表計算アプリの立場に立って考える
エクセルなどの表計算アプリを使いこなすときは、表計算アプリの視点に立って考えなければならない。なぜならば、我々は表計算アプリに表示された表をみているが、それは表計算アプリにとって表 table とは限らないからである。
※そもそも表計算アプリをなぜ使いこなす必要があるのか? と思う方もいるかもしれないが、それはもちろん事務作業や管理作業で使うからであるし、そのときに表計算アプリの視点が理解できないと効率、作業ストレス、扱うデータの性質に対する理解が劇的に下がるからである。反対に言えば、表計算アプリの立場を理解しながらカイゼンを進めれば以前に比較すれば何倍も効率的に、スピード感をもって作業を進めることができるのだ。
例えば、本物の紙の方眼紙に従業員番号や氏名や所属や役職やメールアドレスや電話番号などの項目を横並びに、左右に並べて書き、その下に何名もの従業員の行 rows を書いていけば、それは確かに一番上の行に情報の種類が並べてあって(タイトル行)、整頓された表を書くことができる。この表を使うときは、例えば特定の氏名の人について所属や連絡先を知りたければ、その氏名が書いてある行をヨコにたどっていけば知ることができる。
一方、紙の方眼紙と同じように表計算アプリにも薄いラインがタテヨコに引かれている。そこで、ラインに沿って紙の方眼紙に、
従業員番号、
氏名、
所属、
役職、
メールアドレス、
電話番号、
勤続年数、
などを書いていくことができる。そして紙の方眼紙と同じようにタテヨコが整った、行や列 columns (カラム、コラム)がズレていない表を書くことができるようである。しかし、この表(ひょう)なるもの、表計算アプリの立場に立って、じっとみてもらいたい。
ただ、数値や文字列が近いセル番地に入力されたもの、それは教育を受けたヒトにとっては表であっても、表計算アプリにとって「表 table」ではないのである。アプリにとって、それはただの情報の寄せ集めである。表計算アプリはどこが「タイトル行」なのかもわからないし、「氏名」には全角の文字しか入らないのかどうか? 「メールアドレス」には半角文字しか入らないのかどうか? 「勤続年数」には整数値しか入らないのかどうか? アプリはそんな懸念を表明することも無い(型が揺れていることを気にしない)し、そんな保証(常に同じカラムには同じ型の情報が入力されるはずだという保証)を想定することもアプリには無いのである。
だから、ヒトはまず、アプリにとってはそれは「表 table」ではないということに気づかないといけない。なぜならば、決してアプリ側から「あなたにとってこれは表に見えるかもしれませんが、私にとってはそうではないです」なんてメッセージを発してくれることはないからである(実は例外もあるのだが、それを解読できる人は既に気づける人である)。そして、気付いた上で、アプリの機能として「情報を四角く寄せ集めた範囲」を「テーブル」に変換する機能があるのだということを知らなければならない。例えば、エクセルやGoogleスプレッドシートであれば、「挿入」タブから指定できる機能であるが、知らない人が多い。むしろもっと発展的な機能である「ピボットテーブル」の方が馴染み深い人がいるぐらいである。
そして、いったん「テーブル」としてユーザによって定義された情報の集合は意味のある塊(かたまり)として扱うことができるし、その部分である各カラムもA列やB列(これは位置を示す記号に過ぎない)ではなく、「従業員番号」や「電話番号」のような意味のあるカラムとしてタイトルを使ってコントロールすることができるようになるのである。つまり、テーブルとして定義することによって、情報がたまたま隣接して寄せ集められているだけではなく、一つのテーブルの中に統一されて構造になると同時に、そのテーブルに対する操作(機能)が定義できるのである。これはオブジェクト指向で言うオブジェクトだとも言える。
ここまで定義して初めて情報はデータになったと言える。このような作業はデータクレンジングとも言われるが、ここまでアプリに教え込まないと、アプリはその真価を発揮してくれない。なかなかこのことに非ITの人たちが気づいてくれない。それがはがゆく、またこれさえわかってくれれば、ITパスポートで習うような枝葉の知識はその都度検索してくれれば十分だと思うほどである。
そしてそれがわかるためには、一言で言えば、表計算アプリの気持ちをわかることである。
(1,870字、2024.06.21)
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