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【取材後記】夏休みをもう一度

あなたも一度は口にしたことがあるだろう。

「夏休みのある小学校時代に帰りたい」


Mr.Childrenの『光の射す方へ』の歌詞にも刻まれている。『光の射す方へ』では、母親が愚痴るように言っていたという。

たしかに夏休みは欲しい。中学・高校となると夏休みはあってないようなものだから、やはり小学校時代が理想的だ。

歌詞の中に出てくる母親はおそらく
「母親業なんか、土日も休み無しやんけ!!外食や、外食。毎日外食!」
と訴えたかったのかもしれない。疑う余地もないだろう。多くの母親は、母の日すら休ませてはもらえない。

夏休みなんて、あっという間に終わってしまう

約1ヶ月もの休みがあれば、色々なことができそう!

誰もがそう考えるだろう。しかし、実際は中年になってからの1ヶ月など、光陰矢の如しだ。

あれ?夏休みなんてあったっけ?

で終わってしまう。びゅっと飛び去ってしまうに違いない。ちなみに、弓道やアーチェリーにおける矢は時速200~230km程度。新幹線並みの速さなのだ。

Google Mapによると、東京~大阪間は徒歩で120時間かかることになっている。1日に8時間歩いたとすると、凡そ15日だ。往復すれば約1ヶ月の計算になる。

新幹線だと往復で6時間。まさに矢のように時間が過ぎる計算だ。

つまり、私に長期休暇が与えられたとしても、おそらく庭の草むしりくらいしかできないだろう。それでもやはり、夏休みのある小学校時代に戻れるものなら、戻ってみたい。


夏休みだけでなく宿題もやり直したい!


そんな風に考える私はどうかしているだろうか?
「宿題はちょっとイヤだなぁ~」
と、多くの人は考えるかもしれない。しかし、私の場合は逆である。

あの頃の宿題を、もう一度きちんとやり直したい。

適当に書いて出しただけの、自由研究も、読書感想文も水彩画も。あらゆるコンクールを総ナメするくらいのモチベーションで取り組みたいのだ。

しかし、どうやら最近の夏休みは昔とは状況がかなり変わってきているようだ。自由研究もなければ読書感想文もない学校が増えてきたという。

Yahoo!ニュースを読んで驚いた。

「学校での指導時間が十分ではなかったので、子どもの力だけで書けるとは思えませんでした。保護者のサポートを受けられない子に申し訳ないですし、しっかりサポートする保護者にも申し訳ない気持ちでした」

夏休みの宿題から「読書感想文」が消えつつある? 背景にある2つの“切実な事情”とは


どんだけ~過保護なん?


危うく脳内を実年齢62歳のIkkoさんに支配されそうになる。過保護過ぎるのもよくない。読書感想文は、我々の時代よりも情報が多いから書きやすくなっているのだ。生成AIに頼らずとも、書きやすい環境が出来上がっている。

その事実だけですでに過保護だ。

それなのに、指導ができないから宿題を出さないという。甘い。甘すぎる。『ぐりとぐら』のカステラ以上に甘い。食べたことないけど。

自由研究も同様だろう。指導ができない、提出されても見る時間がないから宿題自体を無くしてしまうのだ。

そんなことを言っている人は、背負い投げ~である。


当然、我々の時代には読書感想文の指導なんてものはなかった。

本を読め!そして、感想を書け!
以上!!

それだけである。

私が小学生時代には、その情報(というか命令)だけで読書感想文を書いた。だからまともに書けなかった。本を読んでも感想など何もなかったから書けるわけがない。だったのだ。

一方で、令和の世の中は読書感想文の書き方が詳細に記してある書籍やWeb記事も多い。情報はいくらでもあるはずなので、それ以上の指導は要らない。感想がであっても感想文は書ける時代になった。

読書感想文の宿題が無い世の中なんて……
こんな世の中に誰がした!!


宿題のない夏休みなんて要らない!!


やりたいんだ。読書感想文を、自由研究を、水彩画を。

そんな私だが、子どもの頃は読書が大嫌いだった。
子どもの頃というより、40代後半まで……

じつは先日、私と同じく、大人になるまで読書が大嫌いだったという久保田さんに出会った。久保田さんは30歳で読書嫌いを克服したそうで、今では読書好き一家だという。


読書好き一家なので、お子さんが幼かった頃は一度に60冊もの本を借りていたそうだ。毎回60冊も本を借りると、目立って仕方がないと久保田さんは言う。


その結果、目立ちすぎてとうとう米原市立図書館の協議会に抜擢されたらしい。ここまでは想定内の話だ。次に抜擢されたのが……

『まいばら 本と人をつなぎ隊』の代表


昔は本嫌いだった人が、今度は図書館をおすすめする側の人間になった。

人間は、何かのきっかけさえあれば大きく変わるものらしい。久保田さんが本を読むようになったきっかけは、三国志だった。三国志を読んでから、歴史小説にのめり込んだという。

司馬遼太郎はほとんど読んだんじゃないかな?

久保田さんはさらっと語る。「読み切れるものなの?」というのが正直な感想だ。司馬遼太郎の書籍は長編小説だけでもかなりの数がある。いったいどれだけ読書にはまれば、司馬遼太郎を読み切れるのだろうか。

詳細は『ほ・とせなニュース』の記事を読んでいただきたい。


その後、久保田さんは『まいばら 本と人をつなぎ隊』のボランティアで施設に本を運ぶようになり、小学校の読み聞かせや高齢者施設での読書支援を行うようになったという。

さらに、「本を運ぶだけでは面白くない」と考える仲間が集まり、さまざまな活動をしている。

絵画鑑賞などは痴呆症の予防にもいいという研究結果もあるらしい。実体験を元に自由研究をしているようなものかもしれない。

アートサロンの活動内容については、Mediallに記事を書いた。今後も活動の幅を広げるとのことなので、どのような活動をされるのかが楽しみだ。

アートサロンでの絵画鑑賞会は、介護施設の通所者が久保田さんの水彩画を見たいと言ったことから始まった。久保田さんは読書と同じく、大人になってから絵を描き始めた人だ。

もしかすると、夏休みの宿題の続きなのだろうか。やり残したことをやっているだけなのだろうか。

大人の夏休みは長期休暇ではなく、空き時間をうまく利用しなければならないようだ。


「明日から1ヶ月間バカンスへ行ってきますわよ、おほほほ~」


ヨーロッパの貴婦人のように、さらっと言ってみたい。

まずはプロペラ機に乗って、遠くの島へ……

しかし、貧乏性の私が1ヶ月間も仕事を休んだら、もう二度と現実世界には戻れないことは確かだ。恐らく、会社の机も椅子もPCすら撤去されているだろう。世知辛い世の中になってしまった。(妄想)

Mr.Children『光の射す方へ』の歌詞にはこうあった。

心に付けたプロペラ 時空を超えて 光の射す方へ

夏休みの宿題は時空を超え、大人になってからでもできる。プロペラは心にさえ付けておけばよいのだ。

さあ、絵を描こう。読書感想文を書こう。そして、自由研究をしよう。あなたにもきっと夏休みは訪れるはずだ。たっぷり宿題のある夏休みが。

気のせいか、少しずつ光も射してきたような気がしてきた。

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