発達障害あの手この手 Lifehacks & QoL-improvements for Neurodevelopmental disorders
発達障害(自閉症スペクトラム)の一当事者として体調不良や気分の落ち込みに悩まされてきた私が試してきたことを、私にミスマッチだったものも含めて紹介する。科学的統計的な根拠はあるものも無いものもある。当事者として暗中模索のなか、自己責任で人体実験をやって来た体験を記しておくので、当記事についても自分の状況と照らし合わせて自己責任で参考にしてもらいたい。
ダイエット
糖質制限ダイエットまたはケトン体ダイエットという炭水化物をほとんど抜いてしまうダイエットを2024年1月現在も実施中である。減量を人生で初めて始めたのは、人生で初めて誰がどう見ても不健康だという水準(BMIという指数で言うと30超え)まで太ってしまったからだ。だから体重を健康的な水準にまで落とすことが目標であり、それは進捗があった(ここまで半年で20kgほど減量した)のだが、なぜか副作用として行動力が上がり、家事やこのようなブログ記事を毎日書くことができるようになった。
聞けば糖質制限はてんかん治療としても用いられるという情報もあったのだが、私自身はてんかんの特徴(発作や外部刺激に過敏)はみられないので、糖質制限によって糖依存から脱却できたことで気分が穏やかになったのではないかと今のところ推測している。とはいえ、糖質制限自体が賛否両論の減量手法であり、おそらく悪い副作用もあるだろう。ただ、肥満のままでいるのもよくないから、少なくともそれが解消されるまでは継続したい。
なお糖質制限ダイエットというのは大雑把に言えば通常は優先的に消費される炭水化物を制限することにより、体脂肪を優先的に分解する体質になるというものである。では今の自分の体が体脂肪を分解するフェイズに入れているのかどうかを確認するにはどうしたらいいか?というと、吐いた息に含まれるアセトンを測定することによって間接的に確認することができる。私は下記の製品を使って確認している。
表示される数値の目安は以下のようなものだ。なお炭水化物を抜いていない状態では当然だが0ppmになる。
サプリ
アミノ酸系のサプリを飲むと気分の改善があった。トリプトファン・チロシン・フェニルアラニンの三種類があるが、トリプトファンは鎮静、フェニルアラニンは興奮、チロシンはその中間という風に把握していて、もしあなたにこれらのアミノ酸が不足している場合は私と同じように有効かもしれない。
なお、現在主に常用しているのはビタミンCとケルセチンである。ビタミンCは糖質制限の都合上肉ばかりを食べることになるので、壊血病を予防するという意味合いもある。ケルセチンは老化細胞除去効果があるという研究があるが、人体で実証されている段階ではない。
また、特に外国産のサプリの場合、カプセルが大きくて飲み込みにくいという問題があるかと思う。飲み込むときにカプセルが上顎(うわあご)に触れないようにしたり、目を上方にそらしながら飲むといった拒否反応が出なくなる私なりのコツといったものもあるが、確実に飲みたいときは食品を噛んで飲み込むときに一緒に飲んでしまうのがいいだろう。
蛇足になるが念のために言うと、サプリは食品であって医薬品ではない。どういうわけか、カプセルや錠剤を飲むのをやたらに忌避する人がいる。不思議なものだ。そこまで追い詰められていないのなら、それでいいのだが……。
薬剤
2024年現在はメンタルクリニックに通って処方薬を服用しているが、いわゆるSSRIやストラテラ・コンサータは私には顕著な効果がなかった。海外から自己輸入するサイトで薬を買い漁り、片っ端から試して運良く効果があったもの(そして副作用で死ななかったもの)を医師に報告して定期的に血液検査しながら飲んでいる。
内臓
鼻炎
「アレルギー性鼻炎」を子供の頃に指摘されたことがあるが、何のアレルギーだかは不明だという。今は要するに花粉症なのだと認識しており、たまに鼻水がひどいときは鼻うがいをして少しリフレッシュしている。
専用の食塩水を使えば、鼻うがいは事前に想像したほど苦しくも痛くもなかった。
消化器官
消化器官に異常あるいは炎症があるのではないかと疑っていた時期もあった。なぜならば、発達障害者には大腸にも異常がある場合が多いという経験談も複数聞いていたからだ。整腸剤も試したが、あまり聞いている様子がない。そこで、無職で時間があった時期に胃カメラと大腸カメラを入れてみたが、まったく異状なしであった。形状や見た目に問題がないとしても機能的にはどうなのだろうか。大腸には無数の最近が住み着いていてそれの構成次第では脳に不具合をもたらすという話もある(いわゆる腸脳相関)。そこで腸内細菌叢(さいきんそう)あるいは腸内フローラを調べる検査キットを購入し、検査を受けた。
結果としては「あなたは標準的で健康です。しかも〝痩せ型〟です」というもの。ではここ数年で急激に太ったのは一体何なのか……という疑問は残ったが、腸内フローラの不具合説はこうして私の調査候補からは削除された。
磁気刺激治療
TMS(磁気刺激治療)というものがあり、うつ病には効果があるというので、やってみたことがある。もちろん自由診療であり高額だ。だが、気分の落ち込みが軽くなるならと思って数十万円を投じた。しかし結果としては頭痛が軽くなっただけであった。頭痛が軽くなったのは悪い結果ではないのだが、たとえこれが治療と因果関係があったとしてもコスパが悪過ぎると判断し、私はそのビジネスクリニックに通院するのを辞めた。
外出
外出するのは億劫(おっくう)だが、確かに他の何にも代えがたい気分転換が得られることがある。それが何なのか、ハッキリとはわからない。二酸化炭素濃度やホコリの少ない外気や太陽光や直立歩行などによる血行促進や地理的な移動の感覚、解放感が複合して何か良い影響を生み出すのだろうか?
