ファーストプライオリティ 著:山本文緒
31歳に焦点を当てた31の話。短編に違いは無いが、一つの話が5分で読める数ページで一作品を書き上げてしまっていて、でもそれが31話も載っているのだ。笑えちゃった話や、身の回りにはどうしたって居ない人の話。景気が良かった日本の話や、男女の駆け引きの話。身に覚えがあると言っては語弊があるが、自分にも似たような所があると思わせられてしまう程、架空の話で数ページしか書く分量は与えられてないのに、どこかに居そうな主人公たちを微笑ましく眺められた。
短い文章で起結を結ぶのは簡単じゃないと思う。しかもタイトルありきで文緒さんは小説を書くらしいし、その分省いて良い地道な下調べなどは不要な書き方だが、作家さんと言う職業は簡単に説明するだけでも物知りだ。なんでそんな事知ってるんだろうって言うヴォキャブラリーと目線の多さに脱帽する。幸せな話も危険な話も数ページで起結して文緒さんらしい慈悲に包まれてる読み切り小説を時間に縛られる事なく丁寧に読めたのは有意義な時間だった。
ファーストプライオリティが〇〇な人と言う事で、全てタイトルが揃えられてる。31話封入され最後の小説と題された章はハードカバーの出版の際に書き下ろしされた物のようだ。
31才の頃、私は何をしてたんだっけ。このブログを立ち上げて、丁寧に自分の過去を見つめ直してた時期だろうか。あっという間に38才になってしまった。まだ、可能性の芽があって奮闘してた時期だったろうか。自分に過度に期待して、現実とのズレに悩まされていたなぁ。
文緒さんの小説に出て来るような人間関係やら恋の経験が乏しい私だが、文緒さんは形容しがたい男女の距離や感情を平易に表現してしまう。なんとなくだが伝わって来る情事やロマンスに社会の現実が突きつけられて、想像の世界で恋愛を傍観させられるような錯覚に陥る。そんな事した事無いが、こう言う人も居るんだろうなって感じるのだ。
31話の小話のタイトルを羅列させてもらう事は割愛させてもらう。どれも面白い作品だった。
以上
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