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2.排出口から出る水や煙のように

 一昨日のトレーニングで負荷をかけ過ぎたのか、私の肩は酷く凝っていた。隣のテーブル席に座る男と女は、40代半ばのように見えたが、聞こえてくる声質では判断がつかなかった。イライラして話をする女と、その話を平然と聞き流す男の組み合わせだった。男と女が座るテーブル席の隣のテーブル席にも男と女が座っていた。二つのテーブル席から聴こえるのはボソボソとした声で、会話の中身まではわからなかった。

 次々と店に入ってくる客たちは、トングとトレイを持ってパンの前に並んだ。掴んだトングをカチカチと鳴らしながら、置いてあるパンを物色していた。カフェスペースで過ごそうとする客は、レジで飲み物を注文してパンの代金と合わせて支払いを済ませた。レジで番号札を受け取った客は、広いカフェスペースの遠くの方の席に向かった。店員が番号を読み上げると、近くの席に座っていた客が立ち上がり、番号札を持ってキッチンカウンターに向かった。

 休日のアウトレットパークはとにかく人が多くて、阿鼻叫喚の世界だった。迷子の子どもを預かるママと、迷子の我が子を探しているママが、いたるところで感動の再会を果たしていた。各所で展開されるそのようなドラマは、アウトレットパークでは常に起きている出来事だった。

 皆買ったばかりの商品をカフェの席に置いたまま、食べ物を買うために列に並んでいた。アウトレットパークに窃盗団は来ないのか。所詮アウトレットパークで買った商品は窃盗団にとって魅力がないのか。

 アウトレットパークでの買い物は、いつも家族と別行動になった。必要があればスマートフォンで連絡を取り合い、合流して店に入った。買い物が終われば別々になり、どこかの店に向かった。

 私はある店で暖かそうなブランケットを買った。ガシガシとした手触りのものと、ふわっとする手触りのものと、どちらにしようか迷ったが、ふわっとする手触りのブランケットにした。無難な色合いで適度な大きさで、良い買い物をしたと思った。ブランケットを買った後、ブランケットホルダーが欲しくなったが、店には置いていなかった。他の店にあるかもしれないと思ったが、探す気力がなかった。

 店を出た後、ズック靴が欲しいと思いついた私は、靴屋を探した。バンズというメーカーの店に入ってみると良さそうな色のズック靴があった。店員にサイズを伝えて出してもらったズック靴を履いて試し歩きをしていると、違う色のズック靴をみつけた。同じサイズで違う色のズック靴を出してもらい、結局、その違う色のズック靴を購入した。探しているうちに面倒くさくなり、買ってしまうパターンだった。頭が痛みはじめた。

 買い物を終えた店を出て歩いていると、雑貨屋の店前に並べられた商品が目に入ってきた。ブラウン色のコーヒーケトルだった。そのコーヒーケトルは欲しいと思っていた月兎印のものだった。色はターコイズブルーが欲しかったが、店前にはブラウン色のコーヒーケトルしか置いていなかった。サイズは0.7リットルのものが欲しかったが、1.2リットルのものだった。触った感じは大きくなかった。スマートフォンで値段を調べるとネットの方が高かった。アウトレットパークの商品は中古品ではないので、この値段はお得だと思った。結局、ブラウン色の1.2リットルサイズのコーヒーケトルを持ってレジに向かった。良い買い物をした、と私は思い込んでいた。

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