その場では感情的に成ってうまくいかなかったが、後から学びになったこと
この10年ほどの間にも無数の人とうまく会話ができなかった。もちろんできたときもある。それはそれでいい。例えば、事務的な会話や自分から相手への「寄り添い」が必要な会話はそれぞれときどきできるようになった。それでも、それらが必要なときにできないこともあり、なかなか難しい。
相手説の否定は自説の補強にならない
以前にも書いたが、英文解釈の読書会をやっていて、難しい構文のセンテンスをどう解釈するかでヒートアップすることがよくあった。そのときは、相手の解釈を否定することに躍起(やっき)になってしまっていたが、後から冷静に考えると、相手の解釈の弱点をいくら指摘しても自分自身の解釈の弱点を改善したり、強みを主張したり、第三のさらに良い説を出さなければ意味はない。しかし、なぜかそのときは「相手の説を否定できれば、自説の補強になる」と思い込んでしまっていた。だが、これは誤りであり、そのときの私は情緒的に暴走してしまっていた。それは相手の説が実際以上におかしなものに見えたからかもしれない。
相手の欠点がみえるときは、自己投影していないか検討する
例えば、自分がため息をつかないように気を遣っていたとしよう。ため息をつきたくなる瞬間がたびたび訪れたとしても、それを深呼吸のように、ため息にきこえないようにする。それは近くにいる相手に気を遣わせないためかもしれない。そうやって自分が気を遣っているそばで、思いっきり何の思慮もなさそうにため息をつかれてみたら、「なんてこいつは遠慮が無いヤツなんだろう!」とイライラしてしまうかもしれない。しかし、別に誰もため息をついてはいけないとかつくべきでないという文化は持っていないかもしれないのである。つまり、ため息をつかないように気を遣っていたのはたまたまそのときの自分の「自粛」に過ぎない。むしろ自分の勝手なこだわり、勝手な「自粛」を他人に押し付けて勝手に不機嫌になる方がよほど理不尽で気難しい、面倒くさいやつだろう。
このように、自分が気を使っていることや劣等感を感じている欠点などについて、他人があっけらかんと無配慮な振る舞いをすると、それが悪気のないものであってもというか、むしろ悪気のないことがわかるだけに腹が立つということがある。しかし、これは相手に非があるとは言えない。なぜならば、自分自身の中の葛藤を相手に投影しているだけであろうからだ。もし私がどうしても耐えられなければその場を立ち去ればいいのであって、仮に相手に嫌味を言うなどしても誰も得しないし、むしろ悪いのは変なこだわりを持った私自身だということになる。これも学んだ。
発言を主張として訴えたいなら理由をつける
或る投稿者の投稿に「その意見は今の世の中では通用しない」という感じの発言をしたことがある。すると、投稿者はその理由をたずねてきたので「今の世の中は特定の価値観に支配されているから」と答えた。今にして思えばその後に、それだからあなたの意見が仮に正しい意見であっても通用しないと申し添えた方がまだよかったかもしれない。私としては相手に「反論」したいわけではなく、その相手の方が熱心に論証を展開しようとしていたところに言わば「そんなに苦労して厳密に考えても、世間は受け入れてくれないだろう」と冷やかしを入れただけであった。とはいえ、冷やかしを言うだけでもまったく誉められたことでもないから、私はそのとき相手から「変な冷やかしはやめてくれ!」と非難されてもしょうがなかった。嫌なヤツだった。
ところが、そういう落ち着き方に話は進まず、相手の方も「世の中の支配的な価値観が間違っていることもあるはずだが、なぜそれが正しいのか?」と根拠を更問いしてきて、私も意固地になったが、そもそも冷やかしなのだから答えるべき根拠もない。結局、私はカンシャクを起こしてしまった。逆ギレである。みっともない話だ。それから、私は発言を主張として述べる際には根拠を述べるか、根拠がないときは根拠がないとか連想ゲームだとかハッキリ言うようになった。苦い経験である。
話を盛る、誇張するときは失敗したときに退却できる余地を残す
会話をおもしろおかしくするために話を持ったり、デフォルメしたりする。しかし、それによって相手がひどく不機嫌になったり、場合によっては絶交されることも何度もあった。もちろん「地雷を踏んだ」などとしか言いようがないものもあるが、「おもしろおかしさ」にも礼儀を失しない程度というもの、相場というものがあり、そのラインは自分自身で敷いておかなければならないと最近は考え始めている。
(1,880字、2024.06.19)
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