噛めば噛むほど味が出るスルメのような文章が書きたい
最近の愛読書は、滋賀県出身の凪良ゆうさんの書籍だ。凪良ゆうさんの紡ぐ物語は、噛めば噛むほど味が出る気がするから好き。スルメだ。スルメのような文章なのだ。どれだけ顎が疲れてもやめられない。
『流浪の月』『汝、星のごとく』をオーディオブックで聞き、先日は紙の書籍で『星を編む』を購入した。現在、7割くらい読んだところだ。一気に読みたいところだが、読むのが遅いじっくり読む派なのでかなり時間がかかる。
『星を編む』は発売してすぐに購入しようと思っていたが、近くに書店がなくてなかなか購入できない状況だった。
ようやく手に入れられたので、内容を噛みしめながら読んでいる。
今日は、凪良ゆうさんの文章の素晴らしさをあなたにも共感していただきたいので、noteに書き記しておこうと思う。心して刮目されたし。
『流浪の月』を読み直して「あっ!」ってなった話
『流浪の月』は2020年の本屋大賞に輝いた人気作で、広瀬すずさん、松坂桃李さんが主演で映画化された作品だ。真実とは何か、事実とは何か、深く考えさせられる作品となっている。
物語自体はわかりやすく、一度読めば理解できる……と思っていたが、意外とそうでもなかった。物語の最後はハッピーエンドだが、読了後には最初に戻りたくなる構成となっている。
さらに、最初に戻ってそのまま続きを読み進めていくと、あなたも一巡目には気がつかなかった部分に気がつくだろう。
レベルアップしたことで、以前は何となく聞き流していた主人公のセリフや表現にも「あっ、そういう意味だったのか」と、気がつくようになる。答え合わせの感覚と言ってもよいかもしれない。
「それ、言うたらあかんで~!!」
すべてを理解した人なら、恐らくそうツッコミたくなるだろう。しかし、初めて読んだときにはそうは思わなかった。
ただ、物語の流れとして必要なセリフだと思っていたのだ。人物像の生い立ちや関係性が細部まで作り込まれていることに、世界17位の琵琶湖の深さ以上に深く感心させられた。
伏線というのだろうか、それともメタファーと表現すべきなのだろうか。ただ、何も考えずに読んでいると、まったく気がつかない。国語のテストにでも出題されない限り、スルーしてしまうような表現なのだ。
恐らく2回目でも気がついていない部分が多々あるのではないかと考える。ぜひ、何度か読み直してじわじわと後から来る美味しさを味わっていただきたい。
『汝、星のごとく』を最後まで読んで「えっ?」ってなった話
2023年本屋大賞の『汝、星のごとく』は多くの人が、最後まで読んでからもう一度最初を読み直したくなるだろう。読んだ人には共感していただけると思う。
プロローグで始まり、エピローグで終わる。読み終えると、すっきりしたような読後感が得られるが、決してハッピーエンドではない。しかし、納得の終わり方だ。なぜなら、物語が終盤に近付くにつれ、執着点が予測できるからだ。
ところが、エピローグを読み始めたときに「えっ?」となった。同じように感じた人も多いはずだ。しかし、どうしても先に読み進めたい。私は心の葛藤を繰り広げつつ、歯を食いしばりながら先へ進むことを決心した。
そして、最後まで読んだところで、プロローグへ戻ることになるのだ。ループである。ややもすると、無限ループに陥りかねない。
そんな危険な書籍である。(ウソ)
『星を編む』をただの続編と侮ってはいけない
『星を編む』は2024年本屋大賞にノミネートされ、8位となった作品である。
『汝、星のごとく』のスピンオフとして書かれた作品のため、多くの書評家が「ノミネートされるだけでも驚きだ」と発言している。単体で完結する物語ではなくスピンオフなのだ。しかし、『汝、星のごとく』を読んでいなくても、単体として十分楽しめる作品となっていることがノミネートの決め手となったのだろう。
とはいえ、できれば『汝、星のごとく』を読んだ後に『星を編む』を読むことを強くおすすめする。その方が、より驚きが大きくなるからだ。
そんなことになっていたとは……
ネタバレになるので詳しくは書かないが、読んだ人には共感していただけると思う。
じつは、続編が出版される予定はなかったという。つまり、作者はこの話を世に出さないつもりだったのだ。そう考えただけで背中にひんやりと冷たい刃物を突き付けられたときのようにゾッとする。
『星を編む』は、『汝、星のごとく』の脇役が主人公となっている話だ。本編を書く際には脇役の背景までくっきり、作者の頭の中で描かれていたということなのだろう。物語の輪郭を作ってきた名脇役たちは、最初から性格や癖までもが決められているのだ。
凪良ゆうさんの頭の中がどうなっているのか、CTスキャン画像で見てみたい。
情景が思い浮かぶ表現は圧巻
凪良ゆうさんの色の表現や物の形の表現、景色の表現方法が好きだ。とくに瀬戸内の海を表現する言葉遣いは、美しい情景が目の前のスクリーンに映し出されるような感覚すら覚える。
もしかすると琵琶湖を見ながら書かれたのだろうか。下の画像は琵琶湖の夕暮れ(琵琶湖大橋付近)である。恐らく、凪良ゆうさんが何度も目にした風景に違いない。
私には凪良ゆうさんのような美しい表現はどう考えても無理だと思う。しかし、いつの日か言葉だけで情景を脳内スクリーンに映し出す小型プロジェクターのような文章を書きたい。一昔前のぼやけた映像ではなく、解像度の高い映像だ。
身を削って表現するタイプの作家に違いない
作品の中では「身を削って表現するタイプの作家」という表現が何度か出てくる。恐らく、凪良ゆうさんもそのタイプなのだろう。登場人物に自分を投影させているのではないかと感じる部分が多々あった。
以前、凪良ゆうさんのインタビューを読んだことがある。幼少の頃は滋賀県の児童養護施設で育ったそうだ。『汝、星のごとく』では、凪良ゆうさんの生い立ちと重ねてしまう部分が多い。身を削って表現しているに違いない。
Wikipedeaで調べたところ、私と同学年だと知って驚いている。
「どうして私らの学年、うみのこに乗せて貰えないんですか!!」
小学6年生のときには担任の先生にクレームを言っていただろう。
『うみのこ』は滋賀県内の小学5年生全員が船の上で学習するカリキュラムで、私たちが6年生のときに始まったのだ。当時は多くの小学6年生が怒り狂っていたと記憶している。凪良ゆうさんも、そうに違いない。
そんな凪良ゆうさんのような、噛めば噛むほど味の出るスルメのような文章を書きたいと思う。noteくらいしか書くところが無いのだが……
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