとはしない。サンサとの政略結婚をガンガン進めるあたりはドラマと一緒。北部の継承権を持つサンサを手放さないためだけの結婚。

ロブの妹で囚われている長女サンサは、ドラマではマージョリーがきて、オレナばあちゃんが優しくて策士で、かなり状況が好転したかに見えた。でも、原作のオレナばあちゃんは、初期『ダウントン・アビー』のヴァイオレットみたいに短気で口が悪い。マージョリーの兄は兄でもハンサムなロラスではなく、足の悪いというウィラスという息子。彼をサンサと一緒にしようとする。

次女アリアの逃亡劇も、原作ではだいぶ違う。年齢は10才の設定。だから、失敗ばかり。逃亡兵とか、誰の部下とか多すぎて私も名前が覚えられない。人間関係が把握できない。このあたりをサクッと単純化してくれたドラマに感謝。この後、どう展開するのか。ドラマのようにハウンドと出会うのか気になる。とりあえず、アリアがいつもシリオの教えを守ってがんばるのが救い。「自分の目でみろ」。幼くても彼女の心は強い。

最後に私生児のジョン・スノウ。
原作で出てくる壁の外のリーダー・マンスは、ドラマよりももっと懐が広そう。そして、壁を超えてウィンターフェルにこっそり行くほど行動的。だから、ジョン・スノウの嘘は原作とドラマで違う。なるほど、と思える嘘。

原作のイグリットはドラマほど美人ではないけれど、ジョン・スノウを一方的に押しまくって、ついにいい仲になる。そして、1ページに1回くらい「あんたはなんにも知らないのね、ジョン・スノウ」(You know nothing, John Snow)と弄り倒す。かわいい。ちょっと、ジョン・スノウいじられすぎ。かわいいけど。

余談だけど、日本語の原作ではデナーリスのみつあみを「弁髪」って訳してあってびっくり。普通、弁髪っていうと満州族やインディアンの三編み&それ以外の部分剃り上げでしょう。デナーリスはドラゴン誕生で髪の毛が全部燃えたけど、さすがに全部剃ったりはしていないんじゃないのかな。翻訳ミス?それとも、こちらが本当??


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