空気
二酸化炭素濃度があがると作業効率が下がるという話があるのでCO2モニタを設置して、CO2濃度が高くなると換気するようにしている。
空気清浄機も買ったことはあるのだが、こちらはあまり効果を感じなかった。
光
気分の落ち込みには光療法というものがあると聞き、高輝度の光を発するライトを購入したが、少なくとも購入当時はそれほど効果を感じなかった。ただ、少なくとも暗いところにいる(例えば夜道を一人で帰るなどの経験)ことは明らかに気分を落とすことはわかったので、部屋の照明を高輝度(高ルーメン)のものに交換することにした。
運動
ダイエットに関連してフィットネスジムを契約し二年ほど通ったが、体重に覿面(てきめん)な効果をもたらすことはできなかったので解約。もちろん施設内に他にも運動する人がいてそれを見るのは多少のモチベーションにはなるし、浴場も利用できるし、一緒に通ってくれる人がいるならいいかもしれない。しかし私は怠惰なため、運動し続けることはできなかった。ただ、ジムに通うためにドアを開けて外に出る行為自体は悪くなかったと思う。
家事/住居
私は家事はほとんどやらない。例えば著名な発達障害者のアドバイス本には「食洗機を買って楽をせよ」と書いてあったりするが、そもそも洗うどころか食器を管理することが私にはできない。ではどうするかというと、基本的にはすべて使い捨てである。お箸や皿はすべて紙製ですぐに捨てれるものを買っておく。また、ゴミ捨てもできるなら24時間可能なところに住むのが望ましい。理想的には家事サービスを利用するか、ホテルに住むことである。
食事は外食か買い食い(いわゆる中食)、洗濯はクリーニングに出すか、100円ショップなどで大量に購入した安物の下着を使い捨てにする。掃除や整理整頓も体調のいいときにできるかできないかといったところだが、重要書類などはすべてすぐ見える壁にマスキングテープ(養生テープ)で貼り付けておく。忘れてはいけないこと(例えば更新期限や持ち物リスト)も、太いマジックでコピー用紙に書きなぐって壁に貼っておく(そして書き足す)のが、原始的だが有効だ。
心構え/精神論
いわゆる「認知のゆがみ」(ゆがみという和訳はネガティブ過ぎると思っているが)を自覚したり、前向きな心構えはフツーに大切である。この「フツー」に逆張りした話をする人は確かに目立つが、そういう人は逆張りするだけの余裕があってそうしているのであって、余裕がない者は順張りで適応することにまずは努めたらよい。
また、自分の内面の強いこだわりが自分の外部に根拠があるのかどうか、あるとして幾つあるのか、複数あるとしてもその根拠は他人に証拠としてみせて納得してもらえるものかどうかを検討し、立ち居振る舞いと自分の内面とを切り離しておいた方が、特性ゆえにこだわりの強い人は生きづらさが軽くなるかもしれない。
学習・練習
健常者ですら生涯学習が必要だ、リスキリングだと急かされている時代である。障害者にとっても継続的な学習によって実用的な資格を取得したり、趣味を深く楽しむ基礎にすることはたいせつだ。良い体調のときは、子供の頃に掻き立てられた知的好奇心を思い出したり、退屈な周りの風景(街の風景でも学校や職場の風景でもよい)を改めてじーっと、何も知らない赤ん坊になったつもりで眺めてみてほしい。とりわけ、人工物は必ず誰かが何らかの意図でつくったものであるから、それらには必ずあなたの知らない名前があり、機能があり、理由があり、原因があってそこに設立されているか、もしくは放置されているはずである。なぜこんな風景になったのか、日本の他の地域でも同じようなことが起きているのか、それともこの現場だけに特有の事情があるのか、別に証拠集めをしなくてもいいから空想してみるだけでも自分の中にいろいろな疑問をみつけることができるだろう。そこから、深掘りして関連する資格を見つけたり、都市建設ゲームをプレイしたりしてみてもいい。あるいは、資格の実用性なんて無視して、小学生の頃に好きだった教科があれば書店に行ってその教科書や参考書を眺め直してみるのもいいだろう。実際に小学生だった頃とは内容も入れ替わっているはずだし、今からそこだけ座学をやり直してみてもいい。大人になった今の方が、実は視野も選択肢も増えているはずだ。
(4,357字、2024.01.08)