千葉雅也 デッドライン
この物語の主人公がゲイだからというフックがあって、ハッテン場の雰囲気や描写や男性同士の性描写を期待していた。しかい、それは途中までで、後半からは雰囲気が変わってしまって、そういう描写がなかった。
しかも、主人公が覚めているし、恋愛に関してはほとんど無頓着なので、「愛」を語るみたいなことは一切なかった。
この作品は千葉氏にとっての初めての作品なのではないだろう。そこで少し物申したいのだが、同情人物の多さだ。名前の付いている登場人物が多すぎる。それはモブキャラでいいだろ? と思ってしまいまう。そんなに名前をつけても、こんがらがるし、意味がないと思ってします。
これは、褒めというか、千葉氏の支配領域なのだけれども、思想関係についてはやっぱりすごい。ドゥルーズとデリダとレヴィ=ストロースの関係や、モースとレヴィ=ストロースの関係を説明するシーンがありました。
その説明の中で、主人公の修士論文のことが決まっています。
続いて、冒頭の部分に繋がるんですが、主人公が他者に興味を持たないから、他者のスキャンダルにも興味を持たない。それで、話が淡々と進んでしまうだけで終わってしまう。
最後にこの小説の中で一貫して出てくるワード「(修士)論文書いた」というものだ。なので、この物語は大学生の登場人物の論文が書けるのだろうか? ということを追っかけていく小説なのではないだろうか?
この登場人物は青春を犠牲にして、論文に命にかけているようにも感じられる。
そして、疲弊している。それを主人公は悲観的にも楽観的にも思っていない。