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歳時記と落語

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旧暦と二十四節気に基づいて、落語を紹介しています。2020年4月から語り直していきたいと思います。三代目桂米朝の『米朝ばなし』(講談社文庫)をイメージして、米朝師匠風の語り口調で…
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#節気

【歳時記と落語】小正月・元宵・藪入り

旧暦の1月15日は「小正月」ですな。2021年は2月26日に当たります。 昔はこの日までが「松の内」とされました。注連縄やら書初めやらを燃やす「左義長」が行なわれるんもこの日です。「左義長」は地域によっては「どんと」「とんど」とも言いますな。 中国でもこの日は、「元宵節」というお祭りです。昔の暦は月の満ち欠けをもとにしてしておりますのんで、まあこの日は必ず大体満月ということになりますな。それになぞらえて、この日は「湯円」という団子を食べます。胡桃やゴマの餡をもち米の粉で作っ

【歳時記と落語】雨水、旅券の日

2021年2月18日は二十四節気の「雨水」でした。さて、この「雨水」は、雪が雨に変わる、という目安です。 今年は、たまたま七草とかぶったんで、先にそっちを投稿しましたが、実際にはなかなか温かくなりません。寒いと出歩こうという気にもなりまへんわな。 というわけで、出歩くと言うと、20日は「旅券の日」やそうで、こっちの話をさせていただきたいと思います。明治11(1878)年のこの日に「海外旅券規則」が制定され「旅券」つまり「パスポートというものが正式にできたんです。 パスポ

【歳時記と落語】七草

2021年2月18日は旧暦の1月7日です。五節句のひとつ「人日」にあたります。「人日」というのは妙な名前ですが、中国の古い書物には「一雞、二狗、三豬、四羊、五牛、六馬、七人、八穀」とあり、1月1日に鶏、2日に犬、3日に豚、4日に羊、5日に牛、6日に馬、7日に人、八日に穀物が生まれたという神話があるんやそうです 古代中国では、この日に七菜羹や七菜粥、及第粥を食べたといいます。それが日本に伝わって、七草粥になったんです。 私は、旧暦に合わせて七草粥を毎年作るんで、フリーズドラ

【歳時記と落語】旧正月・春節

だいたい、立春の前後三週間のうちに、旧暦の一月一日、つまり「旧正月」がやってきます。2021年は2月12日です。 明治になって新暦を使うようになっても、古い暦の習慣はしばらくは残ってましたが、この頃はすっかりなくなってしまいました。日本以外の東アジアでは、今も古い暦を「農暦」というてちゃんと管理して、伝統的な行事は全部その暦で行なってます。そんなわけで、中華圏では、今でも新暦よりは旧暦の正月の方が華やかですな。あちらでは、「春節」といいます。 さて、新年のお祝いといいます

【歳時記と落語】大晦日

旧暦は12月30日までで、次は元日ですが、昔は数え年でっさかいに、皆この正月一日に歳をとった。数えの61、十干十二支が一回りして生まれ年とおんなじになりますと、「還暦」となります。今は60で還暦ですが、生まれた時は「0歳」なんでそうなります。昔は生まれた時からその年の大晦日までが「1歳」でしたから、61です。 この還暦の話は「亀佐」にも出てきますが、サゲになっているのが「帯久」です。最近はそれが分かりにくいので、サゲを変えている噺家さんもおられるようです。 大阪松屋町近く

【歳時記と落語】節分・立春

暦の上では今日からが「春」です。大概、2月4日で、その前日が「節分」となります。「節分」というのは、昔は年に四回あったそうです。節、つまり季節の分け目やさかいに、そら四回あっても不思議やない。立春、立夏、立秋、立冬の前の日になるんやさかいね。 その中でなんで立春の前の節分だけ残ったかと言いますと、立春で年が改まるというのんで、節分が年越しになっとったんですな。というのも、昔の暦やと、大体立春の前後、3週間ほどのうちに1月1日、中国で言うところの「春節」もきます。それで季節の

【歳時記と落語】年の瀬

いよいよ旧暦でも年の暮れになってきました。昔やったらいまごろは、年の瀬の忙しい盛りということになります。何が忙しいかといいますと、昔は商売というのは大体が掛売りの節季払いというやつでして、大晦日が一年の支払いの最後ということいなってますんで、これをとりっぱぐれますと、商売人の方はエライ損です。払う方は払う方で、どないかしてこれを乗り切ってやろうと考えるもんも、まああんまりおらなんだとは思いますが、ないわけではなかったんでしょうな。それが落語の「掛け取り」の笑いの根底にはありま

