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おいしいものがたり(「帝国ホテル厨房物語」を思い出して。)

シェフ三國から、村上総料理長のはなし

先日シェフ三國のレシピに感銘を受け、料理を作ってみた。その時に、三國さんは、当時帝国ホテルの総料理長だった村上さんに見出されたという話をされていた、

その時に、フッと思い出したことがあった、それは、村上さんの自伝が、自分が初めて電子書籍で買った本だということだった。

2013年の事なので、すでに10年ほど前のことになる。いつどこで、昔出会った本に再会するか分からない。

改めて村上さんの自伝を読んで、印象的だった文章を取り上げてみたい。


チャンスは練って待て

私の座右の銘は「果報は寝て待て」をもじって「チャンスは練って待て」。
コック人生は幸運の連続だった。
人にも恵まれた。しかし、それは準備し、努力した結果でもある。
新館料理長になって数年後から三十八年間、帰宅してから一日一時間、料理の勉強を欠かさない。八十歳の今も練って待つ夢があるのは幸せだと思う。

愛され続ける料理

長く続けていて再確認したことは、目先が変わった新奇な料理より、「愛され続ける料理」を作ることが大切だということだ。
古典的なオーソドックスなメニューをベースに、食材の取り合わせの変化や味つけの創意工夫などを通して、飽きられないおいしい料理を作ること。

準備が何より

どんなことでも十分に準備しておけば混乱しないで、お客様に喜んでいただけることも分かった。事前の用意や段取りがとても大事なのだと、身に染みて感じた。私はそれから、「段取り八分」が口癖のようになった。
事前に用意しておけば、八割方は成功という意味で、たとえ小さな仕事でも、周到な準備が何より大切ということを強調している。

村上さんの言葉で、印象的なのは準備と基本を大切にするという事。何かを長く続けることは、基本を繰り返すことが、何よりも重要であること。

いまは、ボタン一つで何もかもできるような気がする時代である。一昔前までは、待ち合わせを直前で変更することなんて、出来なかった。

なぜなら、直前に電話やLINEをすることなんて、あり得なかったからだ。その分約束を大切にしたし、待つ時間も当たり前だったりした。

おじいちゃんやおばあちゃんに当時のことを聞くと、そんなことを教えてくれた。便利になるということは、忍耐強さを奪うのよなんて、話もしていた。

料理は、長い長いプロセスである。

何を食べるか決める、どこで買うのか、どこでたべるのか、誰と食べるのか、何を買うのか、どうやってつくるのか、いつ作るのか。その食材はどこでつくられ、だれがつくるのか。

一つの食事が食卓にやってくるまで、数々の物語がある。

村上シェフの本を読んで、目の前の食事を食べられるまでの、数えきれない物語に改めて感謝したい。大切に料理をいただきたい。そう思ったのだ。

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