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バレエにかける男の子の青春。映画『バレエボーイズ』ノルウェー、2014年。


なんの予備知識もなく、ポスターをみたわけでもなく、ただ、仕事の後の心地よい疲労感の中で、タイトルだけで見ると決めた映画です。映画『ウォーターボーイズ』(矢口史靖監督、2001年)みたいな、コメディ映画と勘違いしたことは否定しません。

ところが、最初のシーンからいきなりノルウェーの中学生の男の子たちのインタビューが始まります。どの男の子もまじめに「バレエが好き!」と答えているし、家族は「勉強してくれたらうれしいんだけど」みたいに、かなりリアル。コメディどころか、ガチの青春ドキュメンタリーでした。

舞台はノルウェーの首都オスロ。プロのバレエダンサーを目指す3人の中学生ルーカス、トルゲール、シーヴェルトが主人公です。男の子でバレエをやる人はめずらしいらしいですが、でも、舞台には女性と同じとはいわなくても、3分の1くらいは男性もいる印象だったので驚きました。

いかにも北欧の男の子っぽくて、肌の色も髪の色も薄い男の子2人。一人は身長はそこそこだけど、目がパッチリして女の子みたいなルーカス。もうひとりは北欧らしく中学生で180センチもある男の子トルゲール。顔ももう大人みたいです。

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そして、ラスト1人は、黒いつぶらな瞳が可愛いアジア系な小柄な男の子シーヴェルト。引退したスケートの織田選手の目をもうすこしパッチリさせて、丸顔にした感じです。「うちはちょっと他と違う」みたいな言い方がされていたので、お家に複雑なご先祖関係があるようです。

そんな彼らが、中学生から高校生になる間に、バレエと勉強(進学)、そして将来に悩みながらも、好きなバレエを続ける日々をカメラが追っています。バレエで毎日汗を流しながら、ロッカー室でじゃれ合ったり、悩みを相談しあったり。本当に青春って感じです。

日本の男の子は、あまり饒舌に自分について語ったりしない印象がありますが、バレエの男子3人は今、自分が何を考えているかちゃんと答えます、悩んでいるのか、うれしいのか、わからないのか。やっぱり、日本みたいに「察する」ことが大事なコミュニケーションとは違う環境で育つと、思春期の男の子でもちゃんと自分について言語化できるんだなあと感心しました。

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でも、男の子たちは青年になり、人生の選択の時期が迫ってきます。青春の全てがかかる、オスロ国立芸術アカデミー(KHiO)への入学試験が迫ってきます。入学すればプロのダンサーを目指せますが、ダンサーの道をあきらめても、学位はとれるし別の道を選択することもできます。そして、KHiOの入試に身体検査がみっちりあるのもいいですね。ちゃんと若手を育てようっていう配慮があります。

結果は3人とも合格。ところがルーカスには、その後、伝統あるイギリスのロイヤルバレエスクールの試験への招待が舞い込みます。こういうところも、大陸の地続き感がすごいですね。チャレンジしたいルーカス。他の2人は複雑ですが、それでも友人を応援する姿勢をちゃんと示すのが偉い。

ルーカスの結果がどうなったかは、ぜひドキュメンタリー映画で確認してください。そして、3人のバレエダンサーのその後は多分、ネットを検索すればわかるはず。本人のインスタもフェースブックもあるようなので。

邦題:バレエボーイズ(原題:Ballettguttene)
監督:ケネス・エルヴェバック
出演:ルーカス・ビヨルンボー・ブレンツロド、シーヴェルト・ロレンツ・ガルシア、トルゲール・ルンド
制作:ノルウェー(2014年)75分


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