【歳時記と落語】大寒

二十四節気の24番目が「大寒」です。2021年は1月20日です。 暦の上では、まあこのあたりが寒さの底ということになります。寒稽古なんかが行われるのもこの時期ですな。 また、寒気が厳しいということはものが腐りにくいということでもあります。「寒の水」なんてことをいうて、この時期の水は味噌や醤油、酒なんかの仕込みにええとされました。「寒造り」とか「寒仕込み」といいます。 一方でこの時期は酒の蔵出しの時期でもあります。大体今の暦で12月から2月くらいですから、仕込みの時期と重な

【歳時記と落語】えべっさん

阪神では、1月9日から11日までは戎祭りです。9日が宵戎、10日は十日戎、11日は残り福ですな。堀川戎、今宮戎、西宮戎あたりがえらい人出です。 大阪というと何というても今宮戎です。 この大阪を代表する戎さん、耳が遠いという話があります。それで、願い事をする人は社殿の裏をどんどんと叩いたというんですな。何でこんな話になったかというと、戎さんは大阪に背中をむけてはる。本殿はそもそも南向きなんで、別に他意があるわけやないんですが、それがこちらを向いてくれヘンということで、「聞こ

【歳時記と落語】小寒

2021年1月5日は「小寒」です。いわゆる「寒の入り」というやつで、ここから寒さは本格的に「冬の底」へ向かっていきます。また、この日からは、「寒中見舞い」を出すことになります。そういう意味でも、新暦で正月を祝うて「迎春」とか「新春」とかいうのは、感覚的には合いませんわな。 実際、かなりの寒波の到来が予報として出されております。 こういう時には、熱燗で一杯というのが宜しいな。「上燗屋」てなそのまんまの噺もありますが、今回は別の話を。 江戸時代、街中は木戸で細かい区画に別れ

【歳時記と落語】芝浜

年末に、というても、この【歳時記と落語】は暦は旧暦でやってるんで、本格的には年の瀬の話はもうちょっと後でやりますが、こういう時期になると、ようかけられる噺というのがあります。季節のはっきりした噺は、やっぱりその時期にやるんが一番気がのりまっさかいね。 そんな中でも筆頭格なんが「芝浜」でしょうな。上方では、舞台を芝浦から住吉の浜に変えてやります。人情噺としてもようできてます。おかげで、芝居や映画にもなった。 「何でぇ、市場が休みじゃねぇか。かかあに無理やり仕事に出され来てみ

【歳時記と落語】冬至

2020年12月21日は冬至です。二十四節気の中でも重要な節気の一つです。暦では、冬至があるのが十一月と定められています。 一年で一番日が短い日と言われますが、実際にそうなるかどうかは、暦と天体の動きの関係で絶対とはいえんようですが、古く四書五経の一つ『尚書』の「堯典」の中にも 「日短」と書かれております。また「冬至一陽生(冬至は一陽生ず)」ともいい、陰の気が極まり、陽の気が生じ始めるときとされております。「一陽来復」とも言いますな。つまり冬の極まりということは、ここからは

【歳時記と落語】二百十日

2020年8月31日は雑節の一つ、二百十日です。その名前の通り、立春から数えて210日目に当たります。 時季としましては、稲が実をつける頃ですが、それと同時に台風の多い時でもあります。その目安として、暦に記されるようになった。実際に昔から伊勢の船乗りたちは、この日を凶日としてたんやそうで、言うてみたら生活の知恵ですな。 そんなわけですから、台風の害から農作物を守る為の風鎮めの祭りが行なわれきました。それが今でも日本各地に残っております。富山県富山市八尾町の「おわら風の盆」な

【歳時記と落語】七夕

「七夕」も旧暦ですと、いまの8月半ば頃、2020年は8月25日になります。 仙台の「七夕祭り」は、旧暦になるべく近いように、且つ毎年同じ日になるようにというんで8月7日にやってます。 この七夕、もともとは中国の乞巧奠というお祭りでした。織女にあやかって、機織りや裁縫の上達を祈ったんですな。当然、織女と牽牛の伝説も中国から伝わったもんです。南北朝時代の『荊楚歳時記』には7月7日は牽牛織女の出会う日であり、乞巧奠と書かれていますんで、よっほど昔かこの風習があったことが分かりま