極楽征夷大将軍 著:垣根涼介
読了しました。それだけで感無量と言うくらい長かった。しかも難しい漢字の読みや登場人物の武将の多さに目がくらむ程です。読み飛ばしてしまった漢字が幾らに登ったかわかりません。つまり、語彙の豊富さと微に入り細に入り出てくる登場人物と戦乱の世の様子がありありと浮かんで来て、ハラハラハラハラしながら読んでたら終わってしまいました。
鎌倉幕府の滅亡、建武の新政、南北朝時代、室町幕府の樹立を足利尊氏と足利直義の二人をメインにして家宰を務めた高家の師直と共に日本史を全然知らなかった私にもおもしろおかしく教養を与えて下さった一冊です。
いつもいつも事件が起こる、謀反が起こる。絶え間ない戦乱の世を駆け抜けた一族の末路は壮絶な物だった。どう壮絶なのかは割愛するしかない。と言うか読んで感じて下さい。
最初は穏やかだった少年時代を描いています。元服、結婚、出産とそれだけだったら良いのに、その後戦乱の世に巻き込まれて行きます。
後醍醐天皇の行った建武の新政に業を煮やした武家方は朝敵として描かれ、戦が絶えないのです。しかし、戦で勝ち取った室町幕府は鎌倉幕府崩壊の轍は踏まないように献身的に作られて行きます。
本を読んだだけじゃ、足利家のその後の血統はどうなっているのかわかりませんが、極楽征夷大将軍。尊氏の非凡な才能と大器晩成の極みは読んでいて痛快でした。室町幕府の初代征夷大将軍に任ぜられた尊氏は最後まで戦乱の世を駆け抜けました。
息継ぎできない程の量の文字数ながら、続きが気になると言う理由で読まされて行きました。尊氏と直義の戦も悲しく、絶えませんでした。こんな数奇な運命を辿った人達が先人に居たなど、つゆほども知らず過ごしてた自分が少し情けなくなるくらいです。
ユーモアを交えながら、でもきっとこの兄弟の事を好きになってしまうでしょう。二人の才は非なる物。しかし、互いを補い合い室町幕府を建設するのです。天晴れでした。
作者の垣根涼介さんは小学生の頃から小説を読んでてバブルの頃のマンションが一気に値下がって困窮し、賞金目当てで応募して作家になったとあります。その前に仕事としてもコピーライティングをしてた模様で一日一冊読んで2年間で700冊読んだ事もあるとか。
だいたい1000冊も読めば小説は書けるくらいになると言う人も居ますが若干ですが仕事でも文章の基礎を習う機会があったようで、そこにも恵まれてたのかも知れません。吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞、そして今回で直木賞受賞です。おめでとうございます。