蜜蜂と遠雷
蜜蜂と遠雷を読んだ。
3年程前に話題になった本。ずっと読みたいと思いつつ積読したまま手に取らなかったのは、その文字数の多さにあるかもしれない。
でも読み始めると本当にするすると言葉が頭に入ってきて、すごく読みやすい小説だった。まるで漫画かと思うくらいの読みやすさだった。
わたしは音楽センスが全くない。人より音楽を普段から聴いていると思うが、音感もないし、きっとこんなコンクールの演奏を聴いても、正直誰が優れているだとかそういった違いが分からない気がする。
でもこの小説の世界だと、本当にその曲の描写や背景、風情が事細かに書いてある。それを読むだけで音楽を心から味わった気になり、その曲の素晴らしさを教えてくれる。コンクールの審査が進むにつれて、その表現もどんどん詳細になっていく。
この話は7年間の連載だったと聞いて、なるほどなと思った。本の書き方は知らないけれど、こんなに何曲もその1曲に対して真摯に向き合い、言葉で表現するのは、一気には書けるものではないのではないだろうか。わたしなら飽きる。そして表現方法がかぶる。前に使ったなあ、この表現、ってなる。もちろん7年かけたから書けるとは思わないけれど。恩田陸の語彙力には脱帽する。
登場人物のキャラクターもそれぞれたっていて、親しみやすく、愛嬌がある。どの視点になってもその人物が主人公だと思え、応援してしまう。これはとても良かった。
そして1人1人みんなの中にある音楽に対する情熱や生き様がカッコいい。その上、登場人物それぞれがリスペクトし合っているのだ。天才が天才に刺激され、でもみんな仲良くしているところは、とても微笑ましかった。
ちなみに、読み終わったあとすぐに映像が観たいと思って、映画も観た。Amazonプライムでレンタルしてすぐに観た。
配役はなんとなく知っていて、小説を読む時からなんとなくイメージしながら読んでいたので、すごく映像が観たくなったのだ。
正直、観なくても良かった。役者さんたちはそれぞれ良かったと思うけど、何せ本当に小説読みたてだったので、映画では設定の時点で変えられてる点が無数にあり、その度に、なんでや!って思ったし、やはり原作ファンになると実写映画は気に入らないが実証されてしまった。
以下、少しだけネタバレになるかも。
そもそも、恩田陸も映像化は不可能と言っていたし、小説では事件的なものは起きない。コンクールに関わる人はみんな優しいし、登場人物にリスペクトを持って接してくれる。それがエンタメ的だがとても心地よい。みんなそれぞれ苦悩はあるが、比較的ずっと明るいところにいる。
このコンクールを通しての出会いと成長を書いているので、全編を通してとても気分良く終わる。
映画は全体的に暗い印象だった。怒られるところもあるし。わたしはゆとりなので怒られたくない!
あとわたしは高島明石が好きなのだが、松坂桃李の配役ぴったりだ!と思ってたのに、映画ではあまり格好良く写してなくて少しガッカリした。小説の高島明石はその寡黙さと懐の深さと優しさがにじみ溢れててカッコいいのに!松坂桃李は好きだから残念だった。
以上、蜜蜂と遠雷レポでした。
Apple musicで調べると、蜜蜂と遠雷のピアノ全集なるものがあったので、ダウンロードして最近よく聴いている。
クラシックにもっと詳しくなりたいなあと思った。舞台となった浜コンにも行ってみたい。
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