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構造・機能・内容?

※この記事は特に読者に不親切で、この世で深草しか知らないような知識を整理するためのものです。

通常、材料xを分類・分析するときは色々なやり方がある。例えば、xが物質であるならば、それは鉱物なのか、植物なのか、動物なのかと考察し、仮に動物であるとしたならば、動物が備えているべき特徴の範囲でどんな特徴を持っているのかいないのか、持っているとしたら幾つあるのかと考える。例えば足はあるのかないのか? あるとしたら、二本脚で立つのか、四本脚で歩くのかといった具合である。このようにxを排他的に分類(鑑別)したり、xはどんな特徴を共通して持つか、xはその部分としてどんなものを持つかを調べることによって、xの何たるかが詳細に解明されることになるし、xが他のものとどこが違ってどこが違わないのか、その共通点と相違点も明らかになるだろう。

このような分類の最も初めにあるかもしれないのが、xは何らかの構造 structure なのか、それとも機能(作用、働き、力、操作、対応関係) function なのかということである。

例えば、xが「国家」であれば、それは様々な特徴を持った構造であると判定できる。例えば、国家であれば、政府・領土・国民といったものを部分として備えているだろうとか、政府の中にも上下関係があり、領土には東西南北の地理と天然資源の分布があり、国民には民族と信仰と言語と歴史などがあって、無数の区別、すなわち無数の特徴を備えていることが予想される。それらの特徴の中で、国家が国家としての同一性を備えている限り固定的とみなされるものが本質的な規定(述語)とみなされるだろう。

一方、xが「否定」であれば、それは命題に対する操作であり、命題に対する作用の一種である。命題pがあれば、その否定は「pでない」という命題であり、この命題そのものがxというわけではないけれども、pからnot pへと変化させる作用がxであるということになるだろう。

世の中のあらゆるものは、特徴の束である構造か、もしくは構造を変化させる機能のどちらかまたは両方を合成した存在として分析できるようにみえる。

ところが、左翼評論家の三浦つとむ氏は特に日本語の文法論において、構造主義(形式主義、具体的には学校文法=橋本文法)と機能主義(時枝文法)とを共に言語学研究にあたって有効な作戦ではないとしてたびたび批判し、退けている。そして、表面上の構造(文法学においては日本語の文字列)だけで考えても、同じ構造が複数の機能を持つ(文法学においては同じ文字列が複数の意味を持つ)と考えても行き詰まりがあると考え、構造でも機能でもなく、「意味」が大事なのだと三浦は唱える。

しかし、「意味」と言われても非常に抽象的なので、筆者なりに言い換えるならば、これは内容と言い換えてもよいものである。なぜならば、三浦においては文章の意味とは文章の内容と同義であり、それは文章という記号列だけではなくて、文章を生成した認識(主体)やその認識の対象(客体)との関係づけだからである。その理由をさらに言えば、形式主義では同じ文章に異なる反応を読者がする理由が説明できないし、そうかといって、同じ文章に異なる反応を読者がするのはその文章が複数の「機能」を持つからだと説明しても、今度はその文章の「正しい意味」がわからなくなる、つまり「誤読」という現象を説明できなくなるからである。

だから、三浦としては同じ記号列に対して複数の人が異なる反応をおこなったときは、その記号列に対してどのような関係づけを読み込んだかの違いにそれを帰すべきなのであって、そこにおいては記号列だけではどの関係づけもあり得るかもしれないにしても、その背景となった認識や対象に至るまで調査を進めれば正しい読み込みとそうでない読み込みとを選り分けることができるし、そうすることが可能なように説明しなければ正しい意味論(内容論)とは言えない、ということになるのである。

とは言うものの、今我々の手元にあるのは常に既に書かれ終わったテキストである。だから、どこまで背景を調べるにしても限界があるのであり、結局手元にあるテキストを形式的に分析する他ないのではないかとも思えるし、また、テキストに対して複数の反応が見られても、それはそれでテキストを複数の解釈を許すように書いている方が悪いというか、テキスト自体が曖昧なのだから複数の意味がそれぞれ正しいのであって、「作者の死」まで行くと確かに行き過ぎを感じる一方、執筆者の意図をことさら特権視する必要も無いように思える。

三浦つとむの「内容」概念は非常に独特なもので、結局これを現代的な言葉に翻訳できないと三浦つとむの説に決定的な評価を与えることはできないのではないかと思う。

(1,955字、2024.06.02)

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