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#13 「共創」はニガテだったからこそ、おもしろさを伝えたい

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。私はワークショップデザイナーとして「共創」を専門的に扱っています。

場に集う方々の知見が混ざり合い、思いもよらぬアイデアが生み出される瞬間って、とんでもなくおもしろいのです!

そんな私ですが、昔から共創がうまかったわけでもなければ、他者との協働が好きだったわけでもありません。むしろすごく苦手でした

なぜなら「私がひとりでつくったほうが良いいものができる。みんなとやるなんて面倒くさい」と本気で思っていたんです。

思い上がりも甚だしく、今となっては、本当にお恥ずかしい限りですが…。



共創ベタだった小学生時代のこと

実は先日、こうした私の気持ちを完璧に代弁してくださっている文章に出会い、とても感動しました!

ツールで仕掛ける共創の場 Co-Creatioin TOOL』の著者が、同書の冒頭でこんなふうに過去の気持ちを吐露をされていたのです。

そういう私も少し前までは、グループワークの類が大嫌いでした。小学校でやらされる壁新聞づくりは本当にいやでいやで。
その時の私は、「みんなでつくるより、自分ひとりでやった方が良いものができる」「自分だけでやって自分の手柄にしたい」「嫌だなと思っても言えないから妥協する」「不完全な途中な物は恥ずかしいから見られたくない」…など、なんだかんだと余計な考えが頭の中を渦巻いておりました。(この本をその時の私に見せてやりたい)

「いいものを創るためにはどうすればいいか=タスク」ではなく、「自分がどう思われたいか=セルフ」の方に大切なクリエイティブメモリをつかっていたわけです。

ツールで仕掛ける共創の場 Co-Creatioin TOOL 

実際に私は、学校の先生に「一人で壁新聞を作らせてください…!」と半泣きで直談判したことがあるので、この「壁新聞づくりは本当にいやで」という箇所には共感しかありませんでした。

私も「自分だけでやったほうがいいものができる!」と本気で信じていたのです。

あの瞬間の、困ったような先生の眉毛と、目を丸くしたクラスメイトの表情は、今でも鮮明に覚えています。

それでも私が自分を譲れなかったのは、まさに「自分がどう思われたいか=セルフ」にしか興味がなかったのですよね。

結果的にはあんまり良い出来にならなくて、自分の選択にガッカリしたこともまた、記憶の底に残り続けています。あの時のバツの悪さったら。。。


転機はUCバークレーで学んだ「Y-PLAN」

そんな私が、本格的に「共創って面白い!」と心の底から思えるようになったのは、社会人も10年が立った頃のこと。

兼務出向していたソフトバンク時代に「TOMODACHI ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」を担当させていただいたことが大きな転機でした。

このPJは、東北の高校生100人がカリフォルニア大学バークレー校に3週間短期留学し、地域貢献とリーダーシップを学ぶプログラムです。

参加生徒たちはY-PLANという地域変革を担う主体者となるためのメソッドを学ぶのですが、私も3年間一緒に渡米して、様々な活動を間近で見せていただきました。

このY-PLANでは5つの能力を伸ばすことを目標に掲げているのですが、その1番目が「コラボレーションする力」だったのです。

良いコラボレーションには、良い人間関係が欠かせません。そのためY-PLANでは、始めに相互理解のためのワークを相当丁寧に実施します。

そうして場に集う人々の感性や価値観を認め合ったうえで、お互いの持っている「違い」を活かしながらアイデアを練り上げる過程へと進んでいきます。

この「相互理解を徹底的に」「違いを力に」という基本思想は、日本で行われている活動に足りていない部分であるように感じられ、とても新鮮でした。

そして何より、生まれや育ち、学力や部活、学年や性別もバラバラな参加者たちが、笑顔を絶やさず朝から晩までアイデアづくりをしている様子がすごく印象的で!

「みんなで創り上げるって、こんなにおもしろいんだ!!」と心に刻まれたんですよね。

2017年 UCバークレーでの様子


AI時代は「共創の価値」がさらに高まる

私はこれからの時代、共創はますます求められる頻度が高まっていくと考えています。なぜなら単純なアイデアは、生成AIが瞬時に考えてくれる世の中になったからです。

たとえば私はよくアイデア共創のワークショップで「リラックスできるアイテム」を考えていただくのですが、このくらい具体的なお題だとAIの独壇場で、AIがアイデアを発想するスピーと数に、人間はとても太刀打ちできません。

妄想アイデアトレーニング「モウトレ 」から

ですが、現時点でのAIでは、出されるアイデアは平均的なものになりがち。いわゆる外れ値はとても少ない状況です。

試しにChat GPTにアイデア発想をお願いしたら、「ふわふわの枕」や「アロマディフューザー」「快適な寝巻き」「ハーブティーセット」などが真っ先に上がりました。どれもお題に対しての納得感が高い回答です。

でも、これは既存の情報を収集し吐き出しているだけなので、新しいサービスを生み出すには、アイデアをもう何ステップか飛躍させる必要があります。

この部分においては、まだまだ人間の思考力・センスが優位で、我々はこうした点を意識しながら思考力・発想力を磨いていかなければならないと思うのです。

ちなみにこれは実際ワークショップ中に共有されたアイデアなのですが、「リラックスできるアイテム」というお題に対して、「愚痴を聴いてくれる豆腐」と回答してくださった参加者がいました。天才だ…、と思いました。

普通こんなに突飛なこと思いつきません。しかも、愚痴を聴かせれば聴かせるほど、おいしい豆腐になるんですって!(笑)


おもちゃクリエイターの高橋晋平さんがバンダイ時代に考案され、累計260万個以上の大ヒットになった癒しアイテム「∞プチプチ」なども、きっと現在のAIには考えつかない領域です。


共創には「まだ誰も見つけていない」空白地帯を発見する力が!

こうしたユニークなアイデアは、もちろん一人で考えることもできます。でも今の私は「共創」を推したいのですよね。

これから日本は課題先進国として、様々な社会変革を模索していかざるを得ません。課題の数に対して、特定の天才だけがアイデア出しを奮闘したって足りないんです。

だから普通の人どうしが集まり、お互いの知見をトリガーにアイデアを共創していくことが、これからの日本ではより重要になると考えています。

そして、結果的には、そのほうが日本はもっとおもしろくなると思うのです。なぜなら、共創のおもしろさを感じることができたら、また共創の快感を味わいたくなるから!

『ツールで仕掛ける共創の場 Co-Creatioin TOOL』の著者も「もう引き返すことはできない」と表現されているように。

クリエイティブ力は、個人の能力ではなくコ・クリエーションの場にひょっこりと現れてくるものです。みんなのベクトルが「タスク」へ向かえば、まるで戦隊モノのように合体してパワーアップする、そんな感覚を体験できるはずです。そのおもしろさに気づいてしまったら、もう引き返すことはできません。

ツールで仕掛ける共創の場 Co-Creatioin TOOL

現在、私が客員教授の肩書をいただいているiU情報経営イノベーション専門職大学では「妄想学」の開講準備を進めています。

これらの講義や、妄想アイデアトレーニング「モウトレ 」を起点に、アイデア共創のおもしろさを全国の若者〜高齢者まで、たくさんの人に味わっていただきたいと思うのですよね。

2024年はこれまで以上に、たくさんの共創を生み出せたら嬉しいです。

ワークショップデザイナー
相内 洋輔